京都大学 1972年 理系 第6問 解説

方針・初手
各期待値 $E$ と $F$ を、期待値の定義に従って数式で表す。 $E$ は $n$ 個の数の単純な相加平均となる。$F$ は同時に2枚取り出す全組み合わせについての和の平均となるため、すべての2枚の組み合わせの和の総和を計算する際に「それぞれの $a_k$ が何回足されるか」という視点(主客転倒)を持つことがポイントとなる。 また、期待値の線形性(和の期待値は期待値の和)を利用することで、より簡潔に示すアプローチも考えられる。
解法1
無作為に1枚のカードを取り出すとき、各カードが選ばれる確率は $\frac{1}{n}$ であるから、期待値 $E$ は
$$ E = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} a_i $$
と表される。
次に、$n$ 枚のカードから同時に2枚を取り出す組み合わせは ${}_n\text{C}_2 = \frac{n(n-1)}{2}$ 通りあり、これらは同様に確からしい。 したがって、2枚のカードの和の期待値 $F$ は、すべての2枚の組み合わせに対する和の総和を ${}_n\text{C}_2$ で割ったものである。
すべての2枚の組み合わせに対する和の総和 $\sum_{1 \leqq i < j \leqq n} (a_i + a_j)$ について考える。 この総和において、特定のカードの数字 $a_k$ ($1 \leqq k \leqq n$) が足される回数は、残りの $n-1$ 枚のカードからもう1枚を選ぶ組み合わせの数に等しい。 よって、各 $a_k$ はそれぞれ $n-1$ 回ずつ足されるため、総和は次のように表せる。
$$ \sum_{1 \leqq i < j \leqq n} (a_i + a_j) = (n-1) \sum_{k=1}^{n} a_k $$
ゆえに、$F$ は次のように計算できる。
$$ F = \frac{(n-1) \sum_{k=1}^{n} a_k}{{}_n\text{C}_2} $$
$$ F = \frac{(n-1) \sum_{k=1}^{n} a_k}{\frac{n(n-1)}{2}} $$
$$ F = \frac{2}{n} \sum_{k=1}^{n} a_k $$
先に求めた $E = \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} a_k$ を代入すると、
$$ F = 2 \left( \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} a_k \right) = 2E $$
となり、題意は示された。
解法2
同時に2枚のカードを取り出す試行は、1枚ずつ元に戻さずに2回カードを取り出す(非復元抽出)試行において、出た2つの数の和を考えることと同じである。
1回目に取り出したカードの数字を $X$、2回目に取り出したカードの数字を $Y$ とおく。 求める期待値 $F$ は確率変数 $X+Y$ の期待値であるから、期待値の線形性より
$$ F = E(X+Y) = E(X) + E(Y) $$
が成り立つ。
1回目に取り出すカードは無作為に選ばれるため、その期待値 $E(X)$ は問題文の条件より
$$ E(X) = E $$
である。
また、2回目に取り出されるカードについても、どのカードが選ばれる確率も対称性により $\frac{1}{n}$ で等しい。 したがって、$Y$ の期待値も同様に
$$ E(Y) = E $$
となる。
ゆえに、
$$ F = E(X) + E(Y) = E + E = 2E $$
となり、題意は示された。
解説
期待値の定義に忠実に計算して示す方法と、期待値の性質を利用して示す方法の2パターンが考えられる問題だ。
解法1では、すべてのペアの和を計算する際に「各 $a_i$ が全体で何回現れるか」を数え上げる典型的な処理が求められる。この「主客を転倒させて和を計算する」考え方は、場合の数や確率の分野で頻出の手法だ。
解法2は「和の期待値は期待値の和」という性質 $E(X+Y)=E(X)+E(Y)$ を利用している。この性質は $X$ と $Y$ が互いに独立でない(今回の非復元抽出のような)場合であっても常に成り立つため、計算量を大幅に削減できる非常に強力な手法だ。確率変数の設定と対称性への理解が鍵となる。
答え
略(解法1の証明を参照)
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