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九州大学 1998年 文系 第8問 解説

数学A/確率数学A/場合の数数学B/確率分布・統計的推測テーマ/最大・最小
九州大学 1998年 文系 第8問 解説

方針・初手

袋の中から2個の玉を同時に取り出すときの総数を分母とし、それぞれの条件を満たす玉の取り出し方を分子として確率を求める。 (1) において、$X \leqq k$ となるのは「取り出した2個の玉がどちらも $k$ 以下である」ことと同値である。同様に、$Y \geqq k$ となるのは「取り出した2個の玉がどちらも $k$ 以上である」ことと同値である。 (2) は直接 $P(X=k)$ などを求めるのではなく、(1) を利用して $P(X=k) = P(X \leqq k) - P(X \leqq k-1)$ のように累積確率の差を計算して求める。 (4) は、そのまま期待値の定義に従って数列の和を計算する方法と、確率変数の和の性質に着目する方法の2通りのアプローチが考えられる。

解法1

(1) $2n$ 個の玉から2個を取り出す総数は、

$${}_{2n}\mathrm{C}_2 = \frac{2n(2n-1)}{2} = n(2n-1) \text{ (通り)}$$

事象 $X \leqq k$ は、取り出した2個の玉に書かれた数字がともに $k$ 以下であることである。 1から $k$ までの数字が書かれた玉は $2k$ 個あるので、この中から2個を取り出す場合の数は、

$${}_{2k}\mathrm{C}_2 = \frac{2k(2k-1)}{2} = k(2k-1) \text{ (通り)}$$

よって、求める確率は

$$P(X \leqq k) = \frac{k(2k-1)}{n(2n-1)}$$

事象 $Y \geqq k$ は、取り出した2個の玉に書かれた数字がともに $k$ 以上であることである。 $k$ から $n$ までの数字が書かれた玉は $(n-k+1)$ 種類あり、それぞれ2個ずつで合計 $2(n-k+1)$ 個ある。この中から2個を取り出す場合の数は、

$${}_{2(n-k+1)}\mathrm{C}_2 = \frac{2(n-k+1)(2n-2k+1)}{2} = (n-k+1)(2n-2k+1) \text{ (通り)}$$

よって、求める確率は

$$P(Y \geqq k) = \frac{(n-k+1)(2n-2k+1)}{n(2n-1)}$$

(2) $P(X=k)$ は、(1)の結果を利用して次のように求められる。 $k \geqq 2$ のとき、

$$\begin{aligned} P(X=k) &= P(X \leqq k) - P(X \leqq k-1) \\ &= \frac{k(2k-1)}{n(2n-1)} - \frac{(k-1)\{2(k-1)-1\}}{n(2n-1)} \\ &= \frac{2k^2-k - (2k^2-5k+3)}{n(2n-1)} \\ &= \frac{4k-3}{n(2n-1)} \end{aligned}$$

ここで $P(X \leqq 0) = 0$ と考えれば、$k=1$ のとき

$$P(X=1) = P(X \leqq 1) = \frac{1(2-1)}{n(2n-1)} = \frac{1}{n(2n-1)}$$

となり、上の式は $k=1$ のときも成り立つ。したがって、

$$P(X=k) = \frac{4k-3}{n(2n-1)}$$

同様に、$P(Y=k)$ を求める。 $1 \leqq k \leqq n-1$ のとき、

$$\begin{aligned} P(Y=k) &= P(Y \geqq k) - P(Y \geqq k+1) \\ &= \frac{(n-k+1)(2n-2k+1)}{n(2n-1)} - \frac{(n-k)\{2n-2(k+1)+1\}}{n(2n-1)} \\ &= \frac{2(n-k)^2 + 3(n-k) + 1 - \{ 2(n-k)^2 - (n-k) \}}{n(2n-1)} \\ &= \frac{4(n-k)+1}{n(2n-1)} \\ &= \frac{4n-4k+1}{n(2n-1)} \end{aligned}$$

$P(Y \geqq n+1) = 0$ と考えれば、$k=n$ のとき

$$P(Y=n) = P(Y \geqq n) = \frac{1(2-1)}{n(2n-1)} = \frac{1}{n(2n-1)}$$

となり、上の式は $k=n$ のときも成り立つ。したがって、

$$P(Y=k) = \frac{4n-4k+1}{n(2n-1)}$$

(3) $n=4$ のとき、分母は $4(2 \cdot 4 - 1) = 28$ である。 (2)で求めた確率より、

$$P(X=k) = \frac{4k-3}{28}, \quad P(Y=k) = \frac{17-4k}{28}$$

それぞれの期待値を計算する。

$$\begin{aligned} E(X) &= \sum_{k=1}^{4} k P(X=k) \\ &= \sum_{k=1}^{4} \frac{k(4k-3)}{28} \\ &= \frac{1 \cdot 1 + 2 \cdot 5 + 3 \cdot 9 + 4 \cdot 13}{28} \\ &= \frac{1 + 10 + 27 + 52}{28} \\ &= \frac{90}{28} = \frac{45}{14} \end{aligned}$$

$$\begin{aligned} E(Y) &= \sum_{k=1}^{4} k P(Y=k) \\ &= \sum_{k=1}^{4} \frac{k(17-4k)}{28} \\ &= \frac{1 \cdot 13 + 2 \cdot 9 + 3 \cdot 5 + 4 \cdot 1}{28} \\ &= \frac{13 + 18 + 15 + 4}{28} \\ &= \frac{50}{28} = \frac{25}{14} \end{aligned}$$

