東京工業大学 1991年 理系 第5問 解説

方針・初手
方程式が整数解をもつ条件から、その解のとり得る値を絞り込む。 方程式の左辺に整数解 $x=k$ を代入した式を整理することで、$k$ が定数項 $c$ の約数になることを利用する。サイコロの目の条件(すべて正の整数)から、解 $k$ の範囲を絞り、各 $k$ について条件を満たす $(a, b, c)$ の組を数え上げる。最後に重複して数えた組がないかを確認する。
解法1
方程式 $f(x) = x^3 - ax^2 + bx - c = 0$ が整数解 $k$ をもつとする。
$a, b, c$ はサイコロの目であるから、$1 \le a, b, c \le 6$ を満たす自然数である。 $k \le 0$ と仮定すると、$k^3 \le 0, -ak^2 \le 0, bk \le 0, -c < 0$ となるため、$f(k) \le -c < 0$ となり $f(k) = 0$ を満たさない。 したがって、整数解 $k$ は正の整数(自然数)である。
$f(k) = 0$ より $k^3 - ak^2 + bk - c = 0$ となり、これを $c$ について整理すると、
$$ c = k(k^2 - ak + b) $$
となる。$k, a, b$ は整数であるから $k^2 - ak + b$ も整数であり、$k$ は $c$ の正の約数である。 $1 \le c \le 6$ であるため、$k$ がとり得る値は $k \in \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ に限られる。
ここで、$f(k) = 0$ を $b$ について解くと、
$$ b = ak - k^2 + \frac{c}{k} $$
となる。$1 \le b \le 6$ であるから、各 $k$ についてこれを満たす $(a, c)$ の組の個数を調べる。
(i)
$k = 1$ のとき $b = a + c - 1$ となる。 $1 \le a + c - 1 \le 6$ より、 $2 \le a + c \le 7$ を満たす。 和 $a+c$ の値によって組 $(a,c)$ の個数を数えると、以下のようになる。 ・$a+c = 2$ のとき 1通り ・$a+c = 3$ のとき 2通り ・$a+c = 4$ のとき 3通り ・$a+c = 5$ のとき 4通り ・$a+c = 6$ のとき 5通り ・$a+c = 7$ のとき 6通り これらを合計して、$1+2+3+4+5+6 = 21$ 通り。
(ii)
$k = 2$ のとき $b = 2a - 4 + \frac{c}{2}$ となる。 $k$ は $c$ の約数であるから、$c$ は偶数であり $c \in \{2, 4, 6\}$ である。 ・$c = 2$ のとき、$b = 2a - 3$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 2, 3, 4$ の 3通り。 ・$c = 4$ のとき、$b = 2a - 2$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 2, 3, 4$ の 3通り。 ・$c = 6$ のとき、$b = 2a - 1$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 1, 2, 3$ の 3通り。 これらを合計して、 $3+3+3 = 9$ 通り。
(iii)
$k = 3$ のとき $b = 3a - 9 + \frac{c}{3}$ となる。 $c$ は3の倍数であるから、$c \in \{3, 6\}$ である。 ・$c = 3$ のとき、$b = 3a - 8$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 3, 4$ の 2通り。 ・$c = 6$ のとき、$b = 3a - 7$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 3, 4$ の 2通り。 これらを合計して、 $2+2 = 4$ 通り。
(iv)
$k = 4$ のとき $b = 4a - 16 + \frac{c}{4}$ となる。 $c$ は4の倍数であるから、$c = 4$ である。 ・$c = 4$ のとき、$b = 4a - 15$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 4, 5$ の 2通り。
(v)
$k = 5$ のとき $b = 5a - 25 + \frac{c}{5}$ となる。 $c$ は5の倍数であるから、$c = 5$ である。 ・$c = 5$ のとき、$b = 5a - 24$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 5, 6$ の 2通り。
(vi)
$k = 6$ のとき $b = 6a - 36 + \frac{c}{6}$ となる。 $c$ は6の倍数であるから、$c = 6$ である。 ・$c = 6$ のとき、$b = 6a - 35$。 $1 \le b \le 6$ を満たす $a$ は $a = 6$ の 1通り。
(i) から (vi) より、条件を満たす組の総和は $21 + 9 + 4 + 2 + 2 + 1 = 39$ 通りである。
次に、重複して数えられている組(複数の相異なる整数解をもつ組)がないかを確認する。 3次方程式が2つの整数解をもつとき、解と係数の関係より3つ目の解も有理数となる。最高次の係数が1の整数係数多項式であるため、有理数解をもつならばそれは整数である。したがって、方程式は3つの整数解をもつ。 それらの整数解を $\alpha, \beta, \gamma \ (\alpha \le \beta \le \gamma)$ とおくと、解と係数の関係より、
$$ c = \alpha\beta\gamma $$
となる。解はすべて正の整数であり、$c \le 6$ であることから $\alpha\beta\gamma \le 6$ を満たす。 また、各係数についても $a = \alpha + \beta + \gamma \le 6$、$b = \alpha\beta + \beta\gamma + \gamma\alpha \le 6$ を満たす必要がある。
これを満たす整数の組 $(\alpha, \beta, \gamma)$ を調べる。 ・$(\alpha, \beta, \gamma) = (1, 1, 1)$ のとき $a = 3, b = 3, c = 1$ であり、条件を満たす。ただし、解が $k=1$ のみであるため、上記の場合分け (i) で1回だけ数えられており、重複はない。 ・$(\alpha, \beta, \gamma) = (1, 1, 2)$ のとき $a = 4, b = 5, c = 2$ であり、条件を満たす。この組は解に $k=1$ と $k=2$ を含むため、場合分け (i) と (ii) で1回ずつ、計2回数えられている。したがって1回分が重複となる。 ・$(\alpha, \beta, \gamma) = (1, 1, 3)$ のとき $b = 1\cdot1 + 1\cdot3 + 3\cdot1 = 7 > 6$ となり、条件を満たさない。 解の値をこれ以上大きくすると $b$ の値も 7 以上となるため、他に条件を満たす組は存在しない。
以上より、重複して数えられた組は $(a, b, c) = (4, 5, 2)$ の1通りのみである。 したがって、方程式が少なくとも1個の整数解をもつ $(a, b, c)$ の組の総数は、
$$ 39 - 1 = 38 \text{ (通り)} $$
サイコロを3回振ったときの目の出方は全部で $6^3 = 216$ 通りであるから、求める確率は
$$ \frac{38}{216} = \frac{19}{108} $$
となる。
解説
整数係数の方程式が整数解をもつときの必要条件を活用する典型問題である。 方程式に解 $k$ を代入した形から「定数項は解の倍数である(解は定数項の約数である)」ことを見抜くのが最大のポイントである。これにより、候補となる整数解 $k$ を有限個に絞り込むことができる。 さらに、$x \le 0$ のときは左辺が常に負となることに気づけば、$k$ を自然数に限定でき、見通しよく場合分けが進む。 最後に「少なくとも1個の」という設問の要求から、場合分けをまたいで重複して数えられた組がないかの確認を忘れないようにしたい。本解法のように「解と係数の関係」を用いると、複数の解をもつケースの洗い出しがスムーズに行える。
答え
$$ \frac{19}{108} $$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











