名古屋大学 2019年 文系 第3問 解説

方針・初手
- 2次方程式が整数解をもつという条件から、実際に整数解 $x=k$ を方程式に代入し、係数 $a, b, c$ が満たすべき関係式を導くのが基本方針である。
- サイコロの目は $1$ から $6$ までの整数という強い制限があるため、和や積の範囲、あるいは約数・倍数の関係から候補を絞り込むことができる。
- (2) については、2つの解がともに整数であることから、解と係数の関係を利用して解の候補を絞り込むと見通しがよい。
解法1
(1)
方程式 $x^2 - bx + c = 0$ が整数解 $x=k$ をもつとすると、代入して成り立つので以下の式を得る。
$$ k^2 - bk + c = 0 \iff c = k(b - k) $$
$c \ge 1$ であり、$k > 0$ かつ $b - k > 0$ であるから、$0 < k < b \le 6$ となる。 したがって、整数解 $k$ は $1, 2, 3, 4, 5$ のいずれかである。
(i)
$k=1$ のとき $c = b - 1$ となる。これを満たす $(b, c)$ の組は、以下の $5$ 通りである。 $(b, c) = (2, 1), (3, 2), (4, 3), (5, 4), (6, 5)$
(ii)
$k=2$ のとき $c = 2(b - 2)$ となる。$b > 2$ より $b=3, 4, 5, 6$ について調べる。
- $b=3$ のとき $c=2$ となり、$(3, 2)$ は (i) と重複する。
- $b=4$ のとき $c=4$ となり、$(4, 4)$ を得る。
- $b=5$ のとき $c=6$ となり、$(5, 6)$ を得る。
- $b=6$ のとき $c=8$ となり、$c \le 6$ を満たさない。 よって、新たに加わる組は $(4, 4), (5, 6)$ の $2$ 通りである。
(iii)
$k=3$ のとき $c = 3(b - 3)$ となる。$b > 3$ より $b=4, 5, 6$ について調べる。
- $b=4$ のとき $c=3$ となり、$(4, 3)$ は (i) と重複。
- $b=5$ のとき $c=6$ となり、$(5, 6)$ は (ii) と重複。
- $b=6$ のとき $c=9 > 6$ となり不適。 よって、新たな組はない。
(iv)
$k=4$ のとき $c = 4(b - 4)$ となり、$b=5$ のとき $c=4$ となるが、$(5, 4)$ は (i) と重複する。
(v)
$k=5$ のとき $c = 5(b - 5)$ となり、$b=6$ のとき $c=5$ となるが、$(6, 5)$ は (i) と重複する。
以上より、条件を満たす $(b, c)$ の組は $5 + 2 = 7$ 通りである。 $a$ は $1$ から $6$ までの任意の目でよいので、条件を満たす $(a, b, c)$ の組は $6 \times 7 = 42$ 通りとなる。 求める確率は、全事象が $6^3 = 216$ 通りであるから、以下のようになる。
$$ \frac{42}{216} = \frac{7}{36} $$
(2)
方程式 $ax^2 - bx + c = 0$ の2つの解を $\alpha, \beta$ とする。これらはともに整数であり、$\alpha \le \beta$ としても一般性を失わない。 解と係数の関係より、以下の2式が成り立つ。
$$ \alpha + \beta = \frac{b}{a} $$
$$ \alpha \beta = \frac{c}{a} $$
$a, b, c$ は正の整数であるから、$\alpha + \beta > 0$ かつ $\alpha \beta > 0$ であり、$\alpha, \beta$ はともに正の整数である。 また、$c \le 6, a \ge 1$ であるから、$\alpha \beta \le 6$ を満たす。 積が $6$ 以下となる正整数の組 $(\alpha, \beta)$ について調べる。
- $(\alpha, \beta) = (1, 1)$ のとき:$\alpha+\beta=2, \alpha\beta=1$ より $b=2a, c=a$ これを満たすのは $(a, b, c) = (1, 2, 1), (2, 4, 2), (3, 6, 3)$ の $3$ 通り。
- $(\alpha, \beta) = (1, 2)$ のとき:$\alpha+\beta=3, \alpha\beta=2$ より $b=3a, c=2a$ これを満たすのは $(a, b, c) = (1, 3, 2), (2, 6, 4)$ の $2$ 通り。
- $(\alpha, \beta) = (1, 3)$ のとき:$\alpha+\beta=4, \alpha\beta=3$ より $b=4a, c=3a$ これを満たすのは $(a, b, c) = (1, 4, 3)$ の $1$ 通り。
- $(\alpha, \beta) = (1, 4)$ のとき:$\alpha+\beta=5, \alpha\beta=4$ より $b=5a, c=4a$ これを満たすのは $(a, b, c) = (1, 5, 4)$ の $1$ 通り。
- $(\alpha, \beta) = (1, 5)$ のとき:$\alpha+\beta=6, \alpha\beta=5$ より $b=6a, c=5a$ これを満たすのは $(a, b, c) = (1, 6, 5)$ の $1$ 通り。
