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大阪大学 1982年 理系 第4問 解説

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大阪大学 1982年 理系 第4問 解説

方針・初手

(1) は、三角関数の値が $0$ にならないための角度の条件を考える。$\sin\theta \neq 0$ となるのは $\theta$ が $\pi$ の整数倍ではないときであることから、さいころの目の積に関する条件に帰着させる。

(2) は、各々の目 $1$ から $6$ について $\sin\left(\frac{2\pi}{3} \times n_i\right)$ の正負を具体的に調べ、条件を満たす目が出る確率を求めたのち、反復試行の確率の公式を用いる。

(3) は、不等式 $P_2 > P_1$ の証明である。両辺が正であるため、差を考えるよりも比 $\frac{P_2}{P_1}$ をとり、これが $1$ より大きいことを示す方針が有効である。二項係数の各因数を評価して不等式を導く。

解法1

(1)

$\sin\left(\frac{2\pi}{3} n_1 n_2 \cdots n_r\right) \neq 0$ となる条件は、整数 $m$ を用いて

$$ \frac{2\pi}{3} n_1 n_2 \cdots n_r \neq m\pi $$

と表される。すなわち、

$$ 2 n_1 n_2 \cdots n_r \neq 3m $$

である。これは、積 $n_1 n_2 \cdots n_r$ が $3$ の倍数ではないことと同値である。

積が $3$ の倍数にならないための条件は、どの $n_i$ ($1 \leqq i \leqq r$) も $3$ の倍数ではないことである。1つのさいころを振って $3$ の倍数 ($3, 6$) 以外の目が出るのは $1, 2, 4, 5$ の $4$ 通りである。

したがって、各回でこの $4$ 通りのいずれかが出ればよいので、求める確率 $P_1$ は、

$$ P_1 = \left(\frac{4}{6}\right)^r = \left(\frac{2}{3}\right)^r $$

(2)

$\sin\left(\frac{2\pi}{3} n_i\right) > 0$ となる $n_i$ の条件を調べる。$n_i \in \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ について値を計算すると、以下のようになる。

$n_i = 1$ のとき、$\sin\frac{2\pi}{3} = \frac{\sqrt{3}}{2} > 0$

$n_i = 2$ のとき、$\sin\frac{4\pi}{3} = -\frac{\sqrt{3}}{2} < 0$

$n_i = 3$ のとき、$\sin\frac{6\pi}{3} = 0$

$n_i = 4$ のとき、$\sin\frac{8\pi}{3} = \sin\frac{2\pi}{3} = \frac{\sqrt{3}}{2} > 0$

$n_i = 5$ のとき、$\sin\frac{10\pi}{3} = \sin\frac{4\pi}{3} = -\frac{\sqrt{3}}{2} < 0$

$n_i = 6$ のとき、$\sin\frac{12\pi}{3} = 0$

これより、条件を満たす $n_i$ は $1$ または $4$ であり、1回の試行でこの目が出る確率は $\frac{2}{6} = \frac{1}{3}$ である。また、条件を満たさない確率は $1 - \frac{1}{3} = \frac{2}{3}$ である。

$r$ 回の試行のうち、ちょうど $k$ 回で条件を満たす確率 $P_2$ は、反復試行の確率より、

$$ P_2 = {}_r\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{3}\right)^k \left(\frac{2}{3}\right)^{r-k} $$

(3)

(1) と (2) の結果より、$P_1 > 0$ および $P_2 > 0$ であるから、$P_2 > P_1$ を示すためには $\frac{P_2}{P_1} > 1$ を示せばよい。

$$ \frac{P_2}{P_1} = \frac{{}_r\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{3}\right)^k \left(\frac{2}{3}\right)^{r-k}}{\left(\frac{2}{3}\right)^r} = {}_r\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{3}\right)^k \left(\frac{2}{3}\right)^{-k} = {}_r\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{2}\right)^k = \frac{{}_r\mathrm{C}_{k}}{2^k} $$

これより、${}_r\mathrm{C}_{k} > 2^k$ を示すことに帰着する。${}_r\mathrm{C}_{k}$ を積の形で表すと、

$$ {}_r\mathrm{C}_{k} = \frac{r(r-1)\cdots(r-k+1)}{k(k-1)\cdots 1} = \prod_{j=0}^{k-1} \frac{r-j}{k-j} $$

となる。条件 $r > 2k > 0$ より、$r$ は整数であるから $r \geqq 2k + 1$ が成り立つ。$j$ は $0 \leqq j \leqq k-1$ を満たす整数であるから、

$$ r - j \geqq (2k + 1) - j = 2(k - j) + j + 1 $$

が成り立つ。ここで、$j \geqq 0$ より $j + 1 > 0$ であるから、

$$ r - j > 2(k - j) $$

となる。$k - j > 0$ であるため、両辺を $k - j$ で割ると、

$$ \frac{r-j}{k-j} > 2 $$

が得られる。この不等式は $j = 0, 1, \dots, k-1$ のすべてにおいて成り立つ。これら $k$ 個の分数を掛け合わせると、

$$ \prod_{j=0}^{k-1} \frac{r-j}{k-j} > \prod_{j=0}^{k-1} 2 = 2^k $$

すなわち ${}_r\mathrm{C}_{k} > 2^k$ が示された。

したがって、$\frac{P_2}{P_1} > 1$ となり、$P_2 > P_1$ が成り立つことが示された。

解説

確率の基本計算と、二項係数の不等式評価を融合した標準的な問題である。

(1) は余事象や補集合の考え方に似ており、「積が $3$ の倍数でない」ならば「要素すべてが $3$ の倍数でない」と言い換えられるかがポイントとなる。

(3) の不等式証明では、確率の比 $\frac{P_2}{P_1}$ を計算することで式が劇的に簡略化される。数列の最大値問題などで隣り合う項の比をとるのと同様の発想である。残った二項係数の評価 ${}_r\mathrm{C}_{k} > 2^k$ は、数学的帰納法を用いても証明可能だが、解法1のように組み合わせの定義式を展開し、各分数の因子が $2$ より大きいことを直接示す方が簡潔である。

答え

(1)

$$ P_1 = \left(\frac{2}{3}\right)^r $$

(2)

$$ P_2 = {}_r\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{3}\right)^k \left(\frac{2}{3}\right)^{r-k} $$

(3)

解法に記載の通り、$\frac{P_2}{P_1} = \frac{{}_r\mathrm{C}_{k}}{2^k}$ を導き、${}_r\mathrm{C}_{k} > 2^k$ を示すことで $P_2 > P_1$ が証明された。

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