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京都大学 1975年 理系 第2問 解説

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京都大学 1975年 理系 第2問 解説

方針・初手

(i) は実数の平方の非負性を利用して不等式を証明する。両辺の差をとり、完全平方式を作るのが基本である。

(ii) は被積分関数に (i) の結果を適用して定積分を上から評価する。その後、置換積分法や部分積分法を用いて積分を計算し、その結果が $1$ より小さいことを示す。

解法1

(i)

$x \geqq 0$ のとき、右辺と左辺の差をとると、

$$ \frac{1}{2}(x+1) - \sqrt{x} = \frac{1}{2}(x - 2\sqrt{x} + 1) = \frac{1}{2}(\sqrt{x}-1)^2 $$

実数はその平方が $0$ 以上であるから、$\frac{1}{2}(\sqrt{x}-1)^2 \geqq 0$ が成り立つ。

したがって、

$$ \sqrt{x} \leqq \frac{1}{2}(x+1) $$

が成り立つ。なお、等号成立は $\sqrt{x}-1=0$ すなわち $x=1$ のときである。

(ii)

積分区間 $0 \leqq x \leqq k$ において、$\left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k \geqq 0$ であるから、(i) の不等式の両辺に掛けると、

$$ \sqrt{x} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k \leqq \frac{1}{2}(x+1) \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k $$

が成り立つ。両辺を $0$ から $k$ まで積分する。区間 $0 \leqq x \leqq k$ において、常に等号が成り立つわけではない(等号成立は $x=1$ のみであり、被積分関数は連続である)ため、定積分において真の不等号が成立する。

$$ \int_{0}^{k} \sqrt{x} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx < \frac{1}{2} \int_{0}^{k} (x+1) \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx $$

ここで、右辺の積分を計算する。$1 - \frac{x}{k} = t$ とおくと、$x = k(1-t)$ であり、$dx = -k dt$ となる。

積分区間の対応は以下の通りである。

$$ \begin{array}{c|ccc} x & 0 & \to & k \\ \hline t & 1 & \to & 0 \end{array} $$

よって、右辺の積分は次のように計算できる。

$$ \begin{aligned} \frac{1}{2} \int_{0}^{k} (x+1) \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx &= \frac{1}{2} \int_{1}^{0} \{k(1-t)+1\} t^k (-k) dt \\ &= \frac{k}{2} \int_{0}^{1} \{ (k+1) - kt \} t^k dt \\ &= \frac{k}{2} \int_{0}^{1} \{ (k+1)t^k - k t^{k+1} \} dt \\ &= \frac{k}{2} \left[ t^{k+1} - \frac{k}{k+2} t^{k+2} \right]_{0}^{1} \\ &= \frac{k}{2} \left( 1 - \frac{k}{k+2} \right) \\ &= \frac{k}{2} \cdot \frac{2}{k+2} \\ &= \frac{k}{k+2} \end{aligned} $$

$k$ は自然数($k \geqq 1$)であるから、$k < k+2$ より $\frac{k}{k+2} < 1$ が成り立つ。

以上より、

$$ \int_{0}^{k} \sqrt{x} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx < 1 $$

が示された。

解法2

(ii) の積分の別解(部分積分)

不等式

$$ \int_{0}^{k} \sqrt{x} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx < \frac{1}{2} \int_{0}^{k} (x+1) \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx $$

を導くところまでは解法1と同じである。

右辺の定積分を部分積分法を用いて計算する。

$$ \begin{aligned} \int_{0}^{k} (x+1) \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx &= \int_{0}^{k} (x+1) \left\{ -\frac{k}{k+1} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^{k+1} \right\}' dx \\ &= \left[ (x+1) \left\{ -\frac{k}{k+1} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^{k+1} \right\} \right]_{0}^{k} - \int_{0}^{k} 1 \cdot \left\{ -\frac{k}{k+1} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^{k+1} \right\} dx \\ &= \frac{k}{k+1} + \frac{k}{k+1} \int_{0}^{k} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^{k+1} dx \\ &= \frac{k}{k+1} + \frac{k}{k+1} \left[ -\frac{k}{k+2} \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^{k+2} \right]_{0}^{k} \\ &= \frac{k}{k+1} + \frac{k}{k+1} \cdot \frac{k}{k+2} \\ &= \frac{k(k+2) + k^2}{(k+1)(k+2)} \\ &= \frac{2k(k+1)}{(k+1)(k+2)} \\ &= \frac{2k}{k+2} \end{aligned} $$

したがって、

$$ \frac{1}{2} \int_{0}^{k} (x+1) \left( 1 - \frac{x}{k} \right)^k dx = \frac{1}{2} \cdot \frac{2k}{k+2} = \frac{k}{k+2} $$

$k$ は自然数であるから、$\frac{k}{k+2} < 1$ となり、与不等式は示された。

解説

前問の結果を利用して積分を評価する、典型的な誘導問題だ。

(i) は基本的な不等式証明であり、確実に得点したい。正の数 $x, 1$ についての相加平均と相乗平均の大小関係 $\frac{x+1}{2} \geqq \sqrt{x \cdot 1} = \sqrt{x}$ と見なすこともできる。

(ii) において、等号付きの不等式から真の不等式($<$)を導く際、「積分区間内で常に等号が成り立つわけではない」という事実の記述を忘れないように注意が必要だ。

また、多項式と累乗の積の定積分については、置換積分で多項式を展開しやすい形にするか、部分積分で次数を下げていくかのいずれかで計算できる。どちらの手法も素早く正確に行えるようにしておきたい。

答え

(i)

差をとって平方完成し、$0$ 以上であることを示した。

(ii)

(i) の不等式を用いて被積分関数を評価し、定積分を計算した結果が $\frac{k}{k+2}$ となり、これが自然数 $k$ において $1$ より小さいことから示された。

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