名古屋大学 1973年 文系 第1問 解説

方針・初手
複素数 $z$ に関する不等式が常に成り立つための条件を求める問題である。$|z|^2=z\bar{z}$ であることを利用して、与えられた不等式の左辺を $|z+\alpha|^2$ のような形(平方完成の複素数版)に変形する方針と、$z$ や $a$ を実部と虚部に分けて実数の絶対不等式の問題に帰着させる方針の2つが考えられる。
解法1
与えられた不等式は、$|z|^2=z\bar{z}$ より以下のように変形できる。
$$ z\bar{z} + az + \bar{a}\bar{z} + 1 \geqq 0 $$
両辺に $|a|^2 = a\bar{a}$ を加えて式を整理する。
$$ z\bar{z} + az + \bar{a}\bar{z} + a\bar{a} \geqq |a|^2 - 1 $$
左辺を因数分解する。
$$ (z + \bar{a})(\bar{z} + a) \geqq |a|^2 - 1 $$
ここで、$\bar{z} + a = \overline{z + \bar{a}}$ であり、ある複素数 $w$ に対して $w\bar{w} = |w|^2$ が成り立つことを用いると、
$$ |z + \bar{a}|^2 \geqq |a|^2 - 1 $$
この不等式がすべての複素数 $z$ に対して成り立つような複素数 $a$ の条件を求める。
$w = z + \bar{a}$ とおくと、$z$ が複素数全体を動くとき、$w$ も複素数全体を動く。 したがって、$|w|^2$ は $0$ 以上のすべての実数値をとる。
すべての $0$ 以上の実数 $|w|^2$ に対して $|w|^2 \geqq |a|^2 - 1$ が常に成り立つための必要十分条件は、右辺が $0$ 以下となることである。
$$ |a|^2 - 1 \leqq 0 $$
すなわち、
$$ |a|^2 \leqq 1 $$
$|a| \geqq 0$ より、
$$ |a| \leqq 1 $$
これは、複素数平面上において原点を中心とする半径 $1$ の円の周および内部を表す。
解法2
$z = x + yi$、$a = p + qi$($x, y, p, q$ は実数)とおく。
与えられた不等式 $|z|^2 + az + \bar{a}\bar{z} + 1 \geqq 0$ の左辺の各項は次のように表される。
$$ |z|^2 = x^2 + y^2 $$
$$ az = (p + qi)(x + yi) = (px - qy) + (py + qx)i $$
$$ \bar{a}\bar{z} = \overline{az} = (px - qy) - (py + qx)i $$
これらを不等式に代入すると、
$$ x^2 + y^2 + (px - qy) + (py + qx)i + (px - qy) - (py + qx)i + 1 \geqq 0 $$
虚部が打ち消し合い、整理すると以下のようになる。
$$ x^2 + y^2 + 2px - 2qy + 1 \geqq 0 $$
$x$ と $y$ についてそれぞれ平方完成を行う。
$$ (x + p)^2 - p^2 + (y - q)^2 - q^2 + 1 \geqq 0 $$
$$ (x + p)^2 + (y - q)^2 \geqq p^2 + q^2 - 1 $$
この不等式がすべての複素数 $z$、すなわちすべての実数 $x, y$ に対して成り立つための条件を求める。
$x, y$ がすべての実数値をとるとき、左辺の $(x + p)^2 + (y - q)^2$ は最小値 $0$ をとる($x = -p$ かつ $y = q$ のとき)。
したがって、常に不等式が成り立つための必要十分条件は、右辺が左辺の最小値 $0$ 以下になることである。
$$ p^2 + q^2 - 1 \leqq 0 $$
$$ p^2 + q^2 \leqq 1 $$
$a = p + qi$ より $|a|^2 = p^2 + q^2$ であるから、
$$ |a|^2 \leqq 1 $$
よって、
$$ |a| \leqq 1 $$
これは、複素数平面上において原点を中心とする半径 $1$ の円の周および内部を表す。
解説
複素数平面における不等式の扱い方を問う基本問題である。
解法1で用いた、$z\bar{z} + \alpha\bar{z} + \bar{\alpha}z$ という形を見たら、両辺に $|\alpha|^2$ を補って $(z+\alpha)(\bar{z}+\bar{\alpha}) - \alpha\bar{\alpha} = |z+\alpha|^2 - |\alpha|^2$ のように変形し $| \cdot |^2$ の形を作る操作は、円の方程式の決定などでも頻繁に用いる定石である。
解法2のように、複素数の問題で直接的な変形が思いつかない場合や確証が持てない場合は、$z=x+yi$ とおいて実部と虚部に分け、実数の問題(今回はすべての実数についての絶対不等式)に帰着させる手法が極めて有効かつ確実な手段となる。
答え
求める集合は、不等式 $|a| \leqq 1$ を満たす複素数 $a$ の集合である。
図示する領域は、複素数平面上において原点 $0$ を中心とする半径 $1$ の円の周および内部となる。(境界線を含む)
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