名古屋大学 2012年 文系 第2問 解説

方針・初手
最大値・最小値に関する確率の典型問題です。 「最大値と最小値が指定された範囲に収まる確率」から考えていくか、または具体的な事象の数を直接数え上げるかの2通りのアプローチが有効です。 (1)は単純な範囲の指定なので、条件に合うカードを引く確率を求めます。 (2)は(1)を利用する包除原理の考え方、または直接数え上げにより求めます。試行回数が3回と少ないため、どちらの方針でも容易に解くことができます。 (3)は(2)の結果を利用して、$j$ を動かして和をとります。 (4)は(3)で得られた2次関数の最大値を求める問題に帰着されます。
解法1
(1)
3回の試行で取り出したカードの最小値 $X$ が $X \geqq j$、最大値 $Y$ が $Y \leqq j+k$ となるのは、3回とも $j$ 以上 $j+k$ 以下の整数が書かれたカードを取り出すときである。 $1$ から $n$ までの整数のうち、$j$ 以上 $j+k$ 以下の整数は $(j+k) - j + 1 = k+1$ 個ある。 1回の試行でこの範囲のカードを取り出す確率は $\frac{k+1}{n}$ であるから、3回ともこの範囲のカードを取り出す確率は
$$ \left( \frac{k+1}{n} \right)^3 = \frac{(k+1)^3}{n^3} $$
(2)
$X = j$ かつ $Y = j+k$ となる事象は、3回の試行において、$j$ 以上 $j+k$ 以下のカードしか出ず、かつ $j$ と $j+k$ が少なくとも1回ずつ出る事象である。 これを直接数え上げる。3回で出るカードの組み合わせは以下の2つの場合がある。
(i) 3回とも異なるカードが出る場合
$j$ と $j+k$ が1回ずつ出て、残りの1回は $j$ より大きく $j+k$ より小さいカードが出る場合である。 その間のカードは $(j+k-1) - (j+1) + 1 = k-1$ 通りある。 これら3つのカードの出る順序は $3! = 6$ 通りであるから、この場合の数は
$$ 6(k-1) \text{ 通り} $$
(ii) 2回同じカードが出る場合
$\{j, j, j+k\}$ のように $j$ が2回、$j+k$ が1回出る場合、その順序は $\frac{3!}{2!1!} = 3$ 通り。 $\{j, j+k, j+k\}$ のように $j$ が1回、$j+k$ が2回出る場合、その順序は $\frac{3!}{1!2!} = 3$ 通り。 よって、この場合の数は
$$ 3 + 3 = 6 \text{ 通り} $$
(i)、(ii) より、$X=j$ かつ $Y=j+k$ となる事象の数は $6(k-1) + 6 = 6k$ 通りとなる。 全事象は $n^3$ 通りであり、同様に確からしいので、求める確率は
$$ \frac{6k}{n^3} $$
(3)
$Y - X = s$ となるのは、ある整数 $j$ を用いて $X = j$ かつ $Y = j+s$ となるときである。 カードに書かれた数は $1$ 以上 $n$ 以下であるから、$1 \leqq X < Y \leqq n$ より、 $1 \leqq j$ かつ $j+s \leqq n$、すなわち $1 \leqq j \leqq n-s$ を満たす必要がある。
$j$ を固定したとき、$X = j$ かつ $Y = j+s$ となる確率は、(2)の結果において $k=s$ とすることで求められ、$\frac{6s}{n^3}$ となる。 $j$ が異なればこれらの事象は互いに排反であるから、求める確率 $P(s)$ は $j=1$ から $n-s$ までの和をとって、
$$ P(s) = \sum_{j=1}^{n-s} \frac{6s}{n^3} = \frac{6s}{n^3} \times (n-s) = \frac{6s(n-s)}{n^3} $$
(4)
(3)より、$P(s) = \frac{6}{n^3} s(n-s)$ である。 $s$ を変数とみて $f(s) = s(n-s)$ とおくと、
$$ f(s) = -s^2 + ns = -\left( s - \frac{n}{2} \right)^2 + \frac{n^2}{4} $$
放物線 $y = f(s)$ の軸は $s = \frac{n}{2}$ である。 $n$ は偶数であるから、$\frac{n}{2}$ は整数である。 また、$s$ は $n-1$ 以下の正の整数であり、$n \geqq 2$ であるから、 $1 \leqq \frac{n}{2} \leqq \frac{n+(n-2)}{2} = n-1$ となり、$s = \frac{n}{2}$ は条件を満たす範囲の整数である。 したがって、$P(s)$ は $s = \frac{n}{2}$ のとき最大となる。
解法2
(2)の別解(余事象と包除原理の利用)
事象 $A$ を「3回とも $j$ 以上 $j+k$ 以下のカードが出る」、事象 $B$ を「3回とも $j+1$ 以上 $j+k$ 以下のカードが出る」、事象 $C$ を「3回とも $j$ 以上 $j+k-1$ 以下のカードが出る」とする。 求める事象は「$A$ が起こり、かつ $B$ も $C$ も起こらない」事象である。 つまり、事象 $A$ から事象 $B \cup C$ を除いた部分であるから、その確率は
$$ P(A) - P(B \cup C) = P(A) - \{ P(B) + P(C) - P(B \cap C) \} $$
となる。 (1)より $P(A) = \frac{(k+1)^3}{n^3}$ である。 事象 $B$ は $k$ 個の整数から選ばれるので $P(B) = \frac{k^3}{n^3}$。 事象 $C$ も $k$ 個の整数から選ばれるので $P(C) = \frac{k^3}{n^3}$。 事象 $B \cap C$ は「3回とも $j+1$ 以上 $j+k-1$ 以下のカードが出る」事象であり、対象となる整数は $k-1$ 個なので $P(B \cap C) = \frac{(k-1)^3}{n^3}$。 よって、求める確率は
$$ \begin{aligned} & \frac{(k+1)^3}{n^3} - \left\{ \frac{k^3}{n^3} + \frac{k^3}{n^3} - \frac{(k-1)^3}{n^3} \right\} \\ &= \frac{1}{n^3} \{ (k^3 + 3k^2 + 3k + 1) - 2k^3 + (k^3 - 3k^2 + 3k - 1) \} \\ &= \frac{6k}{n^3} \end{aligned} $$
解説
確率において「最大値・最小値」がテーマとなる場合、ある値「以下」や「以上」となる確率(累積確率)を求め、そこから差分をとって「ちょうどある値になる」確率を求めるアプローチ(解法2)が非常に強力かつ定石です。 本問の(2)は、最大値と最小値の両方が指定されているため、事象のベン図をイメージして包除原理を用いるとシステマチックに計算によって求めることができます。 一方で、本問は試行回数が3回と少ないため、解法1のように起こり得るケースを直接数え上げる手法も十分に実用的で、計算ミスを防ぎやすいというメリットがあります。 (3)以降は(2)の結果が正しく求まっていれば、あとはシグマ計算と2次関数の最大・最小という基本的な処理で完答できます。
答え
(1) $$ \frac{(k+1)^3}{n^3} $$
(2) $$ \frac{6k}{n^3} $$
(3) $$ P(s) = \frac{6s(n-s)}{n^3} $$
(4) $$ s = \frac{n}{2} $$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











