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名古屋大学 2011年 理系 第2問 解説

旧課程/行列・一次変換数学A/確率数学B/数列テーマ/最大・最小テーマ/漸化式
名古屋大学 2011年 理系 第2問 解説

方針・初手

行列 $A_k$ が逆行列をもつための条件は、行列式が $0$ でないことである。試行により成分は $0$ 以上の整数として増えていくため、「逆行列をもたない」状態がどのような成分の配置であるかを分類することが最大の鍵となる。一度でも逆行列をもつ(対角成分が交差して正になるなど)と、その後も逆行列をもたない状態に戻ることはない点に注意して、条件を満たす状態遷移を追っていく。

解法1

$k$ 回の試行後の行列 $A_k$ を以下のように表す。

$$ A_k = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} $$

各試行により、成分 $a, b, c, d$ のいずれかに $1$ が加算されるため、これらは非負整数であり、$a+b+c+d = k$ を満たす。 $A_k$ が逆行列をもつための条件は、$\det A_k = ad - bc \neq 0$ である。 逆に、$A_k$ が逆行列をもたない条件は $ad = bc$ である。

成分はすべて非負整数であるから、$ad = bc$ となるのは以下のいずれかの場合である。 (i) $ad = bc = 0$ (ii) $ad = bc > 0$

(ii) の場合、$a, b, c, d$ はすべて正の整数でなければならない。この状態に到達するには少なくとも $4$ 回の試行が必要であるが、その直前(正の成分が $3$ 個、残りの $1$ 個が $0$ の状態)において、例えば $d=0$ ならば $ad=0, bc>0$ となり $ad \neq bc$ が成立してしまう。 すなわち、(ii) の状態に達する前には必ず逆行列をもつ状態を経由するため、「$A_0, A_1, \cdots, A_{n-1}$ がすべて逆行列をもたない」という条件のもとでは、各 $A_k$ は常に (i) の $ad=bc=0$ を満たしていなければならない。

$ad=bc=0$ を満たすのは、正の成分の配置が以下のいずれかになる場合である。

これ以外の状態(斜めの $2$ 成分が正、または $3$ つ以上の成分が正)になった瞬間に逆行列をもつことになる。

(1) $A_1$ は必ず $1$ つの成分が $1$ であるため、[状態 X] であり逆行列をもたない。 $p_2$ は、$A_1$ が逆行列をもたず、$A_2$ が逆行列をもつ確率である。 $A_1$ から $A_2$ になる際、異なる行かつ異なる列の成分(対角の位置の成分)が選ばれればよい。 $1$ 回目の試行でどの札が選ばれてもよく(確率 $1$)、$2$ 回目の試行で対角の位置の札が選ばれる確率は $\frac{1}{4}$ である。

$$ p_2 = 1 \times \frac{1}{4} = \frac{1}{4} $$

次に $p_3$ を求める。$A_1, A_2$ が逆行列をもたず、$A_3$ で初めて逆行列をもつには、$A_2$ の状態によって以下の $2$ つのパターンに分けられる。

(ア) $A_2$ が [状態 X] の場合 $2$ 回の試行で同じ札が出続ける確率であり、$4 \times \left(\frac{1}{4}\right)^2 = \frac{1}{4}$ である。 このとき $A_3$ で逆行列をもつには、$3$ 回目に対角の札が出ればよいので、その確率は $\frac{1}{4}$ である。

(イ) $A_2$ が [状態 Y] の場合 $2$ 回の試行で、同じ行または列の異なる $2$ つの札が出る確率である。 例えば第 $1$ 行の $2$ つの札($(1,1)$ と $(1,2)$)が $1$ 回ずつ出る確率は $2! \times \left(\frac{1}{4}\right)^2 = \frac{1}{8}$ である。 同じ行・列は $4$ 箇所あるため、確率は $4 \times \frac{1}{8} = \frac{1}{2}$ である。 このとき $A_3$ で逆行列をもつには、現在正である成分とは異なる行・列の札(例えば第 $1$ 行が正なら、第 $2$ 行の $2$ つの札のいずれか)が出ればよいので、その確率は $\frac{2}{4} = \frac{1}{2}$ である。

