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九州大学 1999年 理系 第7問 解説

数学A/確率数学B/確率分布・統計的推測数学A/場合の数
九州大学 1999年 理系 第7問 解説

方針・初手

$B$のカードの並びを固定し、$A$のカードの並べ方 $n!$ 通りを全事象の数として考える。 (1)では、5枚中2枚が一致し、残り3枚が「すべて一致しない(完全順列)」となる場合の数を求める。 (2)では、事象の分割と条件付き確率を考える。「全体で $k$ 枚一致している」という条件のもとで、「その中に『1』が含まれる」確率を求め、全確率の定理から式を立てる。 (3)では、(2)で得られた式と期待値の定義式 $E(X) = \sum_{k=1}^n k P(X=k)$ を結びつけて計算するか、あるいは期待値の線形性を利用する。

解法1

(1) $A$のカードの並べ方の総数は $5! = 120$ 通りであり、これらは同様に確からしい。

$X=2$ となるのは、5枚のカードのうちちょうど2枚の数字が一致し、残りの3枚はすべて一致しない場合である。 数字が一致する2枚の選び方は $\binom{5}{2} = 10$ 通りである。

残りの3枚(例えばカードの数字が $a, b, c$ とする)について、それぞれ自身の数字と異なる位置に並ぶ(完全順列となる)並べ方は、樹形図などをかいて数えると $2$ 通りである。

よって、$X=2$ となる並べ方の数は $10 \times 2 = 20$ 通りとなる。 したがって、求める確率は

$$P(X=2) = \frac{20}{120} = \frac{1}{6}$$

(2) 「$B$のカードのうち数字が1のものが一致する」という事象を $E_1$ とする。

事象 $X=k$ ($1 \leqq k \leqq n$)が起こったとき、すなわち $n$ 枚中ちょうど $k$ 枚が一致しているとき、どの $k$ 枚が一致しているかは $\binom{n}{k}$ 通りあり、これらは同様に確からしい。 このうち、一致している $k$ 枚の中に「1」が含まれるのは、残りの $n-1$ 枚から $k-1$ 枚を選ぶ組み合わせなので $\binom{n-1}{k-1}$ 通りである。

よって、$X=k$ であるという条件のもとで、事象 $E_1$ が起こる条件付き確率は

$$P(E_1 | X=k) = \frac{\binom{n-1}{k-1}}{\binom{n}{k}} = \frac{\frac{(n-1)!}{(k-1)!(n-k)!}}{\frac{n!}{k!(n-k)!}} = \frac{k}{n}$$

乗法定理より、事象 $E_1$ と $X=k$ が同時に起こる確率は

$$P(E_1 \cap \{X=k\}) = P(X=k) P(E_1 | X=k) = \frac{k}{n} P(X=k)$$

$X=0$ のときは「1」も一致しないため、$P(E_1 \cap \{X=0\}) = 0$ である。 全事象は互いに排反な事象 $X=k$ ($k=0, 1, \dots, n$)に分割できるから、全確率の定理より事象 $E_1$ が起こる確率 $p$ は

$$p = \sum_{k=0}^n P(E_1 \cap \{X=k\}) = \sum_{k=1}^n \frac{k}{n} P(X=k)$$

と表せる。問題文の $p = \sum_{k=1}^n a_k P(X=k)$ と比較して、求める $a_k$ は

$$a_k = \frac{k}{n}$$

(3) (2)の結果より、

$$p = \sum_{k=1}^n \frac{k}{n} P(X=k)$$

この式の両辺に $n$ を掛けると、

$$np = \sum_{k=1}^n k P(X=k)$$

右辺は確率変数 $X$ の期待値 $E(X)$ の定義式そのものであるから、

$$E(X) = np$$

ここで $p$ は、「$B$のカードのうち数字が1のものと、$A$の対応するカードの数字が一致する確率」である。 全並べ方 $n!$ 通りのうち、$B$の「1」の前に$A$の「1」が置かれる並べ方は、残りの $n-1$ 枚を自由に並べる $(n-1)!$ 通りである。よって、

$$p = \frac{(n-1)!}{n!} = \frac{1}{n}$$

したがって、求める期待値は

$$E(X) = n \times \frac{1}{n} = 1$$

解法2

(3)の別解

各 $i$ ($1 \leqq i \leqq n$)について、確率変数 $X_i$ を次のように定義する。 $B$の数字が $i$ のカードに対して、$A$のカードの数字が一致しているとき $X_i = 1$、一致していないとき $X_i = 0$ とする。

$B$がゲームで得る総得点 $X$ は、一致したカードの総枚数に等しいから、

$$X = X_1 + X_2 + \dots + X_n$$

と表せる。期待値の線形性より、

$$E(X) = E(X_1) + E(X_2) + \dots + E(X_n) = \sum_{i=1}^n E(X_i)$$

ここで、$X_i = 1$ となる確率は、$i$ 番目の位置で数字が一致する確率である。 全並べ方 $n!$ 通りのうち、$i$ 番目のカードが一致する並べ方は、他の $n-1$ 枚を並べる $(n-1)!$ 通りであるから、

$$P(X_i = 1) = \frac{(n-1)!}{n!} = \frac{1}{n}$$

よって、各 $X_i$ の期待値は

$$E(X_i) = 1 \cdot P(X_i = 1) + 0 \cdot P(X_i = 0) = 1 \cdot \frac{1}{n} = \frac{1}{n}$$

したがって、求める期待値 $E(X)$ は

$$E(X) = \sum_{i=1}^n \frac{1}{n} = n \times \frac{1}{n} = 1$$

解説

完全順列(攪乱順列)を背景とした確率と期待値の典型問題である。 (1)は完全順列の考え方を用いて数え上げる基本問題であり、対象が少ないため樹形図などで直接確認できる。 (2)は、条件付き確率の概念を用いて関係式を導く問題である。「全体で $k$ 枚一致している状況下において、特定のカードが一致している確率は $k/n$ である」という対称性に基づく直感的な理解と、数式を用いた厳密な証明の両方ができるようになっておきたい。 (3)は、期待値を求める問題である。(2)の誘導に乗り、定義式である $\sum k P(X=k)$ の形を作り出して直接計算を回避する手法が鮮やかである。一方、解法2で示した「指示関数(1か0をとる確率変数)の和に分割し、期待値の線形性を用いる手法」も、大学入試数学において非常に重要かつ強力な定石である。

答え

(1) $\frac{1}{6}$

(2) $a_k = \frac{k}{n}$

(3) $1$

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