九州大学 2007年 理系 第5問 解説

方針・初手
- (1) は絶対値を含む三角関数のグラフの基本である。$y = \sin x$ のグラフのうち $x$ 軸より下の部分を折り返して考え、同じ形が繰り返される最小の幅(基本周期)を読み取る。
- (2) は周期関数の定義式 $f(x+p) = f(x)$ から出発する。前半は問題文の誘導に従い、この式にうまく $x$ の値を代入して等式を導く。後半は、前半の結論から得られる2つの場合分けについて、定義式が $x$ についての恒等式であることを利用して証明する。
- (3) は (2) の結論から基本周期 $p$ が満たすべき必要条件(方程式)を立てる。「$1$ 以外の公約数をもたない(互いに素)」という整数問題の定石を活用し、$p$ が最小となる候補を絞り込む。$n$ の偶奇で状況が変わることに注意して場合分けし、最後にその候補が実際に周期であることを確認(十分性の確認)する。
解法1
(1)
関数 $y = |\sin x|$ のグラフは、$y = \sin x$ のグラフにおける $y < 0$ の部分を $x$ 軸に関して対称に折り返したものである。 グラフは $x$ 軸の上下を波打つ曲線から、上に凸の幅 $\pi$ の山が連続する形となる。
したがって、同じ形が繰り返される最小の区間の幅は $\pi$ であり、関数 $|\sin x|$ の基本周期は $\pi$ である。
(2)
$p$ が関数 $f(x)$ の周期であるから、すべての実数 $x$ に対して
$$ f(x+p) = f(x) $$
が成り立つ。 この式に $x = -\frac{p}{2}$ を代入すると、
$$ f\left(-\frac{p}{2}+p\right) = f\left(-\frac{p}{2}\right) $$
$$ f\left(\frac{p}{2}\right) = f\left(-\frac{p}{2}\right) \quad \cdots \text{①} $$
が成り立つ。 ここで、関数 $f(x)$ の定義から
$$ f\left(\frac{p}{2}\right) = \left|\sin \frac{mp}{2}\right| \sin \frac{np}{2} $$
であり、
$$ \begin{aligned} f\left(-\frac{p}{2}\right) &= \left|\sin\left(-\frac{mp}{2}\right)\right| \sin\left(-\frac{np}{2}\right) \\ &= \left|-\sin \frac{mp}{2}\right| \left(-\sin \frac{np}{2}\right) \\ &= - \left|\sin \frac{mp}{2}\right| \sin \frac{np}{2} \\ &= -f\left(\frac{p}{2}\right) \end{aligned} $$
である。 これを①に代入すると、
$$ f\left(\frac{p}{2}\right) = -f\left(\frac{p}{2}\right) $$
$$ 2f\left(\frac{p}{2}\right) = 0 $$
よって、$f\left(\frac{p}{2}\right) = 0$ となる。 ゆえに、$f\left(\frac{p}{2}\right) = f\left(-\frac{p}{2}\right) = 0$ が成り立つことが示された。
次に、後半を示す。 $f\left(\frac{p}{2}\right) = 0$ より、
$$ \left|\sin \frac{mp}{2}\right| \sin \frac{np}{2} = 0 $$
したがって、$\sin \frac{mp}{2} = 0$ または $\sin \frac{np}{2} = 0$ である。 それぞれの場合について考える。
(i) $\sin \frac{mp}{2} = 0$ のとき
$\frac{mp}{2} = k\pi$($k$ は整数)とおける。 このとき $mp = 2k\pi$ であり、$mp$ は $\pi$ の整数倍である。 これを用いて $f(x+p)$ を計算すると、
$$ \begin{aligned} f(x+p) &= |\sin m(x+p)| \sin n(x+p) \\ &= |\sin(mx+mp)| \sin(nx+np) \\ &= |\sin(mx+2k\pi)| \sin(nx+np) \\ &= |\sin mx| \sin(nx+np) \end{aligned} $$
$f(x+p) = f(x)$ より、
$$ |\sin mx| \sin(nx+np) = |\sin mx| \sin nx $$
これがすべての実数 $x$ で成り立つ。 ここで、$\sin mx \neq 0$ となる $x$ を代入すると、両辺を $|\sin mx|$ で割ることができ、
$$ \sin(nx+np) = \sin nx $$
加法定理を用いると、
$$ \sin nx \cos np + \cos nx \sin np = \sin nx $$
これが $\sin mx \neq 0$ となる任意の $x$ について成り立つから、関数としての連続性より、すべての実数 $x$ について恒等的に成り立つ。 よって $\cos np = 1$ かつ $\sin np = 0$ であるから、$np$ は $2\pi$ の整数倍である。
(ii) $\sin \frac{np}{2} = 0$ のとき
$\frac{np}{2} = l\pi$($l$ は整数)とおける。 このとき $np = 2l\pi$ であり、$np$ は $2\pi$ の整数倍である。 これを用いて $f(x+p)$ を計算すると、
$$ \begin{aligned} f(x+p) &= |\sin m(x+p)| \sin n(x+p) \\ &= |\sin(mx+mp)| \sin(nx+np) \\ &= |\sin(mx+mp)| \sin(nx+2l\pi) \\ &= |\sin(mx+mp)| \sin nx \end{aligned} $$
