九州大学 1991年 理系 第4問 解説

方針・初手
与えられた漸化式から数列の各項の性質や収束の様子を評価する問題である。 (1) では $a_n > 1$ を数学的帰納法によって示し、それを用いて数列の単調減少性を示す。 (2) は直接計算によって $a_3$ を求めたのち、(1) で導いた漸化式の変形と単調減少性を用いて不等式を評価する。 (3) は (2) の不等式の両辺に適切に定数を掛けることで、2乗の形が連鎖するような新たな数列の不等式を作り出し、それを解きほぐすことが着眼点となる。
解法1
(1)
数学的帰納法により、すべての自然数 $n$ について $a_n > 1$ が成り立つことを示す。
(i) $n=1$ のとき $a_1 = 2 > 1$ であり、成り立つ。
(ii) $n=k$($k \ge 1$)のとき $a_k > 1$ が成り立つと仮定する。$n=k+1$ のとき、
$$a_{k+1} - 1 = \frac{1}{2}\left(a_k + \frac{1}{a_k}\right) - 1 = \frac{a_k^2 - 2a_k + 1}{2a_k} = \frac{(a_k - 1)^2}{2a_k}$$
帰納法の仮定より $a_k > 1$ であるから、$a_k > 0$ かつ $(a_k - 1)^2 > 0$ である。 よって $a_{k+1} - 1 > 0$ となり、$a_{k+1} > 1$ が成り立つ。
(i)、(ii) より、すべての自然数 $n$ に対して $a_n > 1$ が成り立つ。
次に、$a_{n+1} < a_n$ が成り立つことを示す。差をとると、
$$a_{n+1} - a_n = \frac{1}{2}\left(a_n + \frac{1}{a_n}\right) - a_n = \frac{1 - a_n^2}{2a_n} = \frac{(1 - a_n)(1 + a_n)}{2a_n}$$
前半の証明により、すべての $n$ に対して $a_n > 1$ であるから、$1 - a_n < 0$、$1 + a_n > 0$、$2a_n > 0$ となる。 したがって $a_{n+1} - a_n < 0$ となり、すべての自然数 $n$ に対して $a_{n+1} < a_n$ が成り立つ。
(2)
漸化式に $n=1, 2$ を代入して順に計算する。
$$a_2 = \frac{1}{2}\left(a_1 + \frac{1}{a_1}\right) = \frac{1}{2}\left(2 + \frac{1}{2}\right) = \frac{5}{4}$$
$$a_3 = \frac{1}{2}\left(a_2 + \frac{1}{a_2}\right) = \frac{1}{2}\left(\frac{5}{4} + \frac{4}{5}\right) = \frac{41}{40}$$
次に、$n \ge 3$ のとき $a_{n+1} - 1 \ge \frac{20}{41}(a_n - 1)^2$ が成り立つことを示す。 (1)の計算過程より、任意の自然数 $n$ に対して以下の等式が成り立つ。
$$a_{n+1} - 1 = \frac{(a_n - 1)^2}{2a_n}$$
これを用いると、示すべき不等式は次のように同値変形できる。
$$\frac{(a_n - 1)^2}{2a_n} \ge \frac{20}{41}(a_n - 1)^2$$
(1)より $a_n > 1$ であるから $(a_n - 1)^2 > 0$ であり、両辺を $(a_n - 1)^2$ で割ることができる。
$$\frac{1}{2a_n} \ge \frac{20}{41} \iff a_n \le \frac{41}{40}$$
(1)より数列 $\{a_n\}$ は単調減少数列($a_{n+1} < a_n$)であるから、$n \ge 3$ のとき、
$$a_n \le a_3$$
が成り立つ。$a_3 = \frac{41}{40}$ であるから、$n \ge 3$ において $a_n \le \frac{41}{40}$ は真である。 以上より、$n \ge 3$ のとき $a_{n+1} - 1 \ge \frac{20}{41}(a_n - 1)^2$ が成り立つ。
(3)
(2)で示した不等式 $a_{n+1} - 1 \ge \frac{20}{41}(a_n - 1)^2$ の両辺に $\frac{20}{41}$ を掛ける。
$$\frac{20}{41}(a_{n+1} - 1) \ge \frac{20}{41} \cdot \frac{20}{41}(a_n - 1)^2 = \left\{ \frac{20}{41}(a_n - 1) \right\}^2$$
ここで、$d_n = \frac{20}{41}(a_n - 1)$ とおくと、$a_n > 1$ より $d_n > 0$ であり、
$$d_{n+1} \ge d_n^2 \quad (n \ge 3)$$
が成り立つ。この関係から、$n \ge 3$ において $d_n \ge d_3^{2^{n-3}}$ が成り立つことを数学的帰納法で示す。
(i) $n=3$ のとき 左辺は $d_3$、右辺は $d_3^{2^0} = d_3$ となり、等号が成立して条件を満たす。
(ii) $n=k$($k \ge 3$)のとき $d_k \ge d_3^{2^{k-3}}$ が成り立つと仮定する。$n=k+1$ のとき、
$$d_{k+1} \ge d_k^2 \ge \left( d_3^{2^{k-3}} \right)^2 = d_3^{2^{k-2}}$$
となり、$n=k+1$ のときも成り立つ。(ここで $d_k > 0$、$d_3 > 0$ であることを用いた)
したがって、$n \ge 3$ のすべての自然数について $d_n \ge d_3^{2^{n-3}}$ が成り立つ。 ここで、$d_3$ の値を計算する。
$$d_3 = \frac{20}{41}(a_3 - 1) = \frac{20}{41}\left(\frac{41}{40} - 1\right) = \frac{20}{41} \cdot \frac{1}{40} = \frac{1}{82}$$
よって、不等式に代入して $a_n$ について解く。
$$\frac{20}{41}(a_n - 1) \ge \left(\frac{1}{82}\right)^{2^{n-3}}$$
$p_n = 2^{n-3}$ を用いて整理すると、
$$a_n - 1 \ge \frac{41}{20}\left(\frac{1}{82}\right)^{p_n}$$
右辺は $b_n$ の定義式そのものであるから、$a_n - 1 \ge b_n$ が示された。
解説
与えられた漸化式 $a_{n+1} = \frac{1}{2}\left(a_n + \frac{A}{a_n}\right)$ (本問では $A=1$)は、方程式 $x^2 = A$ の正の解である $x = \sqrt{A}$ を近似計算する手法「ニュートン法」から得られる有名な漸化式である。 本問は、この数列が極限値 $1$ にどれだけ速く近づくか(収束の速さ)を不等式を用いて評価する誘導問題となっている。 特に (3) において、(2) で得られた $x_{n+1} \ge K x_n^2$ の形をした不等式の両辺に $K$ を掛けて $K x_{n+1} \ge (K x_n)^2$ と変形し、指数が倍々に増えていく評価を行う手法は、極限や不等式評価の分野でしばしば用いられる典型的なテクニックである。
答え
(1) 本文参照(証明終) (2) $a_3 = \frac{41}{40}$、不等式の証明は本文参照(証明終) (3) 本文参照(証明終)
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