- $(\alpha, \beta) = (1, 6)$ のとき:$\alpha+\beta=7$ より $b=7a$ となるが、$b \le 6$ を満たさないため不適。
- $(\alpha, \beta) = (2, 2)$ のとき:$\alpha+\beta=4, \alpha\beta=4$ より $b=4a, c=4a$ これを満たすのは $(a, b, c) = (1, 4, 4)$ の $1$ 通り。
- $(\alpha, \beta) = (2, 3)$ のとき:$\alpha+\beta=5, \alpha\beta=6$ より $b=5a, c=6a$ これを満たすのは $(a, b, c) = (1, 5, 6)$ の $1$ 通り。
- $\alpha \ge 2, \beta \ge 4$ のとき:$\alpha\beta \ge 8$ より $c = \alpha\beta a \ge 8a \ge 8$ となり不適。
以上より、すべての解が整数となる組は $3+2+1+1+1+1+1=10$ 通りである。 よって求める確率は以下のようになる。
$$ \frac{10}{216} = \frac{5}{108} $$
(3)
方程式 $ax^2 - bx + c = 0$ が少なくとも1つの整数解 $x=k$ をもつとする。 代入して $c$ について整理すると、以下の関係式を得る。
$$ c = k(b - ak) $$
$c \ge 1$ かつ $k \ge 1$ より $b - ak > 0$ すなわち $ak < b \le 6$ であるから、$k$ は $1, 2, 3, 4, 5$ のいずれかである。
(i)
$k=1$ のとき $c = b - a \iff b = a + c$
- $a=1$ のとき:$c=1, \dots, 5$ に対して $b=2, \dots, 6$ となり $5$ 通り。
- $a=2$ のとき:$c=1, \dots, 4$ に対して $b=3, \dots, 6$ となり $4$ 通り。
- $a=3$ のとき:$c=1, 2, 3$ に対して $b=4, 5, 6$ となり $3$ 通り。
- $a=4$ のとき:$c=1, 2$ に対して $b=5, 6$ となり $2$ 通り。
- $a=5$ のとき:$c=1$ に対して $b=6$ となり $1$ 通り。 計 $15$ 通りの組が得られる。
(ii)
$k=2$ のとき $c = 2(b - 2a)$ $c > 0$ より $b > 2a$。
- $a=1$ のとき:$b=3, 4, 5, 6$ について順に $c=2, 4, 6, 8$ となる。$c \le 6$ より $(1, 3, 2), (1, 4, 4), (1, 5, 6)$ を得る。 このうち $(1, 3, 2)$ は $b=a+c$ を満たすため (i) で計上済みである。 新たに加わるのは $(1, 4, 4), (1, 5, 6)$ の $2$ 通り。
- $a=2$ のとき:$b=5, 6$ について順に $c=2, 4$ となり、$(2, 5, 2), (2, 6, 4)$ を得る。 このうち $(2, 6, 4)$ は $b=a+c$ を満たすため (i) で計上済みである。 新たに加わるのは $(2, 5, 2)$ の $1$ 通り。
- $a \ge 3$ のとき:$b > 2a \ge 6$ となり不適。 よって、新たに加わるのは $3$ 通りである。
(iii)
$k=3$ のとき $c = 3(b - 3a)$ $c > 0$ より $b > 3a$。 $a=1$ のとき $b=4, 5, 6$ について順に $c=3, 6, 9$ となり、$(1, 4, 3), (1, 5, 6)$ を得る。 $(1, 4, 3)$ は (i) で、$(1, 5, 6)$ は (ii) で計上済みであるため、新たな組はない。
(iv)
$k=4$ のとき $c = 4(b - 4a)$ $a=1$ のとき $b=5, 6$ について順に $c=4, 8$ となり、$(1, 5, 4)$ を得る。 これは (i) で計上済みである。
(v)
$k=5$ のとき $c = 5(b - 5a)$ $a=1, b=6$ のとき $c=5$ となり $(1, 6, 5)$ を得る。 これは (i) で計上済みである。
以上より、少なくとも1つ整数解をもつ $(a, b, c)$ の組は $15 + 3 = 18$ 通りである。 よって求める確率は以下のようになる。
$$ \frac{18}{216} = \frac{1}{12} $$
解説
- 変数の範囲が $1$ から $6$ と限られている確率の問題では、方程式の解の公式の判別式を利用して不等式から絞り込む方法と、整数解を文字でおいて係数の関係式から絞り込む方法の2つが定石である。
- 今回は $x$ の解そのものが「整数である」という強い条件が与えられているため、解を代入して $c = k(b - ak)$ の形を作り、約数・倍数の関係や不等式評価に持ち込む方が、重複なく数え上げやすい。
- (3) のような「少なくとも1つ」という条件の網羅的調査では、場合分け間で重複してカウントしないよう細心の注意を払うことが重要である。
答え
(1)
$\frac{7}{36}$
(2)
$\frac{5}{108}$
(3)
$\frac{1}{12}$
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