したがって、$p_3$ はこれらの和となる。

$$ p_3 = \frac{1}{4} \times \frac{1}{4} + \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{16} + \frac{1}{4} = \frac{5}{16} $$

(2) $(n-1)$ 回の試行後に $A_{n-1}$ の第 $1$ 行の成分がともに正、第 $2$ 行の成分がともに $0$ となる確率 $q_{n-1}$ を求める。 これは、$(n-1)$ 回の試行すべてにおいて、$(1,1)$ または $(1,2)$ の札が選ばれ、かつ、どちらの札も少なくとも $1$ 回は選ばれる事象である。

毎回 $(1,1)$ または $(1,2)$ が選ばれる確率は $\frac{1}{4} + \frac{1}{4} = \frac{1}{2}$ であり、$(n-1)$ 回連続して選ばれる確率は $\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}$ である。 このうち、$(n-1)$ 回すべてで $(1,1)$ が選ばれる確率 $\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1}$ と、すべてで $(1,2)$ が選ばれる確率 $\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1}$ を除外すればよい。

$$ q_{n-1} = \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1} - 2\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} $$

(3) $A_1, \cdots, A_{n-1}$ が逆行列をもたず、$A_n$ で初めて逆行列をもつ確率 $p_n$ を求める。 大前提の分類により、$A_{n-1}$ の状態は [状態 X] または [状態 Y] のいずれかである。

(ア) $A_{n-1}$ が [状態 X] の場合 特定の $1$ つの成分のみが $(n-1)$ 回連続で選ばれる確率であり、$4 \times \left(\frac{1}{4}\right)^{n-1}$ である。 ここから $n$ 回目に逆行列をもつためには、対角の成分が選ばれればよく、その確率は $\frac{1}{4}$ である。

(イ) $A_{n-1}$ が [状態 Y] の場合 特定の行または列の $2$ つの成分がともに正となる確率は、(2) より $q_{n-1}$ である。 行と列の選び方は合計 $4$ 通りあり、これらは互いに排反であるから、[状態 Y] になる確率は $4 q_{n-1}$ である。 ここから $n$ 回目に逆行列をもつためには、現在正である成分とは異なる行・列の成分(残り $2$ つのいずれか)が選ばれればよく、その確率は $\frac{2}{4} = \frac{1}{2}$ である。

以上より、$p_n$ は次のように計算できる。

$$ \begin{aligned} p_n &= 4\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} \times \frac{1}{4} + 4 q_{n-1} \times \frac{1}{2} \\ &= \left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} + 2\left\{ \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1} - 2\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} \right\} \\ &= 2\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1} - 3\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} \\ &= \left(\frac{1}{2}\right)^{n-2} - 3\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} \end{aligned} $$

この式は $n=2$ のとき $\left(\frac{1}{2}\right)^0 - 3\left(\frac{1}{4}\right)^1 = 1 - \frac{3}{4} = \frac{1}{4}$ となり、(1) の結果と一致するため $n \geqq 2$ で成立する。

解説

行列と確率の融合問題における定石として、「逆行列をもたない条件($\det A = 0$)」を具体的な成分の配置に翻訳する処理が求められる。成分が非負整数であることから、$ad=bc$ となる条件は「行列の同じ行か列に成分が偏っている」状態に限定されることに気づけるかが最大のポイントである。

状態の遷移を事象の排反性に注意して分類することで、等比数列を用いたシンプルな確率計算に帰着できる。小問(2)の $q_{n-1}$ がそのまま(3)の計算部品として機能する誘導になっているため、(2)の「第1行に集中する」という事象の対称性を利用して、$4$ 倍すれば「1行か1列に集中する」事象の確率を表現できることを見抜くと見通しが良くなる。

答え

(1) $$ p_2 = \frac{1}{4}, \quad p_3 = \frac{5}{16} $$

(2) $$ q_{n-1} = \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1} - 2\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} $$

(3) $$ p_n = \left(\frac{1}{2}\right)^{n-2} - 3\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1} $$

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