九州大学 2000年 理系 第8問 解説

方針・初手
極座標 $(r, \theta)$ の意味を、原点からの距離 $r$ と偏角 $\theta$ として捉えるとともに、必要に応じて直交座標 $(x, y) = (r\cos\theta, r\sin\theta)$ に変換して図形的な意味やベクトルの演算に帰着させるのが有効である。特に (2) の演算は複素数平面における積に、(3) の演算はベクトルの和に対応していることを見抜くと見通しが良くなる。
解法1
(1)
曲線 $C_1$ について、$r = 2\cos(\pi + \theta) = -2\cos\theta$ である。 両辺に $r$ を掛けると $r^2 = -2r\cos\theta$ となる。直交座標 $(x, y)$ に変換すると、
$$x^2 + y^2 = -2x \iff (x+1)^2 + y^2 = 1$$
与えられた範囲 $\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{3\pi}{2}$ においては $\cos\theta < 0$ より $x = r\cos\theta < 0$ であるため、$C_1$ は中心 $(-1, 0)$、半径 $1$ の円のうち、第2象限および第3象限にある部分(原点を含まない左半円)を表す。
曲線 $C_2$ は $r = 2(\cos\theta + 1)$ であり、カージオイド(心臓形)の $\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{3\pi}{2}$ の部分を表す。
2曲線の交点の極座標を求める。$r$ を消去して、
$$-2\cos\theta = 2(\cos\theta + 1)$$
$$4\cos\theta = -2 \iff \cos\theta = -\frac{1}{2}$$
$\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{3\pi}{2}$ の範囲で解くと、$\theta = \frac{2}{3}\pi, \frac{4}{3}\pi$ となる。 これらを $C_1$ の式に代入すると、いずれの場合も $r = -2\left(-\frac{1}{2}\right) = 1$ となる。 したがって、交点の極座標は $\left(1, \frac{2}{3}\pi\right)$ および $\left(1, \frac{4}{3}\pi\right)$ である。
概形は、$C_1$ である円の左半分の弧と、$C_2$ であるカージオイドの左半分の弧が、第2象限と第3象限の2つの交点で交わっている図形となる。
(2)
三角形 $OEP_1$ と三角形 $OP_2Q$ が相似であることから、辺の比について
$$OE : OP_1 = OP_2 : OQ \implies 1 : r_1 = r_2 : OQ$$
よって、$OQ = r_1 r_2$ である。これが点 $Q$ の原点からの距離となる。
また、向きも込めて $\angle EOP_1 = \angle P_2OQ$ である。点 $E(1, 0)$ の偏角は $0$ であるから、半直線 $OE$ から半直線 $OP_1$ への回転角は $\theta_1 - 0 = \theta_1$ である。 これが半直線 $OP_2$ から半直線 $OQ$ への回転角に等しいので、動径 $OQ$ の偏角は $\theta_2 + \theta_1$ となる。 したがって、点 $Q = P_1 * P_2$ の極座標は $(r_1 r_2, \theta_1 + \theta_2)$ である。
(3)
四角形 $OP_1RP_2$ が平行四辺形であり、$OP_1 = OP_2 = r$ であるから、この四角形はひし形である。 原点を始点とするベクトルで考えると、$\vec{OR} = \vec{OP_1} + \vec{OP_2}$ である。 直交座標成分で計算すると、
$$\vec{OP_1} = (r\cos\theta_1, r\sin\theta_1), \quad \vec{OP_2} = (r\cos\theta_2, r\sin\theta_2)$$
$$\vec{OR} = (r(\cos\theta_1+\cos\theta_2), r(\sin\theta_1+\sin\theta_2))$$
三角関数の和・積の公式を用いると、
$$\vec{OR} = \left( 2r\cos\frac{\theta_1+\theta_2}{2}\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2}, 2r\sin\frac{\theta_1+\theta_2}{2}\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2} \right)$$
$$\vec{OR} = 2r\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2} \left( \cos\frac{\theta_1+\theta_2}{2}, \sin\frac{\theta_1+\theta_2}{2} \right)$$
3点 $O, P_1, P_2$ は同一直線上にないため、$\theta_1 - \theta_2 \neq \pi + 2n\pi$ であり、$\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2} \neq 0$ である。 極座標の動径は正でなければならないため、符号によって場合分けを行う。
