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九州大学 1992年 理系 第5問 解説

数学A/確率数学A/場合の数テーマ/最大・最小
九州大学 1992年 理系 第5問 解説

方針・初手

1回の試行において、どの事象がどのような確率で起こり、点 $P$ がどのベクトル分だけ移動するかを正確に把握する。 袋に入っている玉の総数は $a+b$ 個であり、ここから同時に2個取り出す組合せの総数が確率の分母となる。 2回の試行による移動は、1回の移動ベクトルの和として表せるので、移動先の座標ごとに事象の組合せ(およびその順列)を考えて確率を足し合わせる。 (3) は (2) で求めた確率の式に $a=b$ を代入し、分母が共通であることを利用して分子の大小関係を比較する。

解法1

1回の試行において、袋の中にある $a+b$ 個の玉から2個の玉を取り出す場合の数は ${}_{a+b}\mathrm{C}_2$ 通りであり、これらは同様に確からしい。

1回の試行による点 $P$ の移動量(ベクトル)と、その事象が起こる確率をそれぞれ求める。 事象 $X$:2個とも $x$ であるとき、移動量は $(2,0)$ であり、その確率 $p_X$ は

$$p_X = \frac{{}_a\mathrm{C}_2}{{}_{a+b}\mathrm{C}_2} = \frac{a(a-1)}{(a+b)(a+b-1)}$$

事象 $XY$:$x$ と $y$ が1個ずつであるとき、移動量は $(1,1)$ であり、その確率 $p_{XY}$ は

$$p_{XY} = \frac{{}_a\mathrm{C}_1 \cdot {}_b\mathrm{C}_1}{{}_{a+b}\mathrm{C}_2} = \frac{2ab}{(a+b)(a+b-1)}$$

事象 $Y$:2個とも $y$ であるとき、移動量は $(0,2)$ であり、その確率 $p_Y$ は

$$p_Y = \frac{{}_b\mathrm{C}_2}{{}_{a+b}\mathrm{C}_2} = \frac{b(b-1)}{(a+b)(a+b-1)}$$

(1)

点 $P$ は原点 $(0,0)$ から出発し、1回の試行で上記のいずれかの移動をするため、存在し得る点の座標は $(2,0), (1,1), (0,2)$ である。

それぞれの点に存在する確率は、事象 $X, XY, Y$ の確率と対応するため、以下のようになる。 点 $(2,0)$ に存在する確率は $p_X$ 点 $(1,1)$ に存在する確率は $p_{XY}$ 点 $(0,2)$ に存在する確率は $p_Y$

(2)

2回後の点 $P$ の座標は、1回目と2回目の移動ベクトルの和となる。 1回目と2回目の移動事象の組合せによって、点 $P$ が存在し得る点とその確率は以下のように分類できる。

(i) $X$ が2回起こる場合 座標は $(2,0) + (2,0) = (4,0)$ となる。 確率は

$$(p_X)^2 = \left\{ \frac{a(a-1)}{(a+b)(a+b-1)} \right\}^2 = \frac{a^2(a-1)^2}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$$

(ii) $X$ と $XY$ が1回ずつ起こる場合 座標は $(2,0) + (1,1) = (3,1)$ となる。 順番の入れ替えを考慮し、確率は

$$2 \cdot p_X \cdot p_{XY} = 2 \cdot \frac{a(a-1)}{(a+b)(a+b-1)} \cdot \frac{2ab}{(a+b)(a+b-1)} = \frac{4a^2 b(a-1)}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$$

