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京都大学 1980年 理系 第4問 解説

数学A/確率数学B/確率分布・統計的推測テーマ/場合分け
京都大学 1980年 理系 第4問 解説

方針・初手

ゲームのルールより、1回の操作で持ち点は確率 $\frac{1}{2}$ で $+1$ され、確率 $\frac{1}{2}$ で $-1$ される。 「5回サイコロをふることができる」という条件は、「1回目から4回目までの操作終了時において、持ち点が一度も $0$ にならない」ことと同値である。 初期の持ち点が $2$ であるため、持ち点が $0$ になる可能性があるのは偶数回目の操作終了時のみであることに着目して確率を計算する。 また、終了時の持ち点の期待値は、途中で $0$ になって終了した場合(持ち点 $0$)と、5回最後まで操作を行った場合の各持ち点についての確率分布を求めて計算する。

解法1

サイコロを振って奇数が出る確率、偶数が出る確率はともに $\frac{1}{2}$ である。 $k$ 回目の操作が終了した時点での持ち点を $S_k$ とする(初期の持ち点は $S_0 = 2$)。

【5回サイコロをふることができる確率】 ゲームが5回目まで継続する条件は、$S_1 > 0, S_2 > 0, S_3 > 0, S_4 > 0$ である。 1回の操作で持ち点は $\pm 1$ されるため、$S_k$ は $k$ が奇数なら奇数、偶数なら偶数となる。したがって、持ち点が $0$ になる可能性があるのは $S_2$ または $S_4$ のみである。

途中で持ち点が $0$ になりゲームが終了する確率を求める。 (i) $S_2 = 0$ となる場合(2回目で終了) 1回目、2回目ともに偶数が出ればよいので、その確率は

$$ \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{4} $$

(ii) $S_4 = 0$ となる場合(4回目で終了) $S_2 > 0$ かつ $S_4 = 0$ となる確率である。 $S_2$ としてあり得る値は $4$ または $2$ だが、$S_2 = 4$ からあと2回で $0$ になることはないため、$S_2 = 2$ でなければならない。 $S_2 = 2$ となるのは、1回目と2回目で「奇・偶」または「偶・奇」の目が出る場合であり、その確率は $\frac{2}{4} = \frac{1}{2}$。 さらに、$S_2 = 2$ から $S_4 = 0$ となるのは、3回目と4回目でともに偶数の目が出る場合であり、その確率は $\frac{1}{4}$。 よって、この場合の確率は

$$ \frac{1}{2} \times \frac{1}{4} = \frac{1}{8} $$

(i), (ii) より、途中でゲームが終了する確率は $\frac{1}{4} + \frac{1}{8} = \frac{3}{8}$ である。 したがって、5回サイコロをふることができる確率は、この余事象の確率であるから

$$ 1 - \frac{3}{8} = \frac{5}{8} $$

【ゲームが終わった時の持ち点の期待値】 ゲーム終了時の持ち点を $X$ とする。$X$ がとり得る値と、その確率を求める。

途中で終了した場合の持ち点は $0$ であるから、

$$ P(X = 0) = \frac{3}{8} = \frac{12}{32} $$

5回最後までサイコロを振った場合の持ち点 $X$ ($= S_5$) の確率を求める。 4回目終了時点で生き残っている状態($S_4 > 0$)の確率分布は以下の通り。 ・$S_4 = 6$:4回すべて奇数。(確率 $\left(\frac{1}{2}\right)^4 = \frac{1}{16}$) ・$S_4 = 4$:奇数3回、偶数1回。「偶・偶」が連続して2回目で終わることはないため、全 ${}_4\mathrm{C}_{1}$ 通りが適する。(確率 $\frac{4}{16}$) ・$S_4 = 2$:奇数2回、偶数2回。全 ${}_4\mathrm{C}_{2} = 6$ 通りのうち、2回目で終了する「偶・偶・奇・奇」の1通りを除く5通りが適する。(確率 $\frac{5}{16}$)

これらに5回目の操作(確率 $\frac{1}{2}$ で $+1$ または $-1$)を行うため、各 $X$ の確率は ・$P(X=7)$:$S_4=6$ から奇数。

$$ \frac{1}{16} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{32} $$

・$P(X=5)$:$S_4=6$ から偶数、または $S_4=4$ から奇数。

$$ \frac{1}{16} \times \frac{1}{2} + \frac{4}{16} \times \frac{1}{2} = \frac{5}{32} $$

・$P(X=3)$:$S_4=4$ から偶数、または $S_4=2$ から奇数。

$$ \frac{4}{16} \times \frac{1}{2} + \frac{5}{16} \times \frac{1}{2} = \frac{9}{32} $$

・$P(X=1)$:$S_4=2$ から偶数。

$$ \frac{5}{16} \times \frac{1}{2} = \frac{5}{32} $$

以上より、求める期待値 $E$ は

$$ \begin{aligned} E &= 7 \times P(X=7) + 5 \times P(X=5) + 3 \times P(X=3) + 1 \times P(X=1) + 0 \times P(X=0) \\ &= 7 \times \frac{1}{32} + 5 \times \frac{5}{32} + 3 \times \frac{9}{32} + 1 \times \frac{5}{32} + 0 \\ &= \frac{7 + 25 + 27 + 5}{32} \\ &= \frac{64}{32} \\ &= 2 \end{aligned} $$

解説

樹形図や状態遷移図をイメージして、各ステップごとの確率を丁寧に追っていく基本問題である。 偶数回目にしか終了しないことや、4回目終了時点での状態を正しく分類できるかがポイントだ。 なお、期待値の計算結果が「最初の持ち点である2」に戻ることは偶然ではない。1回サイコロを振ったときの持ち点の増減の期待値は $1 \times \frac{1}{2} + (-1) \times \frac{1}{2} = 0$ である。このように「1回ごとの期待値の変動が0」であるゲーム(マルチンゲールと呼ばれる)では、どんなルールで途中でやめても、最終的な持ち点の期待値は最初の持ち点から変わらないという美しい数学的性質がある。検算のテクニックとして知っておくと役立つ。

答え

5回サイコロをふることができる確率: $\frac{5}{8}$ ゲームが終わった時の持ち点の期待値: $2$

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