九州大学 1990年 理系 第1問 解説

方針・初手
与えられた1次変換を表す行列を $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ とおく。
点 $(x, y)$ が1次変換によって移る先の点を $(x', y')$ とすると、
$$\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$$
より、$x' = ax + by$、$y' = cx + dy$ である。
点 $P(a, c)$、$Q(b, d)$ が単位円 $C: x^2 + y^2 = 1$ 上にある条件や、ベクトル $\overrightarrow{OP}$、$\overrightarrow{OQ}$ の内積についての条件を数式で表し、移った先の点 $(x', y')$ が $x'^2 + y'^2 = 1$ を満たすかどうかを調べる。
解法1
(1)
$P(a, c)$ が $C$ 上にあるので、
$$a^2 + c^2 = 1 \quad \cdots \text{①}$$
が成り立つ。
同様に、$Q(b, d)$ が $C$ 上にあるので、
$$b^2 + d^2 = 1 \quad \cdots \text{②}$$
が成り立つ。
また、ベクトル $\overrightarrow{OP} = (a, c)$ と $\overrightarrow{OQ} = (b, d)$ が直交するので、内積は $0$ である。すなわち、
$$\overrightarrow{OP} \cdot \overrightarrow{OQ} = ab + cd = 0 \quad \cdots \text{③}$$
が成り立つ。
$C$ 上の任意の点を $R(x, y)$ とすると、
$$x^2 + y^2 = 1 \quad \cdots \text{④}$$
である。この点 $R$ が1次変換により移る点を $R'(x', y')$ とすると、
$$\begin{cases} x' = ax + by \\ y' = cx + dy \end{cases}$$
であるから、
$$\begin{aligned} x'^2 + y'^2 &= (ax + by)^2 + (cx + dy)^2 \\ &= (a^2 + c^2)x^2 + 2(ab + cd)xy + (b^2 + d^2)y^2 \end{aligned}$$
となる。
ここに①、②、③を代入すると、
$$x'^2 + y'^2 = 1 \cdot x^2 + 2 \cdot 0 \cdot xy + 1 \cdot y^2 = x^2 + y^2$$
となる。さらに④を用いると、
$$x'^2 + y'^2 = 1$$
となるため、点 $R'(x', y')$ も $C$ 上にある。
以上より、この1次変換は $C$ 上の任意の点を $C$ 上に移すことが示された。
(2)
この1次変換が $C$ 上の任意の点を $C$ 上に移すとする。
$C$ 上の任意の点 $(x, y)$ は $x^2 + y^2 = 1$ を満たし、移った先の点 $(x', y')$ も $x'^2 + y'^2 = 1$ を満たす。
すなわち、条件 $x^2 + y^2 = 1$ を満たす任意の $(x, y)$ に対して、
$$(a^2 + c^2)x^2 + 2(ab + cd)xy + (b^2 + d^2)y^2 = 1 \quad \cdots \text{⑤}$$
が成り立つ。
点 $(1, 0)$ は $C$ 上の点であるから、⑤に $x = 1, y = 0$ を代入すると、
$$a^2 + c^2 = 1$$
となる。これは点 $P(a, c)$ が $C$ 上にあることを示している。
同様に、点 $(0, 1)$ も $C$ 上の点であるから、⑤に $x = 0, y = 1$ を代入すると、
$$b^2 + d^2 = 1$$
となる。これは点 $Q(b, d)$ が $C$ 上にあることを示している。
これらを⑤に代入すると、
$$x^2 + 2(ab + cd)xy + y^2 = 1$$
となる。ここで $x^2 + y^2 = 1$ であるから、
$$1 + 2(ab + cd)xy = 1$$
$$2(ab + cd)xy = 0$$
これが $x^2 + y^2 = 1$ を満たす任意の $(x, y)$ について成り立つ。
例えば、点 $\left( \frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}} \right)$ も $C$ 上の点であるから、代入して、
$$2(ab + cd) \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} = 0$$
$$ab + cd = 0$$
となる。
$a^2 + c^2 = 1$ および $b^2 + d^2 = 1$ より $P, Q$ は原点ではなく、$\overrightarrow{OP} = (a, c)$、$\overrightarrow{OQ} = (b, d)$ であるから、
$$\overrightarrow{OP} \cdot \overrightarrow{OQ} = ab + cd = 0$$
は、$\overrightarrow{OP}$ と $\overrightarrow{OQ}$ が直交していることを示している。
以上より、$P, Q$ はともに $C$ 上の点であり、かつベクトル $\overrightarrow{OP}$ と $\overrightarrow{OQ}$ は直交していることが示された。
解説
行列 $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ による1次変換が、単位円上の点を単位円上に移すための必要十分条件を問う問題である。
(1)では与えられた幾何学的な条件(点が単位円上にある、ベクトルが直交する)を成分 $a, b, c, d$ の関係式に翻訳し、移った先の点の座標を用いた $(x')^2 + (y')^2$ の計算結果に適用するという素直な代数計算で示せる。
(2)の恒等式の処理においては、「任意の $x^2+y^2=1$ を満たす $(x, y)$ について式が成り立つ」ことから、都合の良い点(例えば $(1, 0)$、$(0, 1)$、$\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ など)を代入して必要条件を導くのが定石である。代入する点を適切に選べば、係数の条件が鮮やかに取り出せる。直交行列の性質を背景とした典型的なテーマである。
答え
(1) 題意の通り示された。(証明は解法1を参照)
(2) 題意の通り示された。(証明は解法1を参照)
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