九州大学 1997年 理系 第10問 解説

方針・初手
(1) は、直線が双曲線に接する条件を求める問題です。接点を文字でおいて接線の公式と係数比較を行うか、連立して判別式 $D=0$ を利用して $n$ を $m$ で表します。
(2) は、垂線の足 $H, H'$ の軌跡を求める問題です。接線と垂線の方程式を立て、それらを連立して交点の座標を直接求めるのではなく、2つの式の両辺を2乗して足し合わせることで、うまく $x^2+y^2$ の形を作り出します。
(3) は、(2) の結果を幾何的に解釈することが重要です。$H, H'$ が原点中心の円上にあり、かつ接線上にあるという事実から、三角形の面積を点と直線の距離 $t$ と円の半径を用いた図形の関係から立式します。その後、$t$ の定義域を $m$ の条件から求めて最大値を計算します。
解法1
(1)
接点を $(x_1, y_1)$ とおくと、双曲線 $\frac{x^2}{a^2} - \frac{y^2}{b^2} = 1$ 上の点における接線の方程式は以下のようになる。
$$\frac{x_1 x}{a^2} - \frac{y_1 y}{b^2} = 1$$
これが直線 $y = mx + n$、すなわち $mx - y + n = 0$ と一致する。係数の比が等しいので、
$$\frac{x_1 / a^2}{m} = \frac{-y_1 / b^2}{-1} = \frac{-1}{n}$$
これを $x_1, y_1$ について解くと、
$$x_1 = -\frac{a^2 m}{n}, \quad y_1 = -\frac{b^2}{n}$$
点 $(x_1, y_1)$ は双曲線上の点であるから、元の双曲線の方程式に代入して、
$$\frac{1}{a^2}\left(-\frac{a^2 m}{n}\right)^2 - \frac{1}{b^2}\left(-\frac{b^2}{n}\right)^2 = 1$$
整理すると、
$$\frac{a^2 m^2}{n^2} - \frac{b^2}{n^2} = 1$$
両辺に $n^2$ を掛けて、
$$a^2 m^2 - b^2 = n^2$$
よって、$n$ を $m$ で表すと以下のようになる。
$$n = \pm \sqrt{a^2 m^2 - b^2}$$
(ただし、根号の中身が正である必要があるため、$a^2 m^2 - b^2 > 0$ すなわち $|m| > \frac{b}{a}$ が接線をもつ条件となる。)
(2)
双曲線の焦点の座標は $F(\sqrt{a^2+b^2}, 0), F'(-\sqrt{a^2+b^2}, 0)$ である。ここで $c = \sqrt{a^2+b^2}$ である。
接線 $l: mx - y + n = 0$ に焦点 $F(c, 0)$ から下ろした垂線を $FH$ とする。$m=0$ のときは (1) より $n^2 = -b^2 < 0$ となり接線が存在しないため、$m \neq 0$ と仮定してよい。 垂線 $FH$ の傾きは $-\frac{1}{m}$ であるから、その方程式は、
$$y = -\frac{1}{m}(x - c) \iff x + my = c$$
点 $H(x, y)$ は接線 $l$ と垂線 $FH$ の交点であるから、次の2式を同時に満たす。
$$mx - y = -n$$
$$x + my = c$$
上の2式の両辺をそれぞれ2乗して足し合わせると、
$$(mx - y)^2 + (x + my)^2 = (-n)^2 + c^2$$
$$m^2 x^2 - 2mxy + y^2 + x^2 + 2mxy + m^2 y^2 = n^2 + c^2$$
$$(m^2 + 1)(x^2 + y^2) = n^2 + c^2$$
ここで、(1) より $n^2 = a^2 m^2 - b^2$ であり、$c^2 = a^2 + b^2$ であるから、右辺は次のように計算できる。
$$n^2 + c^2 = (a^2 m^2 - b^2) + (a^2 + b^2) = a^2(m^2 + 1)$$
よって、
$$(m^2 + 1)(x^2 + y^2) = a^2(m^2 + 1)$$
$m^2 + 1 \neq 0$ であるから、両辺を割って、
$$x^2 + y^2 = a^2$$
したがって、点 $H$ は原点 $O$ を中心とする半径 $a$ の円周上にある。 点 $H'$ についても、焦点 $F'(-c, 0)$ を用いて同様に $x + my = -c$ を導くことができ、2乗して加えると右辺は $(-n)^2 + (-c)^2 = n^2 + c^2$ となり全く同じ結果が得られる。 以上より、$H, H'$ は原点 $O$ を中心とする半径 $a$ の円周上にあることが示された。
(3)
(2) の結果より、$H, H'$ は円 $x^2 + y^2 = a^2$ 上の点である。同時に、$H, H'$ は接線 $l$ 上の点でもある。 つまり、線分 $HH'$ は円 $x^2 + y^2 = a^2$ が直線 $l$ によって切り取られる弦である。 原点 $O$ から直線 $l$ までの距離が $t$ であるから、直角三角形の三平方の定理より、弦の半分の長さは $\sqrt{a^2 - t^2}$ となる。 したがって、底辺を $HH'$ とみたときの $\triangle HOH'$ の面積 $S$ は、高さが $t$ であるから、