$f(x+p) = f(x)$ より、
$$ |\sin(mx+mp)| \sin nx = |\sin mx| \sin nx $$
これがすべての実数 $x$ で成り立つ。 ここで、$\sin nx \neq 0$ となる $x$ を代入すると、両辺を $\sin nx$ で割ることができ、
$$ |\sin(mx+mp)| = |\sin mx| $$
これが $\sin nx \neq 0$ となる任意の $x$ について成り立ち、連続性よりすべての実数 $x$ について成り立つ。 両辺を2乗すると、
$$ \sin^2(mx+mp) = \sin^2 mx $$
半角の公式を用いて次数を下げると、
$$ \frac{1-\cos(2mx+2mp)}{2} = \frac{1-\cos 2mx}{2} $$
$$ \cos(2mx+2mp) = \cos 2mx $$
加法定理を用いると、
$$ \cos 2mx \cos 2mp - \sin 2mx \sin 2mp = \cos 2mx $$
これが $x$ についての恒等式となるので、$\cos 2mp = 1$ かつ $\sin 2mp = 0$ である。 よって $2mp = 2k\pi$($k$ は整数)となり、$mp = k\pi$ であるから、$mp$ は $\pi$ の整数倍である。
(i), (ii) のいずれの場合においても、$mp$ は $\pi$ の整数倍であり、$np$ は $2\pi$ の整数倍であることが示された。
(3)
$f(x)$ の基本周期を $p$ ($p > 0$) とする。 (2) の結果より、$p$ が周期ならば、$mp = k\pi$, $np = 2l\pi$($k, l$ は整数)と表せる。 $m, n, p$ はすべて正であるから、$k, l$ は自然数である。
$$ p = \frac{k}{m}\pi = \frac{2l}{n}\pi $$
これより、
$$ kn = 2lm $$
が成り立つ。 $m, n$ は $1$ 以外の公約数をもたない(互いに素である)自然数である。 $n$ の偶奇によって場合分けを行う。
(ア) $n$ が偶数のとき
$n = 2n'$($n'$ は自然数)とおける。 $m$ と $n$ が互いに素であるから、$m$ は奇数である。 これを $kn = 2lm$ に代入すると、
$$ k(2n') = 2lm $$
$$ kn' = lm $$
$m$ と $n$ が互いに素であるから、$m$ と $n'$ も互いに素である。 したがって、$k$ は $m$ の倍数である。 $k$ は自然数であるから、最小の $k$ は $k = m$ である。 このとき、周期の候補は
$$ p = \frac{m}{m}\pi = \pi $$
となる。 これが実際に周期になることを確認する。
$$ f(x+\pi) = |\sin(mx+m\pi)| \sin(nx+n\pi) $$
$m$ は奇数であるから $\sin(mx+m\pi) = -\sin mx$ となり、$|\sin(mx+m\pi)| = |-\sin mx| = |\sin mx|$ である。 $n$ は偶数であるから $\sin(nx+n\pi) = \sin nx$ である。 よって、
$$ f(x+\pi) = |\sin mx| \sin nx = f(x) $$
となり、$p = \pi$ は周期である。 $k$ は $m$ の正の倍数であるから $k \geqq m$ であり、$p = \frac{k}{m}\pi \geqq \pi$ となるため、$p = \pi$ が最小の正の周期(基本周期)である。
(イ) $n$ が奇数のとき
$kn = 2lm$ において、$m$ と $n$ は互いに素であり、さらに $n$ は奇数であるから、$2m$ と $n$ も互いに素である。 $k \cdot n = l \cdot 2m$ という関係から、$k$ は $2m$ の倍数である。 $k$ は自然数であるから、最小の $k$ は $k = 2m$ である。 このとき、周期の候補は
$$ p = \frac{2m}{m}\pi = 2\pi $$
となる。 これが実際に周期になることを確認する。
$$ \begin{aligned} f(x+2\pi) &= |\sin(mx+2m\pi)| \sin(nx+2n\pi) \\ &= |\sin mx| \sin nx \\ &= f(x) \end{aligned} $$
となり、$p = 2\pi$ は周期である。 $k$ は $2m$ の正の倍数であるから $k \geqq 2m$ であり、$p = \frac{k}{m}\pi \geqq 2\pi$ となるため、$p = 2\pi$ が最小の正の周期(基本周期)である。
以上より、関数 $f(x)$ の基本周期は、$n$ が偶数のとき $\pi$、$n$ が奇数のとき $2\pi$ である。
解説
- 周期関数の証明問題では、定義 $f(x+p)=f(x)$ に具体的な値を代入して必要条件を絞り込み、最後に十分性を確認する論法が極めて有効である。
- (2) の後半は、得られた等式が $x$ についての恒等式であることを意識し、「ある特定の $x$ だけでなく、任意の $x$ で成り立つ」性質をうまく利用して係数比較($\cos np = 1$ 等)を引き出すのがポイントである。
- (3) の基本周期を求める問題では、整数問題の「互いに素」の性質($ax=by$ で $a,b$ が互いに素なら $x$ は $b$ の倍数)を正しく適用し、最小となるような値を構成することが求められる。周期の候補を出した後は、必ず元の式に代入して周期性を満たすかどうかの確認(十分性の確認)を忘れないようにしたい。
答え
(1) グラフは省略。基本周期は $\pi$ (2) 略(解法参照) (3) $n$ が偶数のとき $\pi$、$n$ が奇数のとき $2\pi$
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