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京都大学 2011年 理系 第4問 解説

数学B/数列数学2/式と証明テーマ/不等式の証明テーマ/数学的帰納法
京都大学 2011年 理系 第4問 解説

方針・初手

$n$ に関する不等式の証明であるため、数学的帰納法を用いるのが最も自然なアプローチです。帰納法の $n=k+1$ のステップにおいて、仮定した不等式の両辺に $(1-a_{k+1})$ を掛けた式と、最終的に示したい式(目標の式)との大小比較を行います。その比較の過程で、問題文の条件である $a_j > \dfrac{1}{2}$ を用いて等比数列の和を作り出し、鮮やかに評価を完成させるのが本問の最大の山場となります。

解法1

数学的帰納法を用いて証明する。

(I) $n=2$ のとき

左辺は $(1-a_1)(1-a_2) = 1 - a_1 - a_2 + a_1 a_2$

右辺は $1 - \left( a_1 + \dfrac{a_2}{2} \right)$

(左辺)$-$(右辺)を計算すると、

$$ (1 - a_1 - a_2 + a_1 a_2) - \left( 1 - a_1 - \frac{a_2}{2} \right) = -a_2 + a_1 a_2 + \frac{a_2}{2} = a_2 \left( a_1 - \frac{1}{2} \right) $$

条件より $\dfrac{1}{2} < a_j < 1$ であるから、$a_2 > 0$ かつ $a_1 - \dfrac{1}{2} > 0$ である。よって $a_2 \left( a_1 - \dfrac{1}{2} \right) > 0$ となり、左辺 $>$ 右辺が成り立つ。

したがって、$n=2$ のとき不等式は成立する。

(II) $n=k$($k \geqq 2$)のとき不等式が成立すると仮定する。

すなわち、

$$ (1-a_1)(1-a_2)\cdots(1-a_k) > 1 - \left( a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} \right) $$

この両辺に $(1-a_{k+1})$ を掛ける。仮定より $\dfrac{1}{2} < a_{k+1} < 1$ であるから $1-a_{k+1} > 0$ であり、不等号の向きは変わらない。

$$ (1-a_1)\cdots(1-a_k)(1-a_{k+1}) > \left\{ 1 - \left( a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} \right) \right\} (1-a_{k+1}) $$

右辺を展開して整理すると、

$$ = 1 - \left( a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} \right) - a_{k+1} + a_{k+1} \left( a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} \right) $$

ここで、$n=k+1$ のときに示すべき目標の右辺は $1 - \left( a_1 + \dfrac{a_2}{2} + \cdots + \dfrac{a_k}{2^{k-1}} + \dfrac{a_{k+1}}{2^k} \right)$ である。

(展開した右辺)$-$(目標の右辺)を計算して、これが正であることを示す。

$$ -a_{k+1} + a_{k+1} \left( a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} \right) + \frac{a_{k+1}}{2^k} $$

$$ = a_{k+1} \left( a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} - 1 + \frac{1}{2^k} \right) \quad \cdots (*) $$

条件より各 $j$ について $a_j > \dfrac{1}{2}$ であるから、括弧内の和の部分を次のように評価できる。

$$ a_1 + \frac{a_2}{2} + \frac{a_3}{2^2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} > \frac{1}{2} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{2^3} + \cdots + \frac{1}{2^k} $$

この右辺は、初項 $\dfrac{1}{2}$、公比 $\dfrac{1}{2}$、項数 $k$ の等比数列の和であるから、

$$ \frac{\dfrac{1}{2}\left(1 - \left(\dfrac{1}{2}\right)^k\right)}{1 - \dfrac{1}{2}} = 1 - \frac{1}{2^k} $$

ゆえに、

$$ a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} - 1 + \frac{1}{2^k} > 0 $$

$a_{k+1} > 0$ であるから、式 $(*)$ は正となる。したがって、

$$ \left\{ 1 - \left( a_1 + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} \right) \right\} (1-a_{k+1}) > 1 - \left( a_1 + \cdots + \frac{a_k}{2^{k-1}} + \frac{a_{k+1}}{2^k} \right) $$

これと帰納法の仮定を合わせることで、

$$ (1-a_1)(1-a_2)\cdots(1-a_k)(1-a_{k+1}) > 1 - \left( a_1 + \frac{a_2}{2} + \cdots + \frac{a_{k+1}}{2^k} \right) $$

が示され、$n=k+1$ のときも不等式は成立する。

(I), (II) より、$2$ 以上のすべての整数 $n$ について、与えられた不等式が成立する。(証明終)

解説

不等式の証明の定石である数学的帰納法を用いた良問である。帰納法のステップで、仮定した式の両辺に $(1-a_{k+1})$ を掛けて展開し、目標の式と比較する手法は、ベルヌーイの不等式 $(1+x)^n \geqq 1+nx$ の証明などでも現れる頻出の論理構造である。

本問の山場は、比較した差の式から $a_j > \dfrac{1}{2}$ という条件をどう使うかという点にある。各項を $\dfrac{1}{2}$ に置き換えると「等比数列の和」が現れ、それがちょうど $1 - \dfrac{1}{2^k}$ になることで式がプラスに転じるという、計算のパズル的な美しさが味わえる問題となっている。

答え

略(解法1の証明を参照)

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