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名古屋大学 1964年 理系 第1問 解説

数学1/方程式不等式数学2/式と証明テーマ/場合分け
名古屋大学 1964年 理系 第1問 解説

方針・初手

無理方程式 $\sqrt{f(x)} = g(x)$ を解く基本的な方針は、両辺を2乗して根号を外すことである。ただし、安易に2乗すると同値性が崩れ、無縁解が混入する可能性があるため注意が必要である。

$$\sqrt{f(x)} = g(x) \iff f(x) = \{g(x)\}^2 \quad \text{かつ} \quad g(x) \ge 0$$

この同値変形を用いて、得られた2次方程式の解が条件 $g(x) \ge 0$ を満たすかどうかを確認しながら場合分けを行う。数式のみの処理に加えて、グラフの共有点として視覚的に捉える別解も有効である。

解法1

与えられた無理方程式は以下の条件と同値である。

$$x - a = (x - b)^2 \quad \text{かつ} \quad x - b \ge 0$$

方程式を展開して整理する。

$$x - a = x^2 - 2bx + b^2$$

$$x^2 - (2b + 1)x + b^2 + a = 0 \quad \cdots (1)$$

2次方程式 (1) が実数解をもつ条件は、判別式を $D$ とすると $D \ge 0$ である。

$$D = (2b + 1)^2 - 4(b^2 + a) = 4b - 4a + 1$$

したがって、実数解をもつためには以下の条件が必要である。

$$4b - 4a + 1 \ge 0 \iff a \le b + \frac{1}{4} \quad \cdots (2)$$

条件 (2) を満たすとき、方程式 (1) の解は解の公式より以下のようになる。

$$x = \frac{2b + 1 \pm \sqrt{4b - 4a + 1}}{2}$$

これらの解が条件 $x \ge b$ (すなわち $x - b \ge 0$)を満たすかどうかを調べる。

$$x - b = \frac{2b + 1 \pm \sqrt{4b - 4a + 1}}{2} - b = \frac{1 \pm \sqrt{4b - 4a + 1}}{2}$$

(i) 複号が $+$ の場合

$$x - b = \frac{1 + \sqrt{4b - 4a + 1}}{2}$$

根号の値は $0$ 以上であるため、

$$\frac{1 + \sqrt{4b - 4a + 1}}{2} \ge \frac{1}{2} > 0$$

となり、条件 (2) が満たされていれば常に $x \ge b$ を満たす。

(ii) 複号が $-$ の場合

$x \ge b$ となる条件は、

$$\frac{1 - \sqrt{4b - 4a + 1}}{2} \ge 0$$

$$1 \ge \sqrt{4b - 4a + 1}$$

両辺ともに非負であるから、2乗しても同値である。

$$1 \ge 4b - 4a + 1$$

$$0 \ge 4b - 4a \iff a \ge b$$

これと条件 (2) を合わせると、複号が $-$ の解が適するのは $b \le a \le b + \frac{1}{4}$ のときである。

以上の結果から、$a$ と $b$ の関係によって場合分けを行う。

・$a > b + \frac{1}{4}$ のとき (2) を満たさず、実数解は存在しない。

・$a = b + \frac{1}{4}$ のとき $4b - 4a + 1 = 0$ となり、(i) と (ii) の解は一致して $x = b + \frac{1}{2}$ を与える。

・$b \le a < b + \frac{1}{4}$ のとき (i), (ii) ともに条件を満たすため、解は2つ存在する。

・$a < b$ のとき (i) のみが条件を満たすため、解は1つ存在する。

解法2

方程式の実数解を、2つの関数 $y = \sqrt{x - a}$ と $y = x - b$ のグラフの共有点の $x$ 座標として考える。

曲線 $C: y = \sqrt{x - a}$ は、点 $(a, 0)$ を頂点とする右開きの放物線の上半分である。 直線 $l: y = x - b$ は、傾き $1$、$x$ 切片が $b$ の直線である。

曲線 $C$ と直線 $l$ が接する条件を求める。 $x - a = (x - b)^2$ すなわち $x^2 - (2b + 1)x + b^2 + a = 0$ が重解をもつことであるから、判別式 $D = 0$ より、

$$4b - 4a + 1 = 0 \iff a = b + \frac{1}{4}$$

このとき、接点の $x$ 座標は $x = \frac{2b + 1}{2} = b + \frac{1}{2}$ となり、$x \ge a$ の範囲にある。

次に、曲線 $C$ の頂点 $(a, 0)$ が直線 $l$ 上にある条件は、

$$0 = a - b \iff a = b$$

グラフの上下関係と頂点の位置に着目して場合分けを行う。

(i) $a > b + \frac{1}{4}$ のとき 曲線 $C$ は接する限界を超えて直線 $l$ よりも右下方に位置するため、共有点をもたない。

(ii) $a = b + \frac{1}{4}$ のとき 曲線 $C$ と直線 $l$ は接し、共有点は1つである。解は重解の $x = b + \frac{1}{2}$ である。

(iii) $b \le a < b + \frac{1}{4}$ のとき 曲線 $C$ の頂点 $(a, 0)$ は直線 $l$ 上またはその右下方にあり、直線と曲線は2点で交わる。解は $x = \frac{2b + 1 \pm \sqrt{4b - 4a + 1}}{2}$ の2つである。

(iv) $a < b$ のとき 曲線 $C$ の頂点 $(a, 0)$ は直線 $l$ の左上にあり、直線は $x$ 軸と交わったのちに曲線の途中と1点のみで交わる。交点の $x$ 座標は大きい方のみが該当するため、解は $x = \frac{2b + 1 + \sqrt{4b - 4a + 1}}{2}$ である。

解説

無理方程式の解法において、最も重要なのは「同値変形」を意識することである。両辺を2乗する操作は、真であったものを偽にする可能性(無縁解の混入)があるため、必ず $x - b \ge 0$ のような条件を付加しなければならない。

また、文字定数が複数含まれる問題では、数式だけの処理では場合分けのイメージが掴みづらくなることが多い。解法2のようにグラフ(視覚的アプローチ)を併用することで、場合分けの境界(接するとき、端点を通るとき)が明確になり、論理的な漏れを防ぐことができる。

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