大阪大学 1973年 理系 第1問 解説

方針・初手
実数係数の3次方程式は、少なくとも1つの実数解を持つという性質に着目する。 すべての解の絶対値が1であり、かつ $c < 0$ であることから、解と係数の関係を用いて実数解の値を特定し、$c$ と $b$ を求める。 その後、方程式を因数分解して2次方程式に帰着させ、残る2つの解が絶対値1の複素数となるための条件(判別式)を調べる。
解法1
方程式 $x^3 + ax^2 + bx + c = 0$ の3つの解を $\alpha, \beta, \gamma$ とする。 条件より $|\alpha| = |\beta| = |\gamma| = 1$ である。 解と係数の関係から、
$$ \alpha\beta\gamma = -c $$
となる。方程式の係数がすべて実数であるため、3次方程式は少なくとも1つの実数解を持つ。 それを $\alpha$ とすると、$\alpha$ は実数であり $|\alpha| = 1$ であるから、$\alpha = 1$ または $\alpha = -1$ である。
また、残りの2解 $\beta, \gamma$ については、以下の2つの場合が考えられる。
(i)
$\beta, \gamma$ が虚数解の場合 実数係数方程式であるから、$\gamma$ は $\beta$ の共役複素数 $\bar{\beta}$ となる。 よって、$\beta\gamma = \beta\bar{\beta} = |\beta|^2 = 1^2 = 1$ となる。
(ii)
$\beta, \gamma$ も実数解の場合 条件より $|\beta| = |\gamma| = 1$ であるから、$\beta, \gamma \in \{1, -1\}$ である。 よって、その積 $\beta\gamma$ は $1 \cdot 1 = 1$, $(-1) \cdot (-1) = 1$, $1 \cdot (-1) = -1$ のいずれかとなる。
ここで、$\alpha\beta\gamma = -c$ であり、条件 $c < 0$ より $\alpha\beta\gamma > 0$ である。 (i) の場合は $\beta\gamma = 1 > 0$ であり、$\alpha\beta\gamma > 0$ となるためには $\alpha > 0$ が必要である。$\alpha \in \{1, -1\}$ より $\alpha = 1$ となる。 (ii) の場合、$\alpha, \beta, \gamma \in \{1, -1\}$ であり、これらの積が正となるのは、3つとも $1$ であるか、$1$ つが $1$ で $2$ つが $-1$ の場合である。いずれにせよ、解の1つは必ず $1$ であり、残り2つの解の積は $1$ となる。
したがって、いずれの場合も $x = 1$ はこの方程式の解であり、他の2つの解の積は $1$ であることがわかる。 $\alpha = 1$, $\beta\gamma = 1$ とすると、解と係数の関係より、
$$ -c = \alpha\beta\gamma = 1 \cdot 1 = 1 $$
よって $c = -1$ である。これは $c < 0$ を満たす。
また、$x = 1$ が解であることから、元の方程式に代入して
$$ 1^3 + a \cdot 1^2 + b \cdot 1 + c = 0 $$
$$ 1 + a + b - 1 = 0 $$
$$ b = -a $$
となる。このとき、元の3次方程式は
$$ x^3 + ax^2 - ax - 1 = 0 $$
と表される。左辺を因数分解すると、
$$ (x^3 - 1) + ax(x - 1) = 0 $$
$$ (x - 1)(x^2 + x + 1) + ax(x - 1) = 0 $$
$$ (x - 1)\{x^2 + (a+1)x + 1\} = 0 $$
となる。$x=1$ はすでに絶対値が $1$ であるため、題意を満たすための条件は、2次方程式
$$ x^2 + (a+1)x + 1 = 0 $$
の2つの解がともに絶対値 $1$ の複素数となることである。 この2次方程式の判別式を $D$ とすると、
$$ D = (a+1)^2 - 4 = a^2 + 2a - 3 = (a+3)(a-1) $$
(ア)
$D \leqq 0$ のとき すなわち $(a+3)(a-1) \leqq 0$ より $-3 \leqq a \leqq 1$ のとき。 このとき、2次方程式は互いに共役な複素数解(重解を含む)を持つ。 解を $\omega, \bar{\omega}$ とすると、解と係数の関係から積は $1$ になるので $\omega\bar{\omega} = 1$、すなわち $|\omega|^2 = 1$ となる。 よって、解の絶対値は常に $1$ となり、条件を満たす。
(イ)
$D > 0$ のとき すなわち $a < -3, 1 < a$ のとき。 このとき、2次方程式は異なる2つの実数解を持つ。 解と係数の関係より2解の積は $1$ であるから、それらの絶対値がともに $1$ となるのは、2解がともに $1$ かともに $-1$ の場合(すなわち重解)に限られる。しかし、これは $D > 0$ に矛盾する。 よって、この場合は不適である。
以上より、求める条件は $-3 \leqq a \leqq 1$, $b = -a$, $c = -1$ である。
解説
実数係数方程式が複素数解を持つ場合、それらは互いに共役になる。共役な複素数 $z, \bar{z}$ の積が絶対値の2乗 $z\bar{z} = |z|^2$ になる性質は、複素数平面や方程式の解を考える上で頻繁に利用される。 また、実数係数の2次方程式 $x^2 - px + q = 0$ において、解が絶対値 $r$ の虚数解を持つための条件は、$q = r^2$ かつ $p^2 - 4q < 0$ となる。本問はこの事実を $r=1$ のケースとして適用する典型的で重要な問題である。
答え
$$ -3 \leqq a \leqq 1, \quad b = -a, \quad c = -1 $$
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