名古屋大学 1964年 文系 第2問 解説

方針・初手
同じ大きさの2つの円(半径を $R$ とする)と、点 $A$ を中心とする円が接する条件を幾何学的に整理する。 2つの円が接するとき、その接点は中心同士を結ぶ直線上にある。この性質から、接点 $P, Q$ と点 $A$ の位置関係を明らかにし、$AP, AQ$ がそれぞれの円の直径となることを見抜くのが第一歩である。 これにより、直径に対する円周角が $90^\circ$ となる性質を用いて、点 $P, B, Q$ が一直線上にあることを導くことができる。弧の長さや面積は、共通の中心角を設定し、扇形や弓形の公式を用いて立式していく。
解法1
同じ大きさの2円をそれぞれ円 $O_1$, 円 $O_2$ とし、その半径を $R$ とする。 点 $A$ は円 $O_1$, 円 $O_2$ の交点であるから、点 $A$ は両方の円周上にある。 点 $A$ を中心とする円(これを円 $A$ とする)が円 $O_1$ に接するとき、その接点 $P$ は円 $A$ の中心 $A$ と円 $O_1$ の中心を結ぶ直線上にある。点 $A$ 自身が円 $O_1$ 上にあるため、直線 $AP$ は円 $O_1$ の中心を通る。すなわち、線分 $AP$ は円 $O_1$ の直径である。 全く同様の理由により、線分 $AQ$ は円 $O_2$ の直径である。 したがって、円 $A$ の半径は $2R$ となる。
(i)
線分 $AP$, $AQ$ はそれぞれ円 $O_1$, $O_2$ の直径であるから、直径に対する円周角は $90^\circ$ となる。 円 $O_1$ において、弦 $AB$ に対する円周角を考えると、
$$ \angle PBA = 90^\circ $$
である。同様に、円 $O_2$ において、
$$ \angle QBA = 90^\circ $$
である。ゆえに、
$$ \angle PBQ = \angle PBA + \angle QBA = 180^\circ $$
となり、3点 $P, B, Q$ は一直線上にある。
ここで、$\angle PAB = \alpha$, $\angle QAB = \beta$ とおく。 $\angle PAQ = \alpha + \beta$ である。
円 $A$ の半径は $2R$ であるから、弧 $PQ$ の長さは、
$$ \overset{\frown}{PQ} = 2R(\alpha + \beta) $$
となる。 一方、円 $O_1$ において、弧 $PB$ に対する中心角は、円周角 $\angle PAB$ の2倍であるから $2\alpha$ となる。 したがって、半径 $R$ の円 $O_1$ における弧 $PB$ の長さは、
$$ \overset{\frown}{PB} = R \times 2\alpha = 2R\alpha $$
となる。同様に、円 $O_2$ において、弧 $BQ$ に対する中心角は $2\beta$ となるので、弧 $BQ$ の長さは、
$$ \overset{\frown}{BQ} = R \times 2\beta = 2R\beta $$
となる。以上より、
$$ \overset{\frown}{PB} + \overset{\frown}{BQ} = 2R\alpha + 2R\beta = 2R(\alpha + \beta) = \overset{\frown}{PQ} $$
が成り立ち、題意は示された。
(ii)
円 $O_1$ と円 $O_2$ は半径が等しく、弦 $AB$ を共有している。 直角三角形 $\triangle PAB$ と $\triangle QAB$ において、斜辺 $AP = AQ = 2R$ であり、辺 $AB$ を共有しているため、$\triangle PAB \equiv \triangle QAB$ である。 したがって、$\angle PAB = \angle QAB$ となる。 ここで、$\angle PAQ = \theta$ ($0 < \theta < \pi$)とおくと、
$$ \angle PAB = \angle QAB = \frac{\theta}{2} $$
である。
