京都大学 2012年 文系 第4問 解説

方針・初手
(p) 円周角の定理と正多角形の外接円の中心角の性質を利用する。ある内角が $60^\circ$ のとき、対応する弧の中心角が $120^\circ$ または $240^\circ$ になることを立式し、$n$ が $3$ の倍数であることを示す。
(q) 「2辺とその間の角」ではなく「2辺と1つの角」が等しい場合は、合同条件を満たさず反例が存在する。余弦定理から残りの1辺の長さを求める2次方程式を立てたとき、異なる2つの正の解をもつような辺の長さと角度の組み合わせ(反例)を設定すればよい。
解法1
(p) 正しい(証明)
正 $n$ 角形の頂点は、その外接円の円周を $n$ 等分する点である。したがって、隣り合う2つの頂点と外接円の中心がなす中心角は $\dfrac{360^\circ}{n}$ である。
選んだ3点を $A, B, C$ とし、$\angle BAC = 60^\circ$ であるとする。円周角の定理より、弧 $BC$ に対する中心角は $2 \times 60^\circ = 120^\circ$(点 $A$ が優弧上にある場合)、または $360^\circ - 120^\circ = 240^\circ$(点 $A$ が劣弧上にある場合)である。
弧 $BC$ は、正 $n$ 角形の円周を $n$ 等分した弧がいくつか集まったものである。その弧の数を $k$($k$ は $1 \leqq k < n$ を満たす自然数)とすると、中心角は $k \times \dfrac{360^\circ}{n}$ と表せる。したがって、
$$ k \times \frac{360^\circ}{n} = 120^\circ \quad \text{または} \quad k \times \frac{360^\circ}{n} = 240^\circ $$
が成り立つ。これらを整理すると、
$$ \frac{3k}{n} = 1 \implies n = 3k $$
$$ \frac{3k}{n} = 2 \implies 2n = 3k $$
となる。前者の場合、$k$ は自然数であるから $n$ は $3$ の倍数である。後者の場合、$n$ は $\dfrac{3k}{2}$ であり、$n$ が自然数となるためには $k$ が偶数でなければならない。$k = 2m$($m$ は自然数)とおくと $n = 3m$ となるため、やはり $n$ は $3$ の倍数である。
以上より、命題 (p) は正しい。(証明終)
(q) 正しくない(反例)
$\triangle ABC$ を、$AB = \sqrt{3},\ BC = 1,\ AC = 2$ の三角形とする。
このとき、$AB^2 + BC^2 = 3 + 1 = 4 = 2^2 = AC^2$ が成り立つため、三平方の定理の逆より $\triangle ABC$ は $\angle B = 90^\circ$ の直角三角形である。また、辺の比が $1:\sqrt{3}:2$ であるから、$\angle A = 30^\circ$ である。
一方、$\triangle A'B'C'$ を、$A'B' = \sqrt{3},\ B'C' = 1,\ A'C' = 1$ の二等辺三角形とする。余弦定理を用いて $\angle A'$ の大きさを求めると、
$$ \cos A' = \frac{(A'B')^2 + (A'C')^2 - (B'C')^2}{2 \cdot A'B' \cdot A'C'} = \frac{3 + 1 - 1}{2 \cdot \sqrt{3} \cdot 1} = \frac{3}{2\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}}{2} $$
$0^\circ < \angle A' < 180^\circ$ より、$\angle A' = 30^\circ$ である。
これら2つの三角形 $\triangle ABC$ と $\triangle A'B'C'$ において、
$$ AB = A'B' = \sqrt{3}, \quad BC = B'C' = 1, \quad \angle A = \angle A' = 30^\circ $$
が成り立ち、命題の仮定を満たしている。しかし、$AC = 2$、$A'C' = 1$ であり $AC \neq A'C'$ であるため、これら2つの三角形は合同ではない。
よって、この一組の三角形が反例となるため、命題 (q) は正しくない。(説明終)
解説
(p) は図形的な性質を数式に翻訳する論証問題である。「ある内角が $60^\circ$」という条件を、外接円における「中心角が $120^\circ$(または $240^\circ$)」と言い換えることで、$n$ の倍数判定に持ち込むことができる。
(q) は、中学校で習う「三角形の合同条件」の本質を問う問題である。合同条件「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」において、なぜ「間の角」でなければならないのか、その理由を反例をもって示している。一般に、余弦定理 $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ において、$a, c, \angle A$ が与えられたとき、$b$(もう一辺の長さ)についての2次方程式が異なる2つの正の実数解をもつ場合があり、それが合同にならない反例の存在を意味している。解答で挙げた「$1:\sqrt{3}:2$ の直角三角形」と「$A'C' = 1$ の二等辺三角形」の組み合わせは、最も計算が簡単で分かりやすい美しい反例の1つである。
答え
(p)
正しい(証明は解法1の通り)
(q)
正しくない(反例は解法1の通り)
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