(i) $\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2} > 0$ のとき 点 $R$ の極座標は $\left( 2r\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2}, \frac{\theta_1+\theta_2}{2} \right)$ である。
(ii) $\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2} < 0$ のとき 動径を正の数にするため $-1$ を掛け、偏角に $\pi$ を加えることで向きを反転させる。 点 $R$ の極座標は $\left( -2r\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2}, \frac{\theta_1+\theta_2}{2} + \pi \right)$ である。
(4)
(1) で求めた交点のうち、$V\left(1, \frac{2}{3}\pi\right)$ として計算する。(もう一方の交点を用いても同じ結果が得られる。) (2) の結果より、$V * V$ の極座標は $\left(1 \cdot 1, \frac{2}{3}\pi + \frac{2}{3}\pi\right) = \left(1, \frac{4}{3}\pi\right)$ である。 次に $V \circ (V * V)$ を求める。$\theta_1 = \frac{2}{3}\pi, \theta_2 = \frac{4}{3}\pi$ とすると、
$$\frac{\theta_1-\theta_2}{2} = -\frac{\pi}{3}, \quad \frac{\theta_1+\theta_2}{2} = \pi$$
$\cos\left(-\frac{\pi}{3}\right) = \frac{1}{2} > 0$ であるから、(3) の (i) の場合に該当し、極座標は
$$\left( 2 \cdot 1 \cdot \frac{1}{2}, \pi \right) = (1, \pi)$$
となる。この点は直交座標において $(-1, 0)$ を表す。
点 $P(1, \pi)$ に対し、実数 $k$ による点 $kP$ の位置を直交座標で確認する。 $k \ge 0$ のとき、極座標は $(k, \pi)$ となり、直交座標では $(k\cos\pi, k\sin\pi) = (-k, 0)$。 $k < 0$ のとき、極座標は $(-k, 2\pi)$ となり、直交座標では $(-k\cos2\pi, -k\sin2\pi) = (-k, 0)$。 したがって、常に点 $kP$ は直交座標において $(-k, 0)$ を表す。
この点が曲線 $C_1$ 上にある条件を求める。 $C_1$ は直交座標で $(x+1)^2 + y^2 = 1$ かつ $x < 0$ の領域にある曲線である。 $(-k, 0)$ を代入すると、
$$(-k+1)^2 + 0^2 = 1 \implies (k-1)^2 = 1 \implies k = 0, 2$$
ここで $k=0$ のとき、点は原点 $(0,0)$ となるが、$C_1$ の極方程式 $r = -2\cos\theta$ において $r=0$ となるには $\theta = \frac{\pi}{2}, \frac{3\pi}{2}$ である必要がある。しかし、定義域 $\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{3\pi}{2}$ には両端が含まれないため、原点は曲線 $C_1$ 上には存在しない。 一方、$k=2$ のとき点は $(-2, 0)$ であり、極方程式に代入すると $-2 = -2\cos\theta \implies \theta = \pi$ となり、これは定義域を満たす。 以上より、求める条件は $k=2$ である。
解説
極座標に関する応用問題である。(2) の $P_1 * P_2$ は複素数平面における乗法と同じ図形的意味(絶対値の積と偏角の和)を持つ。(3) の $P_1 \circ P_2$ はベクトルの和を表している。 極座標特有の注意点として、「動径 $r$ は $0$ 以上である」という制約と、「同じ点を表す偏角 $\theta$ が無数に存在する」という性質がある。(3) において $\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2}$ が負になる場合の処理や、(4) において曲線 $C_1$ 上にあるかどうかの判定において、直交座標に変換して考えると論理的なミスを防ぎやすい。
答え
(1) 概形:中心 $(-1, 0)$ 半径 $1$ の円の左半分と、カージオイドの左半分が交わる図形。 交点:$\left(1, \frac{2}{3}\pi\right), \left(1, \frac{4}{3}\pi\right)$ (2) $(r_1 r_2, \theta_1 + \theta_2)$ (3) $\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2} > 0$ のとき $\left( 2r\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2}, \frac{\theta_1+\theta_2}{2} \right)$ $\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2} < 0$ のとき $\left( -2r\cos\frac{\theta_1-\theta_2}{2}, \frac{\theta_1+\theta_2}{2} + \pi \right)$ (4) $k = 2$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











