名古屋大学 1964年 文系 第3問 解説

方針・初手
定積分で定義された関数 $F(t)$ の最大値と最小値を与える $t$ の値を求める問題である。 被積分関数 $f(x) = 2-x^2$ が簡単な多項式であるため、直接定積分を計算して $F(t)$ を $t$ の式で表す方針が最も簡明である。 別解として、積分区間の端点が変数 $t$ を含むことから、微積分学の基本定理を用いて $F(t)$ を微分し、導関数から増減を調べる方針も考えられる。
解法1
$F(t)$ を具体的に計算する。
$$ F(t) = \int_t^{t+2} (2 - x^2) dx $$
$$ = \left[ 2x - \frac{x^3}{3} \right]_t^{t+2} $$
$$ = \left\{ 2(t+2) - \frac{(t+2)^3}{3} \right\} - \left( 2t - \frac{t^3}{3} \right) $$
$$ = 4 - \frac{1}{3} \{ (t^3 + 6t^2 + 12t + 8) - t^3 \} $$
$$ = 4 - \frac{1}{3} (6t^2 + 12t + 8) $$
$$ = -2t^2 - 4t + \frac{4}{3} $$
得られた $t$ の2次式を平方完成する。
$$ F(t) = -2(t^2 + 2t) + \frac{4}{3} $$
$$ = -2(t+1)^2 + 2 + \frac{4}{3} $$
$$ = -2(t+1)^2 + \frac{10}{3} $$
$F(t)$ は $t = -1$ を頂点とする上に凸の放物線を表す。 したがって、$F(t)$ は $t = -1$ で最大となる。 また、$t$ の変域に制限はないため、$F(t)$ はいくらでも小さな値をとることができ、最小値は存在しない。
解法2
$F(t)$ を $t$ について微分し、増減を調べる。 微積分学の基本定理より、
$$ F'(t) = \frac{d}{dt} \int_t^{t+2} f(x) dx = f(t+2) - f(t) $$
$f(x) = 2 - x^2$ であるから、
$$ F'(t) = \{ 2 - (t+2)^2 \} - (2 - t^2) $$
$$ = - (t^2 + 4t + 4) + t^2 $$
$$ = -4t - 4 $$
$$ = -4(t+1) $$
$F'(t) = 0$ とすると $t = -1$ である。 $F(t)$ の増減表は以下のようになる。
| $t$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|
| $F'(t)$ | $+$ | $0$ | $-$ |
| $F(t)$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
増減表より、$F(t)$ は $t = -1$ で極大かつ最大となる。 また、$F(t)$ の式は $t$ の3次以上の項を含まず、最高次の項の係数が負の2次式になることが被積分関数からわかるため、$\lim_{t \to \pm\infty} F(t) = -\infty$ である。 したがって、最小値は存在しない。
解説
定積分で表された関数の最大・最小問題の典型である。 被積分関数が具体的に与えられ、かつ容易に積分できる関数の場合は、解法1のように実際に積分を実行して関数の正体を明らかにするのが最も確実である。結果として2次関数の最大・最小問題に帰着されるため、最小値が存在しないこともグラフの形状から直ちに判断できる。
一方、解法2の「積分区間に変数を含む関数を微分する」という処理は、被積分関数が複雑で直接積分できない場合や、関数の概形を素早く知りたい場合に強力な手法となる。ただし、この手法で最小値が存在しないことを厳密に述べるには、端点における極限($t \to \pm\infty$)の振る舞いについて言及する必要がある点に注意したい。
答え
$t = -1$ に対して最大となる。最小となる $t$ の値は存在しない。
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