期待値の線形性より、

$$E(X-Y) = E(X) - E(Y) = \frac{45}{14} - \frac{25}{14} = \frac{20}{14} = \frac{10}{7}$$

(4) (2)で求めた結果と期待値の定義を用いて $E(X)$ と $E(Y)$ をそれぞれ計算する。

$$\begin{aligned} E(X) &= \sum_{k=1}^{n} k P(X=k) \\ &= \sum_{k=1}^{n} \frac{4k^2-3k}{n(2n-1)} \\ &= \frac{1}{n(2n-1)} \left\{ 4 \cdot \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) - 3 \cdot \frac{1}{2}n(n+1) \right\} \\ &= \frac{n(n+1)}{n(2n-1)} \left( \frac{4n+2}{3} - \frac{3}{2} \right) \\ &= \frac{n+1}{2n-1} \cdot \frac{8n-5}{6} \end{aligned}$$

$$\begin{aligned} E(Y) &= \sum_{k=1}^{n} k P(Y=k) \\ &= \sum_{k=1}^{n} \frac{k(4n+1) - 4k^2}{n(2n-1)} \\ &= \frac{1}{n(2n-1)} \left\{ (4n+1) \cdot \frac{1}{2}n(n+1) - 4 \cdot \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) \right\} \\ &= \frac{n(n+1)}{n(2n-1)} \left( \frac{4n+1}{2} - \frac{4n+2}{3} \right) \\ &= \frac{n+1}{2n-1} \cdot \frac{4n-1}{6} \end{aligned}$$

期待値の線形性を用いて和をとる。

$$\begin{aligned} E(X+Y) &= E(X) + E(Y) \\ &= \frac{n+1}{2n-1} \left( \frac{8n-5}{6} + \frac{4n-1}{6} \right) \\ &= \frac{n+1}{2n-1} \cdot \frac{12n-6}{6} \\ &= \frac{n+1}{2n-1} (2n-1) \\ &= n+1 \end{aligned}$$

解法2

(4)の別解を示す。期待値の線形性を活用して計算量を大幅に減らすことができる。 袋から2個の玉を取り出したとき、それぞれの玉に書かれた数字を $A, B$ とする。 取り出した玉のうち、大きい方が $X$、小さい方が $Y$(同じときは等しい)であるため、常に $X+Y = A+B$ が成り立つ。 よって、期待値の線形性より

$$E(X+Y) = E(A+B) = E(A) + E(B)$$

となる。 ここで、袋の中から玉を1個取り出すとき、どの玉も等しい確率で取り出される。したがって、取り出された玉の数字の期待値 $E(A)$ (および $E(B)$)は、袋の中のすべての玉の数字の平均に等しい。 袋の中には1から $n$ までの数字が書かれた玉が2個ずつ入っているから、その総和は

$$2 \sum_{k=1}^{n} k = 2 \cdot \frac{1}{2}n(n+1) = n(n+1)$$

玉の総数は $2n$ 個であるから、

$$E(A) = E(B) = \frac{n(n+1)}{2n} = \frac{n+1}{2}$$

したがって、求める期待値は

$$E(X+Y) = E(A) + E(B) = \frac{n+1}{2} + \frac{n+1}{2} = n+1$$

解説

この問題は、最大値・最小値の確率分布と期待値をテーマとした典型的な総合問題である。 (1)・(2)において、「最大値が $k$ である確率」を直接求める代わりに、「最大値が $k$ 以下である確率」を求めて差をとる手法は確率分野の定石である。 (4)では、解法1のように定義通りシグマ計算をやり抜く力も重要だが、解法2のように「確率変数の和の期待値は、期待値の和になる」という期待値の線形性 $E(X+Y) = E(A)+E(B)$ に気づけると非常に計算が楽になり、ミスも防ぎやすくなる。期待値の問題では、常に対称性や線形性を利用できないか検討する習慣をつけるとよい。

答え

(1) $P(X \leqq k) = \frac{k(2k-1)}{n(2n-1)}$ $P(Y \geqq k) = \frac{(n-k+1)(2n-2k+1)}{n(2n-1)}$

(2) $P(X=k) = \frac{4k-3}{n(2n-1)}$ $P(Y=k) = \frac{4n-4k+1}{n(2n-1)}$

(3) $E(X-Y) = \frac{10}{7}$

(4) $E(X+Y) = n+1$

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