京都大学 2010年 理系 第4問(甲) 解説

方針・初手
与えられた不等式に $n=1$ を代入し、まずは初項 $a_1$ の値を求めます。 その後は、第 $n$ 項が第 $1$ 項から第 $n-1$ 項までの情報に依存して決まる構造であることに着目します。これを解決する手段として、以下の2つの方針が考えられます。
- 数学的帰納法を用いて、すべての項が $0$ になることを順次示す。
- 数列の和を $S_n = \sum_{k=1}^n a_k$ とおき、$S_n$ に関する不等式を作って評価する。
解法1
数学的帰納法を用いて、すべての正の整数 $n$ に対して $a_n = 0$ であることを示す。
[1] $n=1$ のとき
与えられた不等式に $n=1$ を代入すると、
$$ 0 \leqq 3a_1 \leqq \sum_{k=1}^1 a_k $$
$$ 0 \leqq 3a_1 \leqq a_1 $$
$3a_1 \leqq a_1$ より $2a_1 \leqq 0$ すなわち $a_1 \leqq 0$ である。 一方で $0 \leqq 3a_1$ より $a_1 \geqq 0$ であるから、$a_1 = 0$ となる。
よって、$n=1$ のとき成り立つ。
[2] $n=1, 2, \cdots, m$ のとき、$a_n = 0$ が成り立つと仮定する。
このとき、$\displaystyle\sum_{k=1}^m a_k = 0$ である。
$n=m+1$ のとき、与えられた不等式より、
$$ 0 \leqq 3a_{m+1} \leqq \sum_{k=1}^{m+1} a_k $$
ここで、右辺の和を分割して帰納法の仮定を用いると、
$$ \sum_{k=1}^{m+1} a_k = \sum_{k=1}^m a_k + a_{m+1} = 0 + a_{m+1} = a_{m+1} $$
となるため、不等式は以下のようになる。
$$ 0 \leqq 3a_{m+1} \leqq a_{m+1} $$
$n=1$ のときと同様に、この不等式を満たすのは $a_{m+1} = 0$ のみである。
よって、$n=m+1$ のときも成り立つ。
[1], [2] より、すべての正の整数 $n$ に対して $a_n = 0$ である。
解法2
$S_n = \displaystyle\sum_{k=1}^n a_k$ とおく。
条件の不等式 $0 \leqq 3a_n$ より、すべての正の整数 $n$ に対して $a_n \geqq 0$ である。 したがって、$S_n$ は $n$ に関して単調に非減少であり、$S_n \geqq 0$ を満たす。
$n=1$ のとき、与えられた不等式より $0 \leqq 3a_1 \leqq a_1$ であるから $a_1 = 0$ となり、$S_1 = 0$ である。
$n \geqq 2$ のとき、$a_n = S_n - S_{n-1}$ である。 与えられた不等式 $3a_n \leqq \displaystyle\sum_{k=1}^n a_k$ は、次のように書き換えられる。
$$ 3(S_n - S_{n-1}) \leqq S_n $$
これを整理すると、
$$ 2S_n \leqq 3S_{n-1} $$
$$ S_n \leqq \frac{3}{2} S_{n-1} $$
となる。これを繰り返し用いると、
$$ 0 \leqq S_n \leqq \frac{3}{2} S_{n-1} \leqq \left(\frac{3}{2}\right)^2 S_{n-2} \leqq \cdots \leqq \left(\frac{3}{2}\right)^{n-1} S_1 $$
$S_1 = 0$ であるから、
$$ 0 \leqq S_n \leqq 0 $$
よって、$n \geqq 2$ においても $S_n = 0$ である。
これより、すべての正の整数 $n$ に対して $S_n = 0$ となる。 $n \geqq 2$ のとき $a_n = S_n - S_{n-1} = 0 - 0 = 0$ であり、$a_1 = 0$ も合わせて、すべての正の整数 $n$ に対して $a_n = 0$ である。
解説
数列の和 $\displaystyle\sum_{k=1}^n a_k$ を含む漸化式や不等式を扱う際の典型問題です。
解法1のように「以前の項がすべて特定の性質を満たす」ことを利用する帰納法(累積的な数学的帰納法)は、数列の和が含まれる条件式に対して非常に有効です。
また、解法2のように和を $S_n$ とおき、$a_n = S_n - S_{n-1}\ (n \geqq 2)$ を用いて $S_n$ だけの関係式に帰着させるアプローチも定石です。どちらのアプローチを選択しても、まずは $n=1$ の場合を独立して調べることが第一歩となります。
答え
すべての正の整数 $n$ に対して $a_n = 0$ であることが示された。(証明終)
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