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九州大学 2001年 文系 第7問 解説

数学A/確率数学A/場合の数数学B/確率分布・統計的推測テーマ/最大・最小
九州大学 2001年 文系 第7問 解説

方針・初手

確率変数 $X_k$ は「$n$ 回振ったサイコロの目のうち、$k$ 番目に小さいもの」を表す順序統計量である。 (1) は具体例なので、残りの2回の目がどのような値をとるかで丁寧に場合分けを行う。 (2) 以降は一般の $n$ について考える。最小値 $X_1$ および最大値 $X_n$ の確率は、それぞれ「すべての目が $k$ 以上」「すべての目が $k$ 以下」という事象の確率を利用して求めるのが定石である。 (3) は期待値の定義に従い、和の計算を工夫してまとめる。 (4) は最大値 $X_n$ の期待値を求めて $E(X_1)$ と足し合わせるか、あるいは「目 $x$ が出たとき $7-x$ が出た」とみなす対称性を利用することで計算を大幅に省略できる。

解法1

(1) $n=7$ のとき、サイコロの出た目をそれぞれ $Y_1, \dots, Y_7$ とする。 これらのうち、3が3回、5が2回出ている。残りの2回に出た目を $a, b$ ($1 \le a \le b \le 6$) とする。 全部で7つの目を小さい方から順に並べたものが $X_1, X_2, \dots, X_7$ である。

(ア) $b \le 2$ のとき $a \le b \le 2$ であり、7つの目は $a, b, 3, 3, 3, 5, 5$ となる。 これらはすでに小さい順に並んでいるため、$X_4 = 3$ である。

(イ) $a \le 2$ かつ $b \ge 3$ のとき 7つの目は $a, 3, 3, 3, b, 5, 5$ の並び替えとなる。 小さい順に並べると、1番目は $a$、2番目から4番目はすべて $3$ となるため、$X_4 = 3$ である。

(ウ) $a \ge 3$ のとき $3 \le a \le b \le 6$ であり、3未満の目は存在しない。 小さい順に並べたときの最初の3つは $3, 3, 3$ となり、$X_1 = X_2 = X_3 = 3$ である。 4番目の数 $X_4$ は、残りの目 $a, b, 5, 5$ の中で最小の値となる。 $a \le b$ より、$X_4 = \min(a, b, 5, 5) = \min(a, 5)$ である。 $a$ は $3 \le a \le 6$ を満たすので、 $a=3$ のとき、$X_4 = \min(3, 5) = 3$ $a=4$ のとき、$X_4 = \min(4, 5) = 4$ $a \ge 5$ のとき、$\min(a, 5) = 5$ なので $X_4 = 5$ となる。

以上より、$X_4$ のとりうる値は $3, 4, 5$ である。

(2) $X_1$ は $n$ 回振ったサイコロの目の最小値である。 事象 $X_1 \ge k$ は、$n$ 回すべてにおいて $k$ 以上の目が出る事象である。 1回の試行で $k$ 以上の目が出る確率は $\frac{7-k}{6}$ であるから、

$$P(X_1 \ge k) = \left( \frac{7-k}{6} \right)^n$$

となる。 $X_1 = 2$ となるのは、$X_1 \ge 2$ であり、かつ $X_1 \ge 3$ でない場合である。よって、

$$\begin{aligned} P(X_1 = 2) &= P(X_1 \ge 2) - P(X_1 \ge 3) \\ &= \left( \frac{5}{6} \right)^n - \left( \frac{4}{6} \right)^n \\ &= \left( \frac{5}{6} \right)^n - \left( \frac{2}{3} \right)^n \end{aligned}$$

である。

(3) 期待値の定義より、

$$E(X_1) = \sum_{k=1}^6 k P(X_1 = k)$$

である。 (2) と同様の論理から、$P(X_1 = k) = P(X_1 \ge k) - P(X_1 \ge k+1)$ ($1 \le k \le 6$) が成り立つ(ただし $P(X_1 \ge 7) = 0$ とする)。これを代入して整理すると、

$$\begin{aligned} E(X_1) &= \sum_{k=1}^6 k (P(X_1 \ge k) - P(X_1 \ge k+1)) \\ &= 1(P(X_1 \ge 1) - P(X_1 \ge 2)) + 2(P(X_1 \ge 2) - P(X_1 \ge 3)) + \cdots + 6(P(X_1 \ge 6) - P(X_1 \ge 7)) \\ &= P(X_1 \ge 1) + P(X_1 \ge 2) + P(X_1 \ge 3) + P(X_1 \ge 4) + P(X_1 \ge 5) + P(X_1 \ge 6) - 6P(X_1 \ge 7) \\ &= \sum_{k=1}^6 P(X_1 \ge k) \end{aligned}$$

