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名古屋大学 2003年 理系 第3問 解説

数学A/確率数学B/数列テーマ/最大・最小テーマ/不等式の証明
名古屋大学 2003年 理系 第3問 解説

方針・初手

反復試行の確率の最大値を求める典型問題である。確率 $P_n(k)$ が最大となる $k$ を見つけるために、隣接する項の比 $\frac{P_n(k+1)}{P_n(k)}$ を計算し、これと $1$ との大小関係を比較して $P_n(k)$ の増減を調べる。

最大値を与える $k$ が複数ある場合の条件が指定されているため、比がちょうど $1$ になるケースに注意しながら、$n$ の値を $3$ で割った余りで場合分けをして $N(n)$ を具体的に決定する。

解法1

(1)

1回の試行で3の倍数(3または6の目)が出る確率は $\frac{1}{3}$、それ以外の目が出る確率は $\frac{2}{3}$ である。 サイコロを $n$ 回投げて、3の倍数が $k$ 回出る確率 $P_n(k)$ は、反復試行の確率の公式より以下のようになる。

$$ P_n(k) = {}_n\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{3}\right)^k \left(\frac{2}{3}\right)^{n-k} \quad (k=0, 1, \dots, n) $$

$k$ を $k+1$ に置き換えると、

$$ P_n(k+1) = {}_n\mathrm{C}_{k+1} \left(\frac{1}{3}\right)^{k+1} \left(\frac{2}{3}\right)^{n-k-1} $$

したがって、求める比は、

$$ \begin{aligned} \frac{P_n(k+1)}{P_n(k)} &= \frac{{}_n\mathrm{C}_{k+1} \left(\frac{1}{3}\right)^{k+1} \left(\frac{2}{3}\right)^{n-k-1}}{{}_n\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{3}\right)^k \left(\frac{2}{3}\right)^{n-k}} \\ &= \frac{\frac{n!}{(k+1)!(n-k-1)!}}{\frac{n!}{k!(n-k)!}} \cdot \frac{\frac{1}{3}}{\frac{2}{3}} \\ &= \frac{k!(n-k)!}{(k+1)!(n-k-1)!} \cdot \frac{1}{2} \\ &= \frac{n-k}{2(k+1)} \end{aligned} $$

(2)

(1) の結果から、$\frac{P_n(k+1)}{P_n(k)}$ と $1$ の大小関係を調べる。

$$ \frac{P_n(k+1)}{P_n(k)} \ge 1 \iff \frac{n-k}{2(k+1)} \ge 1 \iff n-k \ge 2k+2 \iff k \le \frac{n-2}{3} $$

同様に、

$$ \frac{P_n(k+1)}{P_n(k)} < 1 \iff k > \frac{n-2}{3} $$

これをもとに、$P_n(k)$ の増減を $n$ を $3$ で割った余りで場合分けして考える。

(i) $n = 3m$ ($m$ は自然数)のとき

$\frac{n-2}{3} = m - \frac{2}{3}$ であるから、 $k \le m-1$ のとき $P_n(k) < P_n(k+1)$ $k \ge m$ のとき $P_n(k) > P_n(k+1)$ となり、$P_n(k)$ は $k=m$ のときに最大となる。 したがって、$N(3m) = m$ であり、$\frac{N(n)}{n} = \frac{m}{3m} = \frac{1}{3}$ となる。

(ii) $n = 3m+1$ ($m$ は自然数)のとき (※ $n \ge 2$ より $m \ge 1$ である)

$\frac{n-2}{3} = m - \frac{1}{3}$ であるから、 $k \le m-1$ のとき $P_n(k) < P_n(k+1)$ $k \ge m$ のとき $P_n(k) > P_n(k+1)$ となり、$P_n(k)$ は $k=m$ のときに最大となる。 したがって、$N(3m+1) = m$ であり、$\frac{N(n)}{n} = \frac{m}{3m+1}$ となる。 ここで、$\frac{m}{3m+1} = \frac{1}{3} - \frac{1}{3(3m+1)}$ であり、これは $m$ が増加すると単調に増加する。 また、常に $\frac{1}{3}$ より小さい。

(iii) $n = 3m+2$ ($m$ は $0$ 以上の整数)のとき (※ $m=0$ のとき $n=2$ となり条件を満たす)

$\frac{n-2}{3} = m$ であるから、 $k \le m-1$ のとき $P_n(k) < P_n(k+1)$ $k = m$ のとき $P_n(k) = P_n(k+1)$ $k \ge m+1$ のとき $P_n(k) > P_n(k+1)$ となり、$P_n(k)$ を最大にする $k$ は $m$ と $m+1$ の2つ存在する。 条件「このような $k$ が複数あるときは、最も大きいものを $N(n)$ とする」より、$N(3m+2) = m+1$ である。 したがって、$\frac{N(n)}{n} = \frac{m+1}{3m+2} = \frac{1}{3} + \frac{1}{3(3m+2)}$ となる。 これは常に $\frac{1}{3}$ より大きい。

