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九州大学 1990年 理系 第2問 解説

数学B/数列数学3/微分法数学3/極限テーマ/不等式の証明テーマ/漸化式
九州大学 1990年 理系 第2問 解説

方針・初手

与えられた漸化式から、数列の各項を順に求めていく。その過程で得られる性質(各項が正であることや単調に減少すること)を見抜き、不等式の評価へとつなげる。極限や不等式の証明において、階差数列の和をとる手法(telescoping sum)は定石である。

解法1

(1)

与えられた漸化式

$$a_{n+1} = a_n \times \left(1 - \frac{1}{10^n}\right)$$

に $n=1$ を代入すると、

$$a_2 = a_1 \times \left(1 - \frac{1}{10}\right) = 1 \times (1 - 0.1) = 0.9$$

次に、$n=2$ を代入すると、

$$a_3 = a_2 \times \left(1 - \frac{1}{10^2}\right) = 0.9 \times (1 - 0.01) = 0.9 \times 0.99 = 0.891$$

(2)

まず、$a_1 = 1 > 0$ であり、任意の自然数 $n$ に対して $1 - \frac{1}{10^n} > 0$ であるから、帰納的にすべての $n$ について $a_n > 0$ である。

このとき、$n \geqq 1$ において

$$a_{n+1} - a_n = a_n \left(1 - \frac{1}{10^n}\right) - a_n = -\frac{a_n}{10^n} < 0$$

が成り立つため、数列 $\{a_n\}$ は単調に減少する。

したがって、$n \geqq 2$ のとき

$$a_n \leqq a_2$$

が成り立つ。(1) より $a_2 = 0.9$ であるから、

$$a_n \leqq 0.9$$

が示された。

また、漸化式より $a_{n+1} = a_n - \frac{a_n}{10^n}$ であるから、これを移項して

$$a_n - a_{n+1} = \frac{a_n}{10^n}$$

を得る。ここで $n \geqq 2$ のとき、前半で示した $a_n \leqq 0.9$ を右辺に用いると、

$$a_n - a_{n+1} \leqq \frac{0.9}{10^n} = \frac{9}{10^{n+1}}$$

が成り立つ。

(3)

$n \geqq 3$ のとき、(2) で示した不等式

$$a_k - a_{k+1} \leqq \frac{9}{10^{k+1}}$$

について、$k=2, 3, \cdots, n-1$ として辺々を足し合わせると、

$$\sum_{k=2}^{n-1} (a_k - a_{k+1}) \leqq \sum_{k=2}^{n-1} \frac{9}{10^{k+1}}$$

となる。

左辺は、項が打ち消し合って

$$\sum_{k=2}^{n-1} (a_k - a_{k+1}) = (a_2 - a_3) + (a_3 - a_4) + \cdots + (a_{n-1} - a_n) = a_2 - a_n$$

となる。

右辺は、初項 $\frac{9}{10^3}$、公比 $\frac{1}{10}$、項数 $n-2$ の等比数列の和であるから、

$$\sum_{k=2}^{n-1} \frac{9}{10^{k+1}} = \frac{\frac{9}{10^3} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{10}\right)^{n-2} \right\}}{1 - \frac{1}{10}} = \frac{\frac{9}{1000} \left( 1 - \frac{1}{10^{n-2}} \right)}{\frac{9}{10}} = \frac{1}{100} \left( 1 - \frac{1}{10^{n-2}} \right)$$

となる。さらに、$1 - \frac{1}{10^{n-2}} < 1$ であるから、

$$\sum_{k=2}^{n-1} \frac{9}{10^{k+1}} < \frac{1}{100} = 0.01$$

と評価できる。

これらをまとめると、

$$a_2 - a_n < 0.01$$

$$a_n > a_2 - 0.01$$

$a_2 = 0.9$ より、

$$a_n > 0.9 - 0.01 = 0.89$$

となり、$n \geqq 3$ のとき $a_n > 0.89$ が成り立つ。

また、$n=1$ のときは $a_1 = 1 > 0.89$ であり、$n=2$ のときは $a_2 = 0.9 > 0.89$ であるため、$n=1, 2$ のときも不等式は成立する。

以上より、すべての自然数 $n$ に対して $a_n > 0.89$ が成り立つ。

解説

(2)の前半における $a_n \leqq 0.9$ の証明では、数列が単調減少であることを示すのが最も簡明である。単調性を示すためには、各項が正であることの確認($a_n > 0$)を忘れないようにしたい。 (3)は(2)で証明した階差の不等式を利用して、元の数列を下から評価する典型的な問題である。等比数列の和の公式を用いた後、上から定数で抑えることで目標の定数 $0.89$ を導出する。また、$n \geqq 3$ の条件でシグマ計算を行った場合、最後に $n=1, 2$ の場合の確認を行う論理の丁寧さが求められる。

答え

(1) $a_2 = 0.9$, $a_3 = 0.891$

(2) 数列が単調減少することと、漸化式の変形により題意の不等式が成り立つことを示した。

(3) (2)の不等式の両辺の和をとり計算することで、すべての自然数 $n$ について $a_n > 0.89$ が成り立つことを示した。

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