となる。ここで $P(X_1 \ge k) = \left(\frac{7-k}{6}\right)^n$ を代入すると、

$$E(X_1) = 1 + \left(\frac{5}{6}\right)^n + \left(\frac{4}{6}\right)^n + \left(\frac{3}{6}\right)^n + \left(\frac{2}{6}\right)^n + \left(\frac{1}{6}\right)^n$$

となる。

(4) $n$ 回のサイコロの出た目をそれぞれ $Y_1, Y_2, \dots, Y_n$ とし、それらから定まる確率変数を $Z_i = 7 - Y_i$ ($i = 1, 2, \dots, n$) とする。 $Y_i$ が $1$ から $6$ の値をそれぞれ確率 $\frac{1}{6}$ でとるため、$Z_i$ もまた $1$ から $6$ の値をそれぞれ確率 $\frac{1}{6}$ でとる。 したがって、$Y_1, \dots, Y_n$ の確率分布と $Z_1, \dots, Z_n$ の確率分布は同一である。 $X_n$ は $n$ 回の目の最大値であるから $X_n = \max(Y_1, Y_2, \dots, Y_n)$ と書け、

$$\begin{aligned} \max(Z_1, Z_2, \dots, Z_n) &= \max(7-Y_1, 7-Y_2, \dots, 7-Y_n) \\ &= 7 - \min(Y_1, Y_2, \dots, Y_n) \\ &= 7 - X_1 \end{aligned}$$

が成り立つ。 $Z_i$ と $Y_i$ の分布が同一であるため、$\max(Z_1, \dots, Z_n)$ の期待値は $\max(Y_1, \dots, Y_n)$ の期待値、すなわち $E(X_n)$ に等しい。 よって、

$$E(X_n) = E(7 - X_1) = 7 - E(X_1)$$

となる。期待値の線形性より、

$$E(X_1 + X_n) = E(X_1) + E(X_n) = E(X_1) + 7 - E(X_1) = 7$$

である。

解法2

(1)(3) の解答は解法1と同じであるため、ここでは (4) の別解(直接計算による方法)を示す。

(4) $X_n$ は $n$ 回のサイコロの目の最大値である。 事象 $X_n \le k$ は、$n$ 回すべてにおいて $k$ 以下の目が出る事象であるから、

$$P(X_n \le k) = \left( \frac{k}{6} \right)^n$$

である。期待値の定義より $E(X_n) = \sum_{k=1}^6 k P(X_n = k)$ であり、$P(X_n = k) = P(X_n \le k) - P(X_n \le k-1)$ (ただし $P(X_n \le 0) = 0$)を代入すると、

$$\begin{aligned} E(X_n) &= \sum_{k=1}^6 k (P(X_n \le k) - P(X_n \le k-1)) \\ &= 6P(X_n \le 6) - (P(X_n \le 1) + P(X_n \le 2) + P(X_n \le 3) + P(X_n \le 4) + P(X_n \le 5)) \\ &= 6 - \sum_{k=1}^5 \left( \frac{k}{6} \right)^n \end{aligned}$$

となる。 一方、(3) で求めた $E(X_1)$ の式において和の順序を逆にすると、

$$E(X_1) = \sum_{k=1}^6 \left( \frac{7-k}{6} \right)^n = \sum_{j=1}^6 \left( \frac{j}{6} \right)^n = 1 + \sum_{k=1}^5 \left( \frac{k}{6} \right)^n$$

となる。 したがって、これらを足し合わせると、

$$\begin{aligned} E(X_1 + X_n) &= E(X_1) + E(X_n) \\ &= \left( 1 + \sum_{k=1}^5 \left( \frac{k}{6} \right)^n \right) + \left( 6 - \sum_{k=1}^5 \left( \frac{k}{6} \right)^n \right) \\ &= 7 \end{aligned}$$

である。

解説

最小値と最大値の確率分布に関する典型的な問題である。「ある値以上(あるいは以下)になる確率」を考え、その差分から「ちょうどある値になる確率」を求めるアプローチは、順序統計量における基本手技である。 期待値の計算では $\sum k(P(\ge k) - P(\ge k+1))$ を部分和をとるように崩すテクニックを用いることで、計算量を劇的に減らすことができる。 また、(4) のような対称性($1$ から $6$ までの目と、$7$ から引いた逆順の目)に気付くと、複雑な式変形を回避して直感的に解答を導くことができる。

答え

(1) $3, 4, 5$

(2) $\left(\frac{5}{6}\right)^n - \left(\frac{2}{3}\right)^n$

(3) $1 + \left(\frac{5}{6}\right)^n + \left(\frac{2}{3}\right)^n + \left(\frac{1}{2}\right)^n + \left(\frac{1}{3}\right)^n + \left(\frac{1}{6}\right)^n$

(4) $7$

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