まず、$A, B$ で交わる2円の共通部分の面積 $S_1$ を求める。 共通部分は、弦 $AB$ によって分割される2つの合同な弓形の和である。 円 $O_1$ において、直角三角形 $\triangle PAB$ の内角より $\angle APB = \frac{\pi}{2} - \frac{\theta}{2}$ である。 弦 $AB$ に対応する中心角は円周角 $\angle APB$ の2倍なので、$\pi - \theta$ となる。 1つの弓形の面積は、中心角 $\pi - \theta$ の扇形から二等辺三角形の面積を引いたものであるから、
$$ \frac{1}{2} R^2 (\pi - \theta) - \frac{1}{2} R^2 \sin(\pi - \theta) = \frac{1}{2} R^2 (\pi - \theta - \sin \theta) $$
となる。共通部分の面積 $S_1$ はその2倍であるから、
$$ S_1 = R^2 (\pi - \theta - \sin \theta) $$
である。
次に、斜線をほどこした部分の面積 $S_2$ を求める。 斜線部分は弧 $PQ$, 弧 $PB$, 弧 $BQ$ で囲まれた領域である。3点 $P, B, Q$ は一直線上にあるため、この面積は「円 $A$ の弦 $PQ$ と弧 $PQ$ で囲まれた弓形」の面積から、「円 $O_1$ の弦 $PB$ と弧 $PB$ で囲まれた弓形」および「円 $O_2$ の弦 $BQ$ と弧 $BQ$ で囲まれた弓形」の面積を引いたものとして計算できる。
円 $A$ における弓形 $PQ$ の面積は、半径 $2R$、中心角 $\theta$ を用いて、
$$ \frac{1}{2} (2R)^2 \theta - \frac{1}{2} (2R)^2 \sin \theta = 2R^2(\theta - \sin \theta) $$
となる。 円 $O_1$ における弓形 $PB$ について、中心角は円周角 $\angle PAB = \frac{\theta}{2}$ の2倍で $\theta$ である。 したがって、弓形 $PB$ の面積は、
$$ \frac{1}{2} R^2 \theta - \frac{1}{2} R^2 \sin \theta = \frac{1}{2} R^2 (\theta - \sin \theta) $$
となる。弓形 $BQ$ の面積も同様に $\frac{1}{2} R^2 (\theta - \sin \theta)$ である。 よって、斜線部分の面積 $S_2$ は、
$$ \begin{aligned} S_2 &= 2R^2(\theta - \sin \theta) - 2 \times \frac{1}{2} R^2 (\theta - \sin \theta) \\ &= R^2(\theta - \sin \theta) \end{aligned} $$
となる。
条件より $S_1 = S_2$ であるから、
$$ R^2 (\pi - \theta - \sin \theta) = R^2(\theta - \sin \theta) $$
が成り立つ。$R \neq 0$ より両辺を $R^2$ で割り、整理すると、
$$ \begin{aligned} \pi - \theta - \sin \theta &= \theta - \sin \theta \\ \pi - \theta &= \theta \\ 2\theta &= \pi \\ \theta &= \frac{\pi}{2} \end{aligned} $$
となる。したがって、求める角の大きさは $\frac{\pi}{2}$ (または $90^\circ$)である。
解説
2つの円が接するという条件が与えられたとき、接点とそれぞれの円の中心が一直線上に並ぶという幾何学の基本性質を利用できるかが最初の関門である。本問ではこれにより、接点 $P, Q$ が直径の端点であることが確定し、以降の議論が見通しよく進む。
また、面積を求める (ii) では、境界となる弧と弦の関係を整理し、求めたい領域がどの図形の足し引きで表現できるかを正しく把握することが重要である。点 $P, B, Q$ が一直線上にあるという (i) の結果が、複雑な領域の面積を単純な弓形の差として計算するための決定的な根拠となっている。
答え
(i) 略(解法に記載の通り) (ii) $\angle PAQ = \frac{\pi}{2}$ (または $90^\circ$)
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