東京大学 2010年 文系 第4問 解説

方針・初手
円 $C$ を中心が原点 $\mathrm{O}$、半径が $1$ の円とし、出発点 $\mathrm{A}$ を座標 $(1, 0)$ と定めても一般性を失わない。 各点の動く速さと向きから、時刻 $t$ における点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}, \mathrm{R}$ の偏角を $t$ の式で表す。 点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}, \mathrm{R}$ はすべて円 $C$ 上にあるため、$\triangle \mathrm{PQR}$ が直角三角形になるということは、斜辺 $\mathrm{PR}$ が円 $C$ の直径になることと同値である。さらに直角二等辺三角形であるための条件を偏角の差に着目して立式する。
解法1
円 $C$ の中心を原点 $\mathrm{O}$ とし、点 $\mathrm{A}$ の座標を $(1, 0)$ とする。 点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}, \mathrm{R}$ は半径 $1$ の円周上を動くため、その速さは角速度の大きさに等しい。 始線 $\mathrm{OA}$ から測った時刻 $t$ ($0 \leqq t \leqq 2\pi$) における各点の偏角は、移動の向きと速さを考慮するとそれぞれ以下のようになる。
点 $\mathrm{P}$ : $mt$ 点 $\mathrm{Q}$ : $t$ 点 $\mathrm{R}$ : $-2t$
3点 $\mathrm{P}, \mathrm{Q}, \mathrm{R}$ は円 $C$ 上の点である。 $\triangle \mathrm{PQR}$ が $\mathrm{PR}$ を斜辺とする直角三角形となるためには、円周角の定理の逆より、斜辺 $\mathrm{PR}$ は円 $C$ の直径でなければならない。 すなわち、点 $\mathrm{P}$ と点 $\mathrm{R}$ は原点 $\mathrm{O}$ に関して対称な位置にあるため、その偏角の差は $\pi$ の奇数倍となる。
$$ mt - (-2t) = (2k+1)\pi \quad (k\text{ は整数}) $$
$$ (m+2)t = (2k+1)\pi \cdots \text{①} $$
さらに、$\triangle \mathrm{PQR}$ は直角二等辺三角形であるから、弦の長さについて $\mathrm{PQ} = \mathrm{QR}$ が成り立つ。 弦 $\mathrm{PR}$ は円 $C$ の直径であるため、点 $\mathrm{Q}$ は半円周 $\mathrm{PR}$ の中点に位置する。 したがって、直線 $\mathrm{OQ}$ と直線 $\mathrm{OR}$ は垂直に交わるため、点 $\mathrm{Q}$ と点 $\mathrm{R}$ の偏角の差は $\frac{\pi}{2}$ の奇数倍となる。
$$ t - (-2t) = \frac{2l+1}{2}\pi \quad (l\text{ は整数}) $$
$$ 3t = \frac{2l+1}{2}\pi \cdots \text{②} $$
時刻 $t$ の範囲は $0 \leqq t \leqq 2\pi$ である。 $t=0$ のとき、3点はすべて点 $\mathrm{A}$ にあり三角形をなさない。 $t=2\pi$ のとき、点 $\mathrm{Q}$ の偏角は $2\pi$ となり点 $\mathrm{A}$ に戻る。このとき $m$ は整数であるから点 $\mathrm{P}$ の偏角 $2m\pi$ も点 $\mathrm{A}$ の位置であり、点 $\mathrm{R}$ の偏角 $-4\pi$ も点 $\mathrm{A}$ の位置となるため、やはり三角形をなさない。 よって、$0 < t < 2\pi$ の範囲で考えればよい。
②を満たす $t$ ($0 < t < 2\pi$) を求める。
$$ 0 < \frac{2l+1}{6}\pi < 2\pi $$
$$ 0 < 2l+1 < 12 $$
$l$ は整数であるから、$2l+1 = 1, 3, 5, 7, 9, 11$ のいずれかである。 よって、$t$ の候補は以下の $6$ つとなる。
$$ t = \frac{\pi}{6}, \frac{\pi}{2}, \frac{5\pi}{6}, \frac{7\pi}{6}, \frac{3\pi}{2}, \frac{11\pi}{6} $$
