九州大学 1984年 文系 第4問 解説

方針・初手
(1) は、「すべての整数 $x, y$ に対して成り立つ」という条件から、都合の良い具体的な整数を代入して必要条件を引き出すのが定石である。$A$ の各成分を直接取り出すために、基本ベクトルを代入する。
(2) は、(1)の事実を利用する。逆変換も「整数を整数に移す」ため、逆行列 $A^{-1}$ の成分もすべて整数になる。この性質と、行列式の積の性質 $\det(XY) = \det(X)\det(Y)$ を結びつけるか、逆行列の公式を用いて成分を直接計算する。
解法1
(1)
与えられた1次変換は、次のように成分で表せる。
$$\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ax + by \\ cx + dy \end{pmatrix}$$
条件より、任意の整数 $x, y$ に対して $x', y'$ は整数となる。 ここで、$x = 1, y = 0$ とすると、
$$\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a \\ c \end{pmatrix}$$
となり、$x', y'$ が整数であることから、$a, c$ は整数である。 次に、$x = 0, y = 1$ とすると、
$$\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} b \\ d \end{pmatrix}$$
となり、$x', y'$ が整数であることから、$b, d$ は整数である。 以上より、$a, b, c, d$ はすべて整数であることが示された。
(2)
(1) の結果から、行列が「整数成分のベクトルを整数成分のベクトルに移す」ことと、「行列のすべての成分が整数である」ことは同値であると分かる。 条件より、逆写像 $\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = A^{-1} \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix}$ も、任意の整数 $x', y'$ に対して整数 $x, y$ を与える。 したがって、行列 $A^{-1}$ も「整数成分のベクトルを整数成分のベクトルに移す」ため、$A^{-1}$ のすべての成分は整数である。
ここで、$a, b, c, d$ は整数であるから、$A$ の行列式 $\det(A) = ad - bc$ も整数である。 同様に、$A^{-1}$ の成分もすべて整数であるから、その行列式 $\det(A^{-1})$ も整数となる。
正方行列の行列式について成り立つ性質 $\det(XY) = \det(X)\det(Y)$ を用いると、
$$\det(A)\det(A^{-1}) = \det(AA^{-1}) = \det(E) = 1$$
(ただし、$E$ は単位行列)が成り立つ。 $\det(A)$ と $\det(A^{-1})$ はともに整数であり、その積が $1$ となる。2つの整数の積が $1$ となるのは、両者がともに $1$ であるか、ともに $-1$ である場合に限られる。 したがって、
$$\det(A) = 1 \quad \text{または} \quad \det(A) = -1$$
であるから、$ad - bc$ の値は $1$ または $-1$ であることが示された。
解法2
(2) の別解:逆行列の成分を直接調べる
行列 $A$ が逆行列をもつため、$ad - bc \neq 0$ である。 逆行列 $A^{-1}$ は、公式より次のように表される。
$$A^{-1} = \frac{1}{ad - bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}$$
(1) と同様の議論から、逆写像を表す行列 $A^{-1}$ は「整数成分のベクトルを整数成分のベクトルに移す」ため、$A^{-1}$ の各成分はすべて整数である。 すなわち、
$$\frac{d}{ad - bc}, \quad \frac{-b}{ad - bc}, \quad \frac{-c}{ad - bc}, \quad \frac{a}{ad - bc}$$
はすべて整数である。 行列式の定義から、$A^{-1}$ の行列式も整数の和と積で表されるため、整数となる。これを計算すると、
$$\det(A^{-1}) = \left( \frac{d}{ad - bc} \right) \left( \frac{a}{ad - bc} \right) - \left( \frac{-b}{ad - bc} \right) \left( \frac{-c}{ad - bc} \right) = \frac{ad - bc}{(ad - bc)^2} = \frac{1}{ad - bc}$$
となる。したがって、$\frac{1}{ad - bc}$ は整数である。 また、(1) より $a, b, c, d$ は整数であるから、$ad - bc$ も整数である。 $\frac{1}{ad - bc}$ と $ad - bc$ がともに整数となるような実数は $1$ または $-1$ のみに限られる。 よって、$ad - bc$ の値は $1$ または $-1$ であることが示された。
解説
- (1) について: 「任意の〇〇に対して成り立つ」条件が与えられた場合、まずは極端な値や扱いやすい具体的な値を代入して必要条件を調べるのが鉄則である。本問では、行列の特定の列成分をそのまま取り出せる基本ベクトル $(1, 0), (0, 1)$ を代入することで、瞬時に結論が得られる。
- (2) について: 行列式の乗法性 $\det(AB) = \det(A)\det(B)$ は強力な性質である。行列の成分が整数であればその行列式も整数になることを踏まえると、解法1のように非常に見通しよく証明できる。この性質は、一次変換と整数の絡む問題で頻出の背景知識(ユニモジュラ行列)である。
- 行列式の乗法性に思い当たらなくとも、解法2のように逆行列の公式から成分を具体的に書き下し、その行列式を計算することで論理的に突破可能である。
答え
(1) 略(証明問題)
(2) 略(証明問題)
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