京都大学 1980年 理系 第5問 解説

方針・初手
(i) 背理法を用いて証明する。「(イ)も(ロ)も満たさない」と仮定すると、集合の中に正の要素と負の要素が混在していることになる。その中から「最大値」と「最小値」を取り出して差を考えると、集合の範囲を飛び出してしまい、条件に矛盾することを示す。
(ii) (i) の結果から、要素はすべて $0$ 以上であると仮定して一般性を失わない。要素を大きい順に並べたとき、任意の2要素の差(大きい方から小さい方を引いた正の値)が必ず集合に含まれることに着目する。 ある要素 $x_i$ より小さい正の要素の個数と、$x_i$ から他の正の要素を引いて作られる値の個数が完全に一致することから、「それらの集合が一致する」ことを示し、隣り合う要素の差が常に等しくなることを導く。
解法
(i) 背理法を用いて証明する。 集合 $S$ が(イ)も(ロ)も満たさないと仮定すると、$S$ には正の要素と負の要素が少なくとも1つずつ含まれる。 $S$ は有限集合であるから、最大の要素 $M$ と最小の要素 $m$ が存在する。仮定より、$M > 0$ かつ $m < 0$ である。 $S$ の性質から、$M$ と $m$ ($M > 0 > m$ より $M \neq m$)を選んだとき、$M - m$ または $m - M$ の少なくとも一方が必ず $S$ に属する。
しかし、$m < 0$ であるから
$$ M - m > M $$
となり、$M$ が $S$ の最大要素であることに矛盾するため、$M - m \notin S$ である。 同様に、$M > 0$ であるから
$$ m - M < m $$
となり、$m$ が $S$ の最小要素であることに矛盾するため、$m - M \notin S$ である。
したがって、$M - m$ と $m - M$ のどちらも $S$ に属さないことになり、与えられた性質に矛盾する。 ゆえに、最初の仮定は誤りであり、(イ)または(ロ)のいずれか一方が成り立つ。(証明終)
(ii) (i) の結果より、$S$ の要素はすべて $0$ 以上、またはすべて $0$ 以下である。 すべての要素が $0$ 以下である場合、集合 $S' = \{-x \mid x \in S\}$ を考えると、$S'$ も問題の性質を満たし、すべての要素が $0$ 以上となる。$S'$ の要素が等差数列をなせば、$S$ の要素も等差数列をなす。 したがって、以下では $S$ の要素がすべて $0$ 以上((イ) が成り立つ)である場合について証明する。
$S$ の要素を大きい順に並べ、
$$ x_1 > x_2 > \dots > x_n \geqq 0 $$
とする。 $1 \leqq i < j \leqq n$ なる任意の $i, j$ について、$x_i > x_j$ より $x_i - x_j > 0$、$x_j - x_i < 0$ である。 $S$ の要素はすべて $0$ 以上であるため、$x_j - x_i \notin S$ である。 よって、$S$ の性質より、常に $x_i - x_j \in S$ が成り立つ。
$S$ の正の要素のうち、最小のものを $d$ とおく。 ($n \geqq 3$ であり要素はすべて異なるため、正の要素は少なくとも2つ存在し、$d$ は必ず存在する。) 各 $i$ ($1 \leqq i \leqq n-1$)について、$S$ の要素のうち $0 < x < x_i$ を満たすものの集合を $S_i$ とする。すなわち、
$$ S_i = \{x_k \mid i < k \leqq n \text{ かつ } x_k > 0\} $$
一方、$x_i$ から自分より小さい正の要素を引いた値の集合を $D_i$ とする。すなわち、
$$ D_i = \{x_i - x_k \mid i < k \leqq n \text{ かつ } x_k > 0\} $$
任意の $x_k > 0$ に対して、$0 < x_i - x_k < x_i$ であり、先述の通りつねに $x_i - x_k \in S$ であるから、$D_i$ の要素はすべて $S_i$ に属する($D_i \subseteq S_i$)。 また、$x_k$ はすべて異なるため、$x_i - x_k$ もすべて異なり、$D_i$ の要素数は $S_i$ の要素数と完全に一致する。 有限集合において要素数が等しい部分集合関係が成り立つため、$D_i = S_i$ である。
ここで、$x_i > d$ であるような $i$ について考える。 このとき、一つ小さい要素 $x_{i+1}$ は $x_{i+1} \geqq d > 0$ を満たす。 $D_i = S_i$ より、それぞれの「最小の要素」も一致する。 $S_i$ の最小の要素は、定義より $S$ の最小の正の要素である $d$ である。 一方、$D_i$ の最小の要素は、引く数 $x_k$ が最大のとき、すなわち $k = i+1$ のときの $x_i - x_{i+1}$ である。 したがって、
$$ x_i - x_{i+1} = d $$
が成り立つ。
残るは $x_i = d$ となる $i$ の場合である。 $d$ は最小の正の要素であるから、以下の2パターンのみである。
- $x_n > 0$ の場合は $x_n = d$ である。このとき $x_{n-1} > x_n = d$ であるから、$i = n-1$ について上の議論が適用でき、$x_{n-1} - x_n = d$ が成り立つ。
- $x_n = 0$ の場合は $x_{n-1} = d$ である。このとき $x_{n-1} - x_n = d - 0 = d$ となり、やはり成り立つ。
以上より、すべての $1 \leqq i \leqq n-1$ について $x_i - x_{i+1} = d$ が成り立つ。 これは、順序を逆にした列 $x_n, x_{n-1}, \dots, x_1$ が公差 $d$ の等差数列になることを示している。(証明終)
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