九州大学 2015年 理系 第4問 解説

方針・初手
袋の中の玉の総数は常に3個であるため、「袋の中の赤玉の個数」によって状態を分類し、それぞれの状態間の遷移確率を整理する。また、1回の操作で赤玉の個数は必ず1増減することに着目し、操作回数と赤玉の個数の偶奇性(パリティ)を利用して見通しを立てる。
解法1
袋の中の赤玉の個数が $k$ 個($k=0, 1, 2, 3$)である状態を $S_k$ と表す。玉の総数は常に3個なので、このとき青玉は $3-k$ 個である。 条件より、硬貨をもらうのは状態が $S_0$ になったときである。
初期状態(0回目の操作前)は赤玉2個、青玉1個であるから、状態は $S_2$ である。 各状態から1回の操作によって別の状態へ遷移する確率は以下のようになる。
- $S_3$ から:必ず赤玉を取り出すため、確率 $1$ で $S_2$ に遷移する。
- $S_2$ から:確率 $\frac{2}{3}$ で赤玉を取り出して $S_1$ に遷移し、確率 $\frac{1}{3}$ で青玉を取り出して $S_3$ に遷移する。
- $S_1$ から:確率 $\frac{1}{3}$ で赤玉を取り出して $S_0$ に遷移し、確率 $\frac{2}{3}$ で青玉を取り出して $S_2$ に遷移する。
- $S_0$ から:必ず青玉を取り出すため、確率 $1$ で $S_1$ に遷移する。
(1)
2回目の操作で硬貨をもらう、すなわち2回目の操作後に状態が $S_0$ になるのは、初期状態 $S_2$ から1回目に $S_1$ を経由して $S_0$ に遷移する場合のみである。 よって、求める確率は
$$ \frac{2}{3} \times \frac{1}{3} = \frac{2}{9} $$
(2)
1回の操作において、赤玉を取り出せば代わりに青玉を入れるので赤玉は1個減り、青玉を取り出せば代わりに赤玉を入れるので赤玉は1個増える。 いずれの場合も、1回の操作の前後で赤玉の個数の偶奇は必ず入れ替わる。
初期状態における赤玉の個数は2(偶数)であるから、$n$ 回目の操作後の赤玉の個数は、$n$ が奇数のときは奇数となり、$n$ が偶数のときは偶数となる。 硬貨をもらうのは赤玉の個数が0(偶数)になるときであるから、奇数回目の操作後に赤玉が0個になることはない。 したがって、奇数回目の操作で硬貨をもらうことはない。(証明終)
(3)
(2)の議論から、硬貨をもらう(状態が $S_0$ になる)のは偶数回目の操作後のみである。 また、偶数回目の操作後、状態は必ず $S_0$ または $S_2$ のいずれかになる。
状態 $S_2$ から出発して2回の操作を行い、一度も $S_0$ にならずに再び $S_2$ に戻る確率を $p$ とする。 このときの遷移は $S_2 \to S_1 \to S_2$ または $S_2 \to S_3 \to S_2$ であるから、
$$ p = \frac{2}{3} \times \frac{2}{3} + \frac{1}{3} \times 1 = \frac{7}{9} $$
である。 8回目の操作ではじめて硬貨をもらうのは、2回目、4回目、6回目の操作後にはいずれも状態が $S_2$ であり、そこから7回目、8回目の操作で $S_2 \to S_1 \to S_0$ と遷移する場合である。 よって、求める確率は
$$ p^3 \times \left( \frac{2}{3} \times \frac{1}{3} \right) = \left( \frac{7}{9} \right)^3 \times \frac{2}{9} = \frac{686}{6561} $$
(4)
8回の操作でもらう硬貨の総数がちょうど1枚になるのは、2回目、4回目、6回目、8回目のいずれか1回のみ状態が $S_0$ になる場合である。 $2k$ 回目($k=1, 2, 3, 4$)の操作ではじめて $S_0$ になり、その後の $8-2k$ 回の操作で一度も $S_0$ にならない確率を $P_k$ とする。 求める確率は $P_1 + P_2 + P_3 + P_4$ である。
(i) $k=4$(8回目のみ)の場合
(3)より、8回目にはじめて $S_0$ になる確率そのものであるから、
$$ P_4 = \frac{686}{6561} $$
(ii) $k=1, 2, 3$ の場合
$2k$ 回目にはじめて $S_0$ になる確率は $p^{k-1} \times \frac{2}{9}$ である。 $S_0$ になった直後の2回の操作による遷移は、$S_0 \to S_1 \to S_0$(確率 $1 \times \frac{1}{3} = \frac{1}{3}$)と $S_0 \to S_1 \to S_2$(確率 $1 \times \frac{2}{3} = \frac{2}{3}$)のいずれかである。
以降、一度も $S_0$ にならないためには、まず $S_0$ から2回の操作で $S_2$ に遷移し、残りの操作では2回ごとに $S_2 \to S_2$ の遷移を繰り返せばよい。 $2k$ 回目以降に残された操作回数は $8-2k$ 回であり、これは $2(4-k)$ 回である。 よって、その後の $8-2k$ 回の操作で一度も $S_0$ にならない確率は、$\frac{2}{3} \times p^{(4-k)-1} = \frac{2}{3} p^{3-k}$ となる。 したがって、
$$ \begin{aligned} P_k &= \left( p^{k-1} \times \frac{2}{9} \right) \times \left( \frac{2}{3} p^{3-k} \right) \\ &= \frac{4}{27} p^2 \\ &= \frac{4}{27} \left( \frac{7}{9} \right)^2 \\ &= \frac{4}{27} \times \frac{49}{81} \\ &= \frac{196}{2187} \end{aligned} $$
これは $k$ の値によらず一定である。 以上より、求める確率は、
$$ \begin{aligned} P_1 + P_2 + P_3 + P_4 &= 3 \times \frac{196}{2187} + \frac{686}{6561} \\ &= \frac{1764}{6561} + \frac{686}{6561} \\ &= \frac{2450}{6561} \end{aligned} $$
解説
- 状態遷移確率(マルコフ連鎖)の典型問題である。確率変数を「赤玉の個数」という明確な状態に落とし込み、遷移図を頭に描いて計算していくアプローチが基本となる。
- (2) のように、「1回の操作で特定の量が必ず $\pm 1$ される」設定では、偶奇性(パリティ)に着目するのが定石である。これにより、調べるべき状態やタイミングを半分に絞ることができる。
- (4) では、「ちょうど1回」という条件を「どのタイミングでその1回が起こるか」で場合分けして考える。状態0から状態0への戻り方に注意して独立した事象の確率を掛け合わせる。$k=1, 2, 3$ の確率が等しくなるのは、順序が異なるだけで全体の遷移の内訳($S_2 \to S_0$ の突入、$S_0 \to S_2$ の脱出、$S_2 \to S_2$ のループ)が一致するからである。
答え
(1) $\frac{2}{9}$ (2) (解説参照) (3) $\frac{686}{6561}$ (4) $\frac{2450}{6561}$
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