九州大学 2015年 理系 第3問 解説

方針・初手
空間図形とその影に関する問題は、適切な平面で切断して2次元に帰着させることが基本である。 本問の太陽光線はベクトル $(0, \sqrt{3}, -1)$ に平行であり、$x$ 成分が $0$ である。これは光線が $yz$ 平面と平行に進むことを意味している。したがって、$yz$ 平面に平行な平面、すなわち $x=k$($-1 < k < 1$)で立体全体を切断すれば、光線は常にその切断面上を進むことになり、各断面での2次元問題として処理できる。
解法1
(1)
平面 $x=k$ ($-1 < k < 1$)で空間を切断する。 半球 $x^2 + y^2 + z^2 \le 1$ ($z \ge 0$) の切り口は、方程式 $$y^2 + z^2 \le 1 - k^2 \quad (z \ge 0)$$ で表される。ここで $r = \sqrt{1-k^2}$ とおくと、切り口は $yz$ 平面上の半径 $r$ の半円である。
光線の方向ベクトルは $(0, \sqrt{3}, -1)$ であるから、切断面 $x=k$ 上において光線は傾き $-\frac{1}{\sqrt{3}}$ の直線として進む。 光が当たらない部分(影)の境界は、この半円に接し、方向ベクトル $(0, \sqrt{3}, -1)$ をもつ直線である。 半円 $y^2 + z^2 \le r^2$ ($z \ge 0$) に対する傾き $-\frac{1}{\sqrt{3}}$ の接線を求める。 接点を $(y_0, z_0)$ ($y_0^2 + z_0^2 = r^2, z_0 \ge 0$)とすると、接線の方程式は $y_0 y + z_0 z = r^2$ となる。 この接線の傾きは $-\frac{y_0}{z_0}$ であるから、
$$-\frac{y_0}{z_0} = -\frac{1}{\sqrt{3}} \iff z_0 = \sqrt{3}y_0$$
これを $y_0^2 + z_0^2 = r^2$ に代入して $4y_0^2 = r^2$ を得る。 $z_0 \ge 0$ より $y_0 \ge 0$ であるため、接点の座標は $(y_0, z_0) = \left(\frac{r}{2}, \frac{\sqrt{3}r}{2}\right)$ となる。 よって、接線の方程式は
$$\frac{r}{2} y + \frac{\sqrt{3}r}{2} z = r^2 \iff y + \sqrt{3}z = 2r$$
この接線が $xy$ 平面 ($z=0$) と交わる点の $y$ 座標は $y = 2r = 2\sqrt{1-k^2}$ である。 光は半球によって遮られるため、影は半球から見て光線の進行方向($y$ 軸の正の方向)にできる。 $z=0$ における球の境界は $y = r = \sqrt{1-k^2}$ であり、求めるのは「球の外で」光が当たらない部分であるため、球の内部および境界は除く。 したがって、求める $y$ 座標の範囲は以下のようになる。
$$\sqrt{1-k^2} < y \le 2\sqrt{1-k^2}$$
(2)
求める面積を $S$ とする。(1) の結果から、各 $x=k$ ($-1 < k < 1$)において、影となる線分の長さは
$$2\sqrt{1-k^2} - \sqrt{1-k^2} = \sqrt{1-k^2}$$
である。これを $-1 < k < 1$ の範囲で積分して面積を求める。
$$S = \int_{-1}^{1} \sqrt{1-k^2} \, dk$$
この定積分は、半径 $1$ の半円の面積を表している。したがって、
$$S = \frac{1}{2} \cdot \pi \cdot 1^2 = \frac{\pi}{2}$$
(3)
平面 $x=k$ 上における、球の外で光が当たらない部分の断面積を $S(k)$ とおく。 切断面において、光が当たらない部分は以下の3つの境界線で囲まれた領域である。
- 上側の境界:光線の接線 $y = 2r - \sqrt{3}z$
- 左側の境界:半円弧 $y = \sqrt{r^2 - z^2}$
- 下側の境界:$z=0$ 上の線分 $\sqrt{1-k^2} \le y \le 2\sqrt{1-k^2}$
$z$ 軸方向に積分して $S(k)$ を求める。$z$ の取りうる範囲は、接点の $z$ 座標から $0$ まで、すなわち $0 \le z \le \frac{\sqrt{3}r}{2}$ である。