$$S = \frac{1}{2} \cdot 2\sqrt{a^2 - t^2} \cdot t = t\sqrt{a^2 - t^2}$$
次に、$t$ のとり得る範囲を求める。原点 $O$ から直線 $mx - y + n = 0$ への距離 $t$ は点と直線の距離の公式より、
$$t = \frac{|n|}{\sqrt{m^2 + 1}}$$
両辺を2乗して (1) の結果を代入すると、
$$t^2 = \frac{n^2}{m^2 + 1} = \frac{a^2 m^2 - b^2}{m^2 + 1}$$
これを式変形する。
$$t^2 = \frac{a^2(m^2 + 1) - a^2 - b^2}{m^2 + 1} = a^2 - \frac{a^2 + b^2}{m^2 + 1}$$
(1) より、接線が存在する条件は $a^2 m^2 - b^2 > 0 \iff m^2 > \frac{b^2}{a^2}$ である。このとき $m^2 + 1$ の取り得る範囲は、
$$\frac{a^2 + b^2}{a^2} < m^2 + 1$$
逆数をとると、
$$0 < \frac{1}{m^2 + 1} < \frac{a^2}{a^2 + b^2}$$
各辺に $a^2 + b^2 \ (>0)$ を掛けて、
$$0 < \frac{a^2 + b^2}{m^2 + 1} < a^2$$
各辺に $-1$ を掛けて $a^2$ を足すと、
$$0 < a^2 - \frac{a^2 + b^2}{m^2 + 1} < a^2$$
すなわち $0 < t^2 < a^2$ となる。$t > 0$ であるから、$t$ のとり得る範囲は、
$$0 < t < a$$
最後に、$S$ の最大値を求める。$S = \sqrt{t^2(a^2 - t^2)}$ において、$t^2 = u \ (0 < u < a^2)$ とおくと、根号の中身は、
$$u(a^2 - u) = -u^2 + a^2 u = -\left(u - \frac{a^2}{2}\right)^2 + \frac{a^4}{4}$$
$0 < u < a^2$ の範囲に $u = \frac{a^2}{2}$ は含まれるため、根号の中身は $u = \frac{a^2}{2}$ のとき最大値 $\frac{a^4}{4}$ をとる。 面積 $S > 0$ より、$S$ の最大値は $\sqrt{\frac{a^4}{4}} = \frac{a^2}{2}$ である。
解法2
(1) の別解
直線 $y = mx + n$ を双曲線の方程式 $b^2 x^2 - a^2 y^2 = a^2 b^2$ に代入し、接する条件から判別式を利用する。
$$b^2 x^2 - a^2(mx + n)^2 = a^2 b^2$$
$$(b^2 - a^2 m^2)x^2 - 2a^2 mn x - a^2(n^2 + b^2) = 0$$
これが $x$ についての2次方程式として重解をもてばよい。$b^2 - a^2 m^2 = 0$ のときは1次以下の方程式となり接しないため、$b^2 - a^2 m^2 \neq 0$ である。 判別式を $D$ とすると、$D = 0$ より、
$$\frac{D}{4} = (-a^2 mn)^2 - (b^2 - a^2 m^2)\{-a^2(n^2 + b^2)\} = 0$$
$$a^4 m^2 n^2 + a^2(b^2 - a^2 m^2)(n^2 + b^2) = 0$$
両辺を $a^2 \ (>0)$ で割って展開すると、
$$a^2 m^2 n^2 + b^2 n^2 + b^4 - a^2 m^2 n^2 - a^2 m^2 b^2 = 0$$
$$b^2 n^2 + b^4 - a^2 m^2 b^2 = 0$$
両辺を $b^2 \ (>0)$ で割ると、
$$n^2 + b^2 - a^2 m^2 = 0$$
$$n^2 = a^2 m^2 - b^2$$
よって、
$$n = \pm \sqrt{a^2 m^2 - b^2}$$
解説
双曲線の焦点から任意の接線に下ろした垂線の足が、主軸を直径とする円(補助円 $x^2+y^2=a^2$)上にあるという有名な定理を題材にした問題です。 (2) のように、直接交点を求めずに「2式の両辺を2乗して足す」ことで $\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ のような関係式から円の方程式をあぶり出す手法は、軌跡の問題における強力な定石です。 (3) は、(2) の結果を活かして図形的な解釈に持ち込むことで、複雑な座標計算を回避しています。また、$y=mx+n$ という形で接線が与えられているため、$y$ 軸に平行な直線は表現できず、結果として $t=a$ が変域に含まれないことに注意が必要です。
答え
(1) $n = \pm \sqrt{a^2 m^2 - b^2}$
(2) 解答の導出過程の通り。
(3)
- $S = t\sqrt{a^2 - t^2}$
- $t$ のとり得る範囲: $0 < t < a$
- $S$ の最大値: $\frac{a^2}{2}$
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