京都大学 2007年 文系 第1問(甲) 解説

問1
方針・初手
(1) ケーリー・ハミルトンの定理を用いて、行列 $A$ が満たす2次方程式を導きます。与えられた高次式の行列多項式をその2次式で割ることで、次数下げを行います。
(2) 確率漸化式を立てて解きます。点 $P$ が $n$ 秒後に頂点 $O$ にある確率と、底面の頂点にある確率に分けて考えます。底面のどの頂点にいても、次の1秒で頂点 $O$ に移動する確率は同じであることに着目するのがポイントです。
解法1
(1)
行列 $A = \begin{pmatrix} 2 & 4 \\ -1 & -1 \end{pmatrix}$ に対して、ケーリー・ハミルトンの定理より、
$$ A^2 - \{2 + (-1)\}A + \{2 \cdot (-1) - 4 \cdot (-1)\}E = O $$
よって、
$$ A^2 - A + 2E = O $$
が成り立つ。
ここで、多項式 $x^6 + 2x^4 + 2x^3 + 2x^2 + 2x + 3$ を $x^2 - x + 2$ で割ることを考える。
$$\begin{aligned} x^6 + 2x^4 + 2x^3 + 2x^2 + 2x + 3 &= x^4(x^2 - x + 2) + x^3(x^2 - x + 2) + x^2(x^2 - x + 2) \\ &\quad + x(x^2 - x + 2) + (x^2 - x + 2) + x + 1 \\ &= (x^2 - x + 2)(x^4 + x^3 + x^2 + x + 1) + x + 1 \end{aligned}$$
したがって、
$$ A^6 + 2A^4 + 2A^3 + 2A^2 + 2A + 3E = (A^2 - A + 2E)(A^4 + A^3 + A^2 + A + E) + A + E $$
$A^2 - A + 2E = O$ であるから、
$$\begin{aligned} A^6 + 2A^4 + 2A^3 + 2A^2 + 2A + 3E &= A + E \\ &= \begin{pmatrix} 2 & 4 \\ -1 & -1 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 3 & 4 \\ -1 & 0 \end{pmatrix} \end{aligned}$$
(2)
$n$ 秒後に点 $P$ が頂点 $O$ にある確率を $p_n$、底面 $ABCD$ のいずれかの頂点にある確率を $q_n$ とする。
点 $P$ は常に5つの頂点のいずれかにあるため、
$$ p_n + q_n = 1 \quad \cdots (i) $$
時刻 $n+1$ に点 $P$ が頂点 $O$ にあるのは、時刻 $n$ に底面のいずれかの頂点にあり、そこから頂点 $O$ に移動する場合のみである。
底面の各頂点(例えば $A$)から移動できる頂点は、隣り合う底面の2頂点($B, D$)と頂点 $O$ の合計3つである。各頂点へは等しい確率で移動するため、底面のどの頂点からでも頂点 $O$ に移動する確率は $\dfrac{1}{3}$ である。
したがって、
$$ p_{n+1} = \frac{1}{3} q_n $$
$(i)$ より $q_n = 1 - p_n$ を代入すると、
$$ p_{n+1} = -\frac{1}{3} p_n + \frac{1}{3} $$
特性方程式 $\alpha = -\dfrac{1}{3}\alpha + \dfrac{1}{3}$ を解くと $\alpha = \dfrac{1}{4}$ となる。変形すると、
$$ p_{n+1} - \frac{1}{4} = -\frac{1}{3} \left( p_n - \frac{1}{4} \right) $$
数列 $\left\{p_n - \dfrac{1}{4}\right\}$ は公比 $-\dfrac{1}{3}$ の等比数列である。
初期条件は $p_0 = 1$ であるから、
$$ p_n - \frac{1}{4} = \left( 1 - \frac{1}{4} \right) \left( -\frac{1}{3} \right)^n = \frac{3}{4} \left( -\frac{1}{3} \right)^n $$
したがって、
$$ p_n = \frac{1}{4} + \frac{3}{4} \left( -\frac{1}{3} \right)^n $$
解説
(1) は行列の高次式の値を求める基本問題です。ケーリー・ハミルトンの定理を用いて $A^2 - A + 2E = O$ を作り、多項式の割り算を実行することで次数を1次以下に下げるのが定石です。
(2) は図形上の点の移動と確率漸化式を組み合わせた頻出問題です。着目すべきは「底面の頂点はすべて対等な立場にある」ということです。そのため、各頂点ごとに個別の確率変数を設定する必要はなく、「頂点 $O$ にいるか」「底面のどこかにいるか」の2つの状態だけを考えれば、シンプルな漸化式に帰着させることができます。
答え
(1)
$$ \begin{pmatrix} 3 & 4 \\ -1 & 0 \end{pmatrix} $$
(2)
$$ \frac{1}{4} + \frac{3}{4} \left( -\frac{1}{3} \right)^n $$
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