$$S(k) = \int_{0}^{\frac{\sqrt{3}r}{2}} \left\{ (2r - \sqrt{3}z) - \sqrt{r^2 - z^2} \right\} \, dz$$
積分を2つに分けて計算する。前半部分は以下のようになる。
$$\int_{0}^{\frac{\sqrt{3}r}{2}} (2r - \sqrt{3}z) \, dz = \left[ 2rz - \frac{\sqrt{3}}{2}z^2 \right]_{0}^{\frac{\sqrt{3}r}{2}} = 2r \left( \frac{\sqrt{3}r}{2} \right) - \frac{\sqrt{3}}{2} \left( \frac{3r^2}{4} \right) = \sqrt{3}r^2 - \frac{3\sqrt{3}}{8}r^2 = \frac{5\sqrt{3}}{8}r^2$$
後半部分は、定積分 $I = \int_{0}^{\frac{\sqrt{3}r}{2}} \sqrt{r^2 - z^2} \, dz$ である。 これは $yz$ 平面上の円 $y^2 + z^2 \le r^2$ のうち、$0 \le z \le \frac{\sqrt{3}r}{2}, y \ge 0$ の部分の面積に等しい。図形的に考えると、中心角 $\frac{\pi}{3}$ の扇形と直角三角形の面積の和になる。
$$I = \frac{1}{2} r^2 \frac{\pi}{3} + \frac{1}{2} \cdot \frac{r}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}r}{2} = \frac{\pi}{6}r^2 + \frac{\sqrt{3}}{8}r^2$$
これらを合わせて、断面積 $S(k)$ は
$$S(k) = \frac{5\sqrt{3}}{8}r^2 - \left( \frac{\pi}{6}r^2 + \frac{\sqrt{3}}{8}r^2 \right) = \left( \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\pi}{6} \right) r^2 = \left( \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\pi}{6} \right) (1 - k^2)$$
求める体積 $V$ は、$S(k)$ を $-1 < k < 1$ で積分したものである。
$$V = \int_{-1}^{1} S(k) \, dk = \left( \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\pi}{6} \right) \int_{-1}^{1} (1 - k^2) \, dk$$
ここで、定積分の部分は
$$\int_{-1}^{1} (1 - k^2) \, dk = \left[ k - \frac{k^3}{3} \right]_{-1}^{1} = 2 \left( 1 - \frac{1}{3} \right) = \frac{4}{3}$$
となるため、求める体積は
$$V = \frac{4}{3} \left( \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\pi}{6} \right) = \frac{2\sqrt{3}}{3} - \frac{2\pi}{9}$$
解説
光線が作る影の面積や体積を求める典型的な空間図形の問題である。 光線の方向ベクトルが $(0, \sqrt{3}, -1)$ であり、$x$ 成分が $0$ であることに着目できたかが最大のポイントとなる。これにより、$x=k$ という平面で切断しても光線がその平面上から外れず、単なる2次元の円と接線の問題へと容易に次元を落とすことができる。 (3) の断面積の計算においては、円弧を含む積分の処理が求められる。愚直に置換積分を行うことも可能だが、図形的に扇形と三角形に分割して面積を求める方が計算ミスを防ぎやすい。
答え
(1) $\sqrt{1-k^2} < y \le 2\sqrt{1-k^2}$ (2) $\frac{\pi}{2}$ (3) $\frac{2\sqrt{3}}{3} - \frac{2\pi}{9}$
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