(iii) $X$ と $Y$ が1回ずつ、または $XY$ が2回起こる場合 座標は $(2,0) + (0,2) = (2,2)$ または $(1,1) + (1,1) = (2,2)$ となる。 これらは互いに排反であるから、確率は

$$\begin{aligned} 2 \cdot p_X \cdot p_Y + (p_{XY})^2 &= 2 \cdot \frac{a(a-1)}{(a+b)(a+b-1)} \cdot \frac{b(b-1)}{(a+b)(a+b-1)} + \left\{ \frac{2ab}{(a+b)(a+b-1)} \right\}^2 \\ &= \frac{2a(a-1)b(b-1) + 4a^2 b^2}{(a+b)^2(a+b-1)^2} \\ &= \frac{2ab \{ (a-1)(b-1) + 2ab \}}{(a+b)^2(a+b-1)^2} \\ &= \frac{2ab(3ab-a-b+1)}{(a+b)^2(a+b-1)^2} \end{aligned}$$

(iv) $XY$ と $Y$ が1回ずつ起こる場合 座標は $(1,1) + (0,2) = (1,3)$ となる。 順番の入れ替えを考慮し、確率は

$$2 \cdot p_{XY} \cdot p_Y = 2 \cdot \frac{2ab}{(a+b)(a+b-1)} \cdot \frac{b(b-1)}{(a+b)(a+b-1)} = \frac{4ab^2(b-1)}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$$

(v) $Y$ が2回起こる場合 座標は $(0,2) + (0,2) = (0,4)$ となる。 確率は

$$(p_Y)^2 = \left\{ \frac{b(b-1)}{(a+b)(a+b-1)} \right\}^2 = \frac{b^2(b-1)^2}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$$

(3)

(2) で求めた確率の式に $a=b$ を代入する。 分母はすべて共通して $(a+a)^2(a+a-1)^2 = 4a^2(2a-1)^2$ となる。 したがって、各点の確率の分子のみを比較すればよい。

ここで $a \geqq 2$ であるから $a^2 > 0$ であり、各分子を $a^2$ で割った値を比較する。

まず、点 $(3,1)$ と点 $(4,0)$ の差をとると

$$(4a^2 - 4a) - (a^2 - 2a + 1) = 3a^2 - 2a - 1 = (3a+1)(a-1)$$

$a \geqq 2$ より $a-1 > 0$ かつ $3a+1 > 0$ であるから、この差は正である。 よって、点 $(3,1)$ に存在する確率は点 $(4,0)$ に存在する確率よりも大きい。対称性より、点 $(1,3)$ は点 $(0,4)$ よりも大きい。

次に、点 $(2,2)$ と点 $(3,1)$ の差をとると

$$(6a^2 - 4a + 2) - (4a^2 - 4a) = 2a^2 + 2$$

これは明らかに正である。 よって、点 $(2,2)$ に存在する確率は点 $(3,1)$ に存在する確率よりも大きい。

以上より、確率が一番大きな点は $(2,2)$ である。

解説

反復試行の確率と、事象によって異なる変位が与えられる移動の問題である。 (1) および (2) では、起こり得る事象をもれなく分類し、重複や欠落がないように確率を足し合わせることが求められる。特に (2) における点 $(2,2)$ への到達経路は、1回目と2回目の組合せが複数存在するため、排反な事象の確率を和の法則を用いて正確に計算する必要がある。 (3) は具体的な文字の大小比較となる。差をとって因数分解を行い、$a \geqq 2$ という条件から符号を判定する定石の処理である。

答え

(1) 点 $(2,0)$:確率 $\frac{a(a-1)}{(a+b)(a+b-1)}$ 点 $(1,1)$:確率 $\frac{2ab}{(a+b)(a+b-1)}$ 点 $(0,2)$:確率 $\frac{b(b-1)}{(a+b)(a+b-1)}$

(2) 点 $(4,0)$:確率 $\frac{a^2(a-1)^2}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$ 点 $(3,1)$:確率 $\frac{4a^2 b(a-1)}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$ 点 $(2,2)$:確率 $\frac{2ab(3ab-a-b+1)}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$ 点 $(1,3)$:確率 $\frac{4ab^2(b-1)}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$ 点 $(0,4)$:確率 $\frac{b^2(b-1)^2}{(a+b)^2(a+b-1)^2}$

(3) $(2,2)$

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