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京都大学 1999年 文系 第1問 解説

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京都大学 1999年 文系 第1問 解説

方針・初手

線分の長さの2乗の和に関する不等式の証明問題です。図形的に処理する場合は、中点が登場することから「中線定理(パップスの定理)」の利用が有効です。 また、図形を直交座標系に配置して代数的に証明する方針も確実です。計算を簡略化するため、垂線の足 $H$ を原点に設定して各点の座標をおき、(左辺) $-$ (右辺) $\geqq 0$ を示します。

解法1

中線定理を利用する解法

$\triangle ABC$ において、辺 $BC$ の中点が $M$ であるから、中線定理より以下の等式が成り立つ。

$$ AB^2 + AC^2 = 2(AM^2 + BM^2) $$

また、$\triangle PBC$ においても $M$ は辺 $BC$ の中点であるから、同様に中線定理より以下の等式が成り立つ。

$$ BP^2 + CP^2 = 2(PM^2 + BM^2) $$

これらを示すべき不等式 $AB^2 + AC^2 \geqq 2AP^2 + BP^2 + CP^2$ の両辺に適用すると、証明すべき不等式は次のように変形できる。

$$ 2(AM^2 + BM^2) \geqq 2AP^2 + 2(PM^2 + BM^2) $$

両辺を $2$ で割り、共通する $BM^2$ を消去すると、

$$ AM^2 \geqq AP^2 + PM^2 $$

となる。したがって、この不等式を示せばよい。

直線 $AH$ は辺 $BC$ に垂直であるから、$\triangle AHM$ および $\triangle AHP$ は $\angle H = 90^\circ$ の直角三角形である。(ただし、$M$ や $P$ が $H$ と一致する場合は三角形が潰れるが、長さの等式としては成立する) それぞれの直角三角形に対して三平方の定理を適用すると、

$$ AM^2 = AH^2 + HM^2 $$

$$ AP^2 = AH^2 + HP^2 $$

となる。これらの辺々の差をとると、

$$ AM^2 - AP^2 = HM^2 - HP^2 $$

ゆえに、示すべき不等式は以下のように書き換えられる。

$$ HM^2 - HP^2 \geqq PM^2 $$

$$ HM^2 \geqq HP^2 + PM^2 $$

ここで、点 $P$ は線分 $MH$ 上にあるため、長さについて $HM = HP + PM$ が成り立つ。この両辺を2乗すると、

$$ HM^2 = (HP + PM)^2 = HP^2 + 2HP \cdot PM + PM^2 $$

となる。点 $P$ は線分上の点なので $HP \geqq 0, PM \geqq 0$ であり、$2HP \cdot PM \geqq 0$ である。したがって、

$$ HM^2 \geqq HP^2 + PM^2 $$

が成り立つ。 以上を逆にたどることで、$AB^2 + AC^2 \geqq 2AP^2 + BP^2 + CP^2$ が示された。

解法2

座標平面を設定する解法

点 $H$ を原点 $(0,0)$ とし、直線 $BC$ を $x$ 軸にとる直交座標系を設定する。 点 $A$ は $y$ 軸上にあるので、$A(0, a)$ とおくことができる($a > 0$ としてよい)。 また、$B(b, 0), C(c, 0)$ とおく。$\triangle ABC$ は鋭角三角形なので、頂点 $A$ から下ろした垂線の足 $H$ は線分 $BC$ の内側にある。したがって $b < 0 < c$ としても一般性を失わない。

点 $M$ は辺 $BC$ の中点であるから、その座標は $M\left(\frac{b+c}{2}, 0\right)$ である。 点 $P$ は線分 $MH$ 上の点であるから、その座標を $P(p, 0)$ とおくと、$p$ は原点 $0$ と $\frac{b+c}{2}$ の間にある値をとる。 すなわち、$p$ と $\frac{b+c}{2} - p$ は同符号であるか、少なくとも一方が $0$ であるから、

$$ p\left(\frac{b+c}{2} - p\right) \geqq 0 $$

が成り立つ。

この設定のもとで、示すべき不等式の左辺と右辺を計算する。

$$ \text{(左辺)} = AB^2 + AC^2 = (b^2 + a^2) + (c^2 + a^2) = b^2 + c^2 + 2a^2 $$

$$ \begin{aligned} \text{(右辺)} &= 2AP^2 + BP^2 + CP^2 \\ &= 2(p^2 + a^2) + (p - b)^2 + (p - c)^2 \\ &= 2p^2 + 2a^2 + p^2 - 2bp + b^2 + p^2 - 2cp + c^2 \\ &= 4p^2 - 2(b + c)p + b^2 + c^2 + 2a^2 \end{aligned} $$

両辺の差をとると、

$$ \begin{aligned} \text{(左辺)} - \text{(右辺)} &= (b^2 + c^2 + 2a^2) - \{4p^2 - 2(b + c)p + b^2 + c^2 + 2a^2\} \\ &= -4p^2 + 2(b + c)p \\ &= 4p\left(\frac{b+c}{2} - p\right) \end{aligned} $$

先に確認したように $p\left(\frac{b+c}{2} - p\right) \geqq 0$ であるから、

$$ \text{(左辺)} - \text{(右辺)} \geqq 0 $$

よって、$AB^2 + AC^2 \geqq 2AP^2 + BP^2 + CP^2$ が成り立つことが示された。

解説

図形問題において、「中点」と「長さの2乗」がセットで現れた場合は、中線定理(パップスの定理) を第一感として思い浮かべられるようにしておきましょう。計算量を抑えて視覚的にスッキリと証明できます。

解法2のように、図形の性質を座標平面に翻訳して代数的に解く「解析幾何」の手法も非常に強力です。座標を設定する際は、対称性を活かしたり、垂線の足を原点に置いたりして、文字式の計算ができるだけシンプルになるように工夫するのがポイントです。

答え

略(解法1の証明を参照)

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