以上 (i)(iii) より、$\frac{N(n)}{n}$ の値の分布は以下のようになる。 ・$n=3m$ のときは $\frac{1}{3}$ ・$n=3m+1$ のときは $\frac{1}{3}$ より小さく、最小値をとるのは $m=1$ すなわち $n=4$ のとき ・$n=3m+2$ のときは常に $\frac{1}{3}$ より大きい

よって、$\frac{N(n)}{n}$ を最小にする $n$ は $4$ であり、そのときの値は $\frac{1}{4}$ である。

(3)

(2) の場合分けより、$n \to \infty$ の極限を考える。

$n=3m$ のとき

$$ \lim_{n \to \infty} \frac{N(n)}{n} = \lim_{m \to \infty} \frac{m}{3m} = \frac{1}{3} $$

$n=3m+1$ のとき

$$ \lim_{n \to \infty} \frac{N(n)}{n} = \lim_{m \to \infty} \frac{m}{3m+1} = \lim_{m \to \infty} \frac{1}{3 + \frac{1}{m}} = \frac{1}{3} $$

$n=3m+2$ のとき

$$ \lim_{n \to \infty} \frac{N(n)}{n} = \lim_{m \to \infty} \frac{m+1}{3m+2} = \lim_{m \to \infty} \frac{1 + \frac{1}{m}}{3 + \frac{2}{m}} = \frac{1}{3} $$

いずれの場合も極限値は $\frac{1}{3}$ に一致するため、求める極限は $\frac{1}{3}$ である。

解法2

((3) の別解:不等式とはさみうちの原理を利用する方法)

$N(n)$ は $P_n(k)$ を最大にする $k$ のうち最大のものである。したがって、以下の2つの不等式が同時に成り立つ。

$$ P_n(N(n)-1) \le P_n(N(n)) \quad \cdots \text{①} $$

$$ P_n(N(n)) > P_n(N(n)+1) \quad \cdots \text{②} $$

(※ $P_n(k)$ を最大にする $k$ が複数ある場合でも、最大のものを $N(n)$ としているため、その右隣である $N(n)+1$ での確率は必ず真に小さくなる)

①より、$\frac{P_n(N(n))}{P_n(N(n)-1)} \ge 1$ であるから、(1) の結果の $k$ を $N(n)-1$ と置き換えて、

$$ \frac{n-(N(n)-1)}{2N(n)} \ge 1 \implies n - N(n) + 1 \ge 2N(n) \implies 3N(n) \le n+1 $$

よって、$N(n) \le \frac{n+1}{3}$ を得る。

②より、$\frac{P_n(N(n)+1)}{P_n(N(n))} < 1$ であるから、(1) の結果の $k$ を $N(n)$ と置き換えて、

$$ \frac{n-N(n)}{2(N(n)+1)} < 1 \implies n - N(n) < 2N(n) + 2 \implies 3N(n) > n-2 $$

よって、$N(n) > \frac{n-2}{3}$ を得る。

以上をまとめると、

$$ \frac{n-2}{3} < N(n) \le \frac{n+1}{3} $$

各辺を $n$ ($n>0$) で割ると、

$$ \frac{1}{3} - \frac{2}{3n} < \frac{N(n)}{n} \le \frac{1}{3} + \frac{1}{3n} $$

ここで、$n \to \infty$ とすると、

$$ \lim_{n \to \infty} \left( \frac{1}{3} - \frac{2}{3n} \right) = \frac{1}{3}, \quad \lim_{n \to \infty} \left( \frac{1}{3} + \frac{1}{3n} \right) = \frac{1}{3} $$

であるから、はさみうちの原理より、

$$ \lim_{n \to \infty} \frac{N(n)}{n} = \frac{1}{3} $$

解説

反復試行の確率の最大値を求める手順として、隣り合う項の比 $\frac{P_n(k+1)}{P_n(k)}$ と $1$ の大小関係を調べるのは定石である。(1) で計算した比を用いて (2) で増減を判断するが、本問は「最大となる $k$ が複数ある場合は最大のものを選ぶ」という条件が付与されている点が特徴的である。そのため、$P_n(k) = P_n(k+1)$ となるケース($n$ が $3$ で割って $2$ 余る場合)を慎重に処理する必要がある。

(3) の極限については、(2) で求めた具体的な $N(n)$ の式から直接計算できるが、解法2のように最大値の定義から不等式を立て、はさみうちの原理に持ち込む手法は、確率の極限問題において非常に有効なテクニックである。

答え

(1) $$ \frac{P_n(k+1)}{P_n(k)} = \frac{n-k}{2(k+1)} $$

(2) 最小にする $n$ は $4$ そのときの値は $\frac{1}{4}$

(3) $$ \lim_{n \to \infty} \frac{N(n)}{n} = \frac{1}{3} $$

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