これらの $t$ に対して、条件①を満たす整数 $m$ ($1 \leqq m \leqq 10$) が存在するかを調べる。 ①を変形すると以下のようになる。
$$ m+2 = \frac{2k+1}{t}\pi $$
条件 $1 \leqq m \leqq 10$ より、$m+2$ は $3 \leqq m+2 \leqq 12$ を満たす整数である。
(i)
$t = \frac{\pi}{6}$ のとき
$$ m+2 = 6(2k+1) $$
$m+2$ は $6$ の奇数倍である。$3 \leqq m+2 \leqq 12$ を満たすのは $m+2 = 6$ ($k=0$) のみであり、このとき $m = 4$ となる。
(ii)
$t = \frac{\pi}{2}$ のとき
$$ m+2 = 2(2k+1) $$
$m+2$ は $2$ の奇数倍である。$3 \leqq m+2 \leqq 12$ を満たすのは $m+2 = 6, 10$ ($k=1, 2$) であり、このとき $m = 4, 8$ となる。
(iii)
$t = \frac{5\pi}{6}$ のとき
$$ m+2 = \frac{6(2k+1)}{5} $$
$m+2$ は整数であるから、$2k+1$ は $5$ の倍数となる。$2k+1$ は奇数であるから、$5$ の奇数倍である。 $2k+1 = 5$ のとき、$m+2 = 6$ となり $m=4$ となる。 $2k+1 = 15$ のとき、$m+2 = 18$ となり条件を満たさない。 よって、$m = 4$ となる。
(iv)
$t = \frac{7\pi}{6}$ のとき
$$ m+2 = \frac{6(2k+1)}{7} $$
$2k+1$ は $7$ の倍数かつ奇数である。 $2k+1 = 7$ のとき、$m+2 = 6$ となり $m=4$ となる。 $2k+1 = 21$ のとき、$m+2 = 18$ となり条件を満たさない。 よって、$m = 4$ となる。
(v)
$t = \frac{3\pi}{2}$ のとき
$$ m+2 = \frac{2(2k+1)}{3} $$
$2k+1$ は $3$ の倍数かつ奇数である。 $2k+1 = 3$ のとき、$m+2 = 2$ となり条件を満たさない。 $2k+1 = 9$ のとき、$m+2 = 6$ となり $m=4$ となる。 $2k+1 = 15$ のとき、$m+2 = 10$ となり $m=8$ となる。 $2k+1 = 21$ のとき、$m+2 = 14$ となり条件を満たさない。 よって、$m = 4, 8$ となる。
(vi)
$t = \frac{11\pi}{6}$ のとき
$$ m+2 = \frac{6(2k+1)}{11} $$
$2k+1$ は $11$ の倍数かつ奇数である。 $2k+1 = 11$ のとき、$m+2 = 6$ となり $m=4$ となる。 $2k+1 = 33$ のとき、$m+2 = 18$ となり条件を満たさない。 よって、$m = 4$ となる。
以上 (i) から (vi) の考察により、条件を満たす組 $(m, t)$ がすべて求められる。
解説
点が円周上を等速で動く問題では、円の中心を原点にとり、各点の偏角を時刻 $t$ を用いて表すのが基本である。 本問最大のポイントは「円に内接する直角三角形の斜辺は直径となる」という図形的性質を見抜くことである。これにより、3点間の距離を直接計算するのではなく、偏角の条件(点 $\mathrm{P}$ と点 $\mathrm{R}$ が原点対称など)に帰着させることができ、計算量が大幅に削減される。 直角二等辺三角形であるためのもう一つの条件も、半円周の中点という位置関係から容易に偏角の立式が可能である。
答え
$$ (m, t) = \left(4, \frac{\pi}{6}\right), \left(4, \frac{\pi}{2}\right), \left(4, \frac{5\pi}{6}\right), \left(4, \frac{7\pi}{6}\right), \left(4, \frac{3\pi}{2}\right), \left(4, \frac{11\pi}{6}\right), \left(8, \frac{\pi}{2}\right), \left(8, \frac{3\pi}{2}\right) $$
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