九州大学 2001年 理系 第9問 解説

方針・初手
連立1次方程式を行列表記し、逆行列を用いて解 $x, y$ を $p, q$ の式で表すことから始める。得られた $x, y$ が整数となる条件を整数の性質(倍数や合同式など)を用いて整理する。
解法1
(1)
与えられた連立1次方程式を、行列を用いて表すと次のようになる。
$$\begin{pmatrix} 4 & 9 \\ 2 & 6 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix}$$
係数行列を $A = \begin{pmatrix} 4 & 9 \\ 2 & 6 \end{pmatrix}$ とおく。行列式は $\det A = 4 \times 6 - 9 \times 2 = 24 - 18 = 6 \neq 0$ であるから、逆行列 $A^{-1}$ を持ち、次のように求まる。
$$A^{-1} = \frac{1}{6} \begin{pmatrix} 6 & -9 \\ -2 & 4 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & -\frac{3}{2} \\ -\frac{1}{3} & \frac{2}{3} \end{pmatrix}$$
(2)
(1) の結果より、
$$\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = A^{-1} \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix} = \frac{1}{6} \begin{pmatrix} 6 & -9 \\ -2 & 4 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \frac{2p - 3q}{2} \\ \frac{-p + 2q}{3} \end{pmatrix}$$
よって、$x = p - \frac{3}{2}q$、$y = \frac{-p + 2q}{3}$ である。$x, y$ が共に整数となるための条件を考える。
$x = p - \frac{3q}{2}$ が整数となるためには、$p$ は整数であるから、$\frac{3q}{2}$ が整数にならなければならない。3と2は互いに素であるから、$q$ は2の倍数(偶数)である必要がある。 条件より $0 \leqq q \leqq 5$ であるから、$q = 0, 2, 4$ のいずれかである。
また、$y = \frac{-p + 2q}{3}$ が整数となるためには、$-p + 2q$ が3の倍数、すなわち $p \equiv 2q \pmod 3$ である必要がある。これを $q$ の値ごとに考える。条件より $0 \leqq p \leqq 5$ である。
(i) $q = 0$ のとき $p \equiv 0 \pmod 3$ となるから、$p = 0, 3$。
(ii) $q = 2$ のとき $p \equiv 4 \equiv 1 \pmod 3$ となるから、$p = 1, 4$。
(iii) $q = 4$ のとき $p \equiv 8 \equiv 2 \pmod 3$ となるから、$p = 2, 5$。
以上より、求める組 $(p, q)$ は以下のようになる。
$$(p, q) = (0, 0), (3, 0), (1, 2), (4, 2), (2, 4), (5, 4)$$
(3)
「$d$ のどんな倍数 $p, q$ に対しても」という条件より、任意の整数 $k, l$ を用いて $p = dk, q = dl$ と表せる。 これらを (2) で求めた $x, y$ の式に代入する。
$$x = \frac{2dk - 3dl}{2} = d \frac{2k - 3l}{2}$$
$$y = \frac{-dk + 2dl}{3} = d \frac{-k + 2l}{3}$$
$x, y$ が任意の整数 $k, l$ に対して整数となるためには、すべての $k, l$ について $\frac{d(2k - 3l)}{2}$ と $\frac{d(-k + 2l)}{3}$ が整数になればよい。
たとえば $d=6$ とすると、
$$x = 3(2k - 3l)$$
$$y = 2(-k + 2l)$$
となり、これらは任意の整数 $k, l$ に対して明らかに整数となる。 したがって、条件を満たす正の整数 $d$(例えば $d=6$)が存在することが示された。
(4)
(3) より、$x, y$ が任意の整数 $k, l$ について整数となるような $d$ の条件を考える。 $k=0, l=1$ のときを考えると、$p=0, q=d$ となり、
$$x = -\frac{3d}{2}$$
$$y = \frac{2d}{3}$$
これらが共に整数となるためには、$d$ は2の倍数かつ3の倍数でなければならない。2と3は互いに素であるから、$d$ は6の倍数であることが必要である。
逆に $d$ が6の倍数のとき、$d = 6m$($m$ は正の整数)とおくと、
$$x = 6m \frac{2k - 3l}{2} = 3m(2k - 3l)$$
$$y = 6m \frac{-k + 2l}{3} = 2m(-k + 2l)$$
となり、これらは任意の整数 $k, l$ に対して整数となるので十分である。
したがって、条件を満たす正の整数 $d$ は6の倍数であり、その中で最小のものは $d = 6$ である。
解説
行列を用いた連立1次方程式の解法から始まり、整数の性質を問う総合問題である。 (1)と(2)は基本的な逆行列の計算と、不定方程式の整数解を絞り込む典型的な処理である。 (3)では「どんな倍数に対しても」という条件を「任意の整数 $k, l$ について」と立式できるかが鍵となる。存在を示すだけであれば、具体的な値を1つ見つけて提示するのが最も簡単である。 (4)では、(3)の条件を満たすための「必要十分条件」を考える。「任意の〜について成り立つ」という命題の必要条件を求める際には、特定の扱いやすい数値を代入して候補を絞り込む手法が有効である。
答え
(1) 方程式の列表現は
$$\begin{pmatrix} 4 & 9 \\ 2 & 6 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix}$$
係数行列の逆行列は
$$\begin{pmatrix} 1 & -\frac{3}{2} \\ -\frac{1}{3} & \frac{2}{3} \end{pmatrix}$$
(2)
$$(p, q) = (0, 0), (3, 0), (1, 2), (4, 2), (2, 4), (5, 4)$$
(3) 解答参照($d=6$ などが条件を満たすことを示して存在を証明)
(4)
$$d = 6$$
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