京都大学 2007年 理系 第1問(甲) 解説

問1
方針・初手
(1) ケーリー・ハミルトンの定理を用いて、行列 $A$ が満たす2次方程式を導く。与えられた高次式の行列多項式をその2次式で割ることで、次数下げを行う。
(2) 3回の得点を順に $X_1, X_2, X_3$ としたとき、$X_1 \leqq X_2 \leqq X_3$ を満たす組 $(X_1, X_2, X_3)$ の数を求める。重複組合せを利用するか、値が等しくなる数で場合分けをして数え上げる。
解法1
(1)
$A = \begin{pmatrix} 2 & 4 \\ -1 & -1 \end{pmatrix}$ について、ケーリー・ハミルトンの定理より、
$$ A^2 - \{2 + (-1)\}A + \{2 \cdot (-1) - 4 \cdot (-1)\}E = O $$
よって、
$$ A^2 - A + 2E = O $$
が成り立つ。
ここで、多項式 $x^6 + 2x^4 + 2x^3 + 2x^2 + 2x + 3$ を $x^2 - x + 2$ で割ることを考える。
$$\begin{aligned} x^6 + 2x^4 + 2x^3 + 2x^2 + 2x + 3 &= x^4(x^2 - x + 2) + x^5 + 2x^3 + 2x^2 + 2x + 3 \\ &= x^4(x^2 - x + 2) + x^3(x^2 - x + 2) + x^4 + 2x^2 + 2x + 3 \\ &= x^4(x^2 - x + 2) + x^3(x^2 - x + 2) + x^2(x^2 - x + 2) + x^3 + 2x + 3 \\ &= x^4(x^2 - x + 2) + x^3(x^2 - x + 2) + x^2(x^2 - x + 2) + x(x^2 - x + 2) + x^2 + 3 \\ &= x^4(x^2 - x + 2) + x^3(x^2 - x + 2) + x^2(x^2 - x + 2) + x(x^2 - x + 2) + (x^2 - x + 2) + x + 1 \\ &= (x^2 - x + 2)(x^4 + x^3 + x^2 + x + 1) + x + 1 \end{aligned}$$
したがって、行列の多項式においても以下が成り立つ。
$$ A^6 + 2A^4 + 2A^3 + 2A^2 + 2A + 3E = (A^2 - A + 2E)(A^4 + A^3 + A^2 + A + E) + A + E $$
$A^2 - A + 2E = O$ であるから、
$$\begin{aligned} A^6 + 2A^4 + 2A^3 + 2A^2 + 2A + 3E &= O \cdot (A^4 + A^3 + A^2 + A + E) + A + E \\ &= A + E \\ &= \begin{pmatrix} 2 & 4 \\ -1 & -1 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} 3 & 4 \\ -1 & 0 \end{pmatrix} \end{aligned}$$
(2)
1回目、2回目、3回目の得点をそれぞれ $X_1, X_2, X_3$ とする。
これらは $1$ から $n$ までの整数を等確率でとるため、すべての得点の出方は $n^3$ 通りであり、これらは同様に確からしい。
条件「2回目の得点が1回目の得点以上であり、さらに3回目の得点が2回目の得点以上」は、
$$ 1 \leqq X_1 \leqq X_2 \leqq X_3 \leqq n $$
と表される。
これを満たす整数の組 $(X_1, X_2, X_3)$ の個数は、$1$ から $n$ までの $n$ 個の整数の中から、重複を許して3個選ぶ重複組合せの総数に等しい。
よって、その総数は
$$ {}_n\mathrm{H}_3 = {}_{n+3-1}\mathrm{C}_{3} = {}_{n+2}\mathrm{C}_{3} = \frac{(n+2)(n+1)n}{6} = \frac{n(n+1)(n+2)}{6} \text{ (通り)} $$
したがって、求める確率は
$$ \frac{\dfrac{n(n+1)(n+2)}{6}}{n^3} = \frac{(n+1)(n+2)}{6n^2} $$
解法2
(2)の場合分けによる解法
条件 $1 \leqq X_1 \leqq X_2 \leqq X_3 \leqq n$ を満たす $(X_1, X_2, X_3)$ の組を、値が等しいものがいくつあるかで場合分けして数える。
(i) 3つの値がすべて等しい場合 ($X_1 = X_2 = X_3$)
$1$ から $n$ までの $n$ 個から1つの値を選ぶので、$n$ 通り。
(ii) 2つの値が等しく、1つの値が異なる場合 ($X_1 = X_2 < X_3$ または $X_1 < X_2 = X_3$)
$1$ から $n$ までの $n$ 個から異なる2つの値を選び、小さい方を2つ・大きい方を1つとするか、小さい方を1つ・大きい方を2つとするかの2パターンがある。
選んだ2つの値の組合せは ${}_n\mathrm{C}_{2}$ 通りあるので、
$$ {}_n\mathrm{C}_{2} \times 2 = \frac{n(n-1)}{2} \times 2 = n(n-1) \text{ (通り)} $$
(iii) 3つの値がすべて異なる場合 ($X_1 < X_2 < X_3$)
$1$ から $n$ までの $n$ 個から異なる3つの値を選べば、自動的に小さい順に $X_1, X_2, X_3$ と一意に決まる。
$$ {}_n\mathrm{C}_{3} = \frac{n(n-1)(n-2)}{6} \text{ (通り)} $$
(i), (ii), (iii) は互いに排反であるから、条件を満たす組の総数は
$$\begin{aligned} &n + n(n-1) + \frac{n(n-1)(n-2)}{6} \\ &= n^2 + \frac{n^3 - 3n^2 + 2n}{6} \\ &= \frac{6n^2 + n^3 - 3n^2 + 2n}{6} \\ &= \frac{n(n+1)(n+2)}{6} \text{ (通り)} \end{aligned}$$
全事象は $n^3$ 通りであるから、求める確率は
$$ \frac{n(n+1)(n+2)}{6n^3} = \frac{(n+1)(n+2)}{6n^2} $$
解説
(1) は行列の高次式の値を求める典型問題です。ケーリー・ハミルトンの定理で2次式 $= O$ を導き、多項式の割り算によって次数を1次以下に下げるのが定石です。割り算の際は、行列を文字 $x$ とおいた多項式の割り算を実行し、後から行列を代入して考えると見通しが良くなります。
(2) は大小関係が指定された確率の問題です。不等号に等号が含まれる $\leqq$ の場合は「重複組合せ(${}_n\mathrm{H}_r$)」とみなす見方が強力です。重複組合せの考え方に慣れていない場合は、等号が成り立つ箇所がいくつあるかで場合分けをして通常の組合せ(${}_n\mathrm{C}_{r}$)に帰着させる解法2が確実です。
答え
(1)
$$ \begin{pmatrix} 3 & 4 \\ -1 & 0 \end{pmatrix} $$
(2)
$$ \frac{(n+1)(n+2)}{6n^2} $$
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