京都大学 1985年 理系 第5問 解説

方針・初手
2枚の硬貨を投げて表が出る枚数 $X$ の確率分布を、それぞれの硬貨が表になる確率 $a, b$ を用いて表す。 与えられた確率分布と各値が一致するという条件から $a, b$ についての連立方程式を立てる。$a, b$ はともに確率であるため、$0 \leqq a \leqq 1$ かつ $0 \leqq b \leqq 1$ の実数であるという条件を満たす解が存在するかを調べる。 連立方程式を解く際は、$a+b$ と $ab$ の値を求めて解と係数の関係を利用し、2次方程式の実数解として処理するのが定石である。
解法1
確率の定義より、$a, b$ は以下の条件を満たす実数である。
$$ 0 \leqq a \leqq 1, \quad 0 \leqq b \leqq 1 $$
2枚の硬貨を投げて、表が出た枚数 $X$ が $0, 1, 2$ となる確率をそれぞれ $a, b$ を用いて表すと次のようになる。 $X=2$ となるのは2枚とも表が出るときであるから、
$$ P(X=2) = ab $$
$X=0$ となるのは2枚とも裏が出るときであるから、裏が出る確率がそれぞれ $1-a, 1-b$ であることを用いて、
$$ P(X=0) = (1-a)(1-b) = 1 - (a+b) + ab $$
$X=1$ となるのは一方が表、もう一方が裏が出るときであるから、
$$ P(X=1) = a(1-b) + (1-a)b = a+b - 2ab $$
なお、確率の総和は $P(X=0) + P(X=1) + P(X=2) = 1$ となるため、$P(X=0)$ と $P(X=2)$ の条件を満たせば、自動的に $P(X=1)$ の条件も満たされる。したがって、以下では $P(X=0)$ と $P(X=2)$ に着目して連立方程式を解く。
(i)
$X$ が2項分布に従う場合
与えられた確率分布より、$P(X=k) = {}_2\mathrm{C}_{k} p^k (1-p)^{2-k}$ であるから、
$$ P(X=2) = {}_2\mathrm{C}_{2} p^2 (1-p)^0 = p^2 $$
$$ P(X=0) = {}_2\mathrm{C}_{0} p^0 (1-p)^2 = (1-p)^2 = 1 - 2p + p^2 $$
これらを $a, b$ で表した確率と等値する。
$$ ab = p^2 \quad \cdots \text{①} $$
$$ 1 - (a+b) + ab = 1 - 2p + p^2 \quad \cdots \text{②} $$
②に①を代入して整理する。
$$ 1 - (a+b) + p^2 = 1 - 2p + p^2 $$
$$ a+b = 2p \quad \cdots \text{③} $$
①、③より、$a, b$ は $t$ についての2次方程式 $t^2 - 2pt + p^2 = 0$ の2つの解である。 この方程式は $(t-p)^2 = 0$ と因数分解できるため、解は $t = p$ (重解)となる。 したがって、$a = p, b = p$ となる。 問題の条件より $0 < p < 1$ であるから、この $a, b$ は $0 \leqq a \leqq 1, 0 \leqq b \leqq 1$ を満たす。 また、このとき $P(X=1) = a+b - 2ab = 2p - 2p^2 = 2p(1-p)$ となり、与えられた2項分布の $P(X=1) = {}_2\mathrm{C}_{1} p^1 (1-p)^1 = 2p(1-p)$ と一致する。 よって、条件を満たす $a, b$ の組は $(a, b) = (p, p)$ の1組だけ存在する。
(ii)
$X$ が一様分布に従う場合
与えられた確率分布より、$P(X=0) = P(X=1) = P(X=2) = \frac{1}{3}$ である。 これらを $a, b$ で表した確率と等値する。
$$ ab = \frac{1}{3} \quad \cdots \text{④} $$
$$ 1 - (a+b) + ab = \frac{1}{3} \quad \cdots \text{⑤} $$
⑤に④を代入して整理する。
$$ 1 - (a+b) + \frac{1}{3} = \frac{1}{3} $$
$$ a+b = 1 \quad \cdots \text{⑥} $$
④、⑥より、$a, b$ は $t$ についての2次方程式 $t^2 - t + \frac{1}{3} = 0$ の2つの解である。 この2次方程式の判別式を $D$ とすると、
$$ D = (-1)^2 - 4 \cdot 1 \cdot \frac{1}{3} = 1 - \frac{4}{3} = -\frac{1}{3} < 0 $$
判別式が負となるため、この2次方程式は実数解をもたない。 確率 $a, b$ は実数でなければならないため、これを満たす $a, b$ は存在しない。
解説
確率分布の定義に従って連立方程式を立式し、解の存在範囲(実数条件および $0 \leqq p \leqq 1$)を確認する問題である。 和 $a+b$ と積 $ab$ の基本対称式から2次方程式を作成する解法は、数学IIの方程式・式と証明の分野で頻出の処理であり、式変形を簡潔に進めるために有効である。特に (ii) では、具体的な値を求めようとする前に判別式を調べることで、即座に存在しないことを証明できる。
答え
(i)
$a=p, b=p$ の1組だけ存在する。
(ii)
存在しない。
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