大阪大学 1983年 理系 第5問 解説

方針・初手
(1) 試行を $n$ 回繰り返したとき、最大値として出た値が何であるかによって場合分けをして確率を求める。事象 $A_k$ は、最大値 $m$ が $k$ 回出て、残りの $(n-k)$ 回はすべて $m$ より小さい値が出るという事象の和事象として捉えられる。
(2) 期待値の定義に従って和を計算する。$\sum_{k=1}^n k \cdot _nC_k x^{n-k}$ のような形が現れるため、$k \cdot _nC_k = n \cdot _{n-1}C_{k-1}$ の関係式と二項定理を組み合わせてシグマを計算し、極限をとる。
解法1
(1) 事象 $A_k$ は、ある値 $m$ ($1 \le m \le 4$) が $k$ 回出て、残りの $(n-k)$ 回は $m$ より小さい値が出る事象の、$m=1, 2, 3, 4$ に対する和事象である。これらは互いに排反である。 ある値 $m$ が $k$ 回、それより小さい値が $(n-k)$ 回出る確率は、$n$ 回中 $m$ が出る $k$ 回を選ぶ方法が $_nC_k$ 通りあり、各回において $m$ が出る確率が $\frac{1}{4}$、$m$ より小さい値が出る確率が $\frac{m-1}{4}$ であることから、
$$ _nC_k \left(\frac{1}{4}\right)^k \left(\frac{m-1}{4}\right)^{n-k} = \frac{_nC_k (m-1)^{n-k}}{4^n} $$
となる。
(i)
$1 \le k \le n-1$ のとき $m=1$ のときは $m$ より小さい値が存在しないため、確率は $0$ である。 $m=2, 3, 4$ の場合を足し合わせて、
$$ P(A_k) = \sum_{m=2}^{4} \frac{_nC_k (m-1)^{n-k}}{4^n} = \frac{_nC_k}{4^n} (1^{n-k} + 2^{n-k} + 3^{n-k}) $$
(ii)
$k=n$ のとき 残りの $0$ 個が $m$ より小さい値となる、つまり $n$ 回すべて同じ値 $m$ が出る場合である。これは $m=1, 2, 3, 4$ のいずれの場合も起こり得るため、
$$ P(A_n) = 4 \times \left(\frac{1}{4}\right)^n = \frac{4}{4^n} $$
(2) $E_n = \sum_{k=1}^n k P(A_k)$ を計算する。(1) の結果より、
$$ E_n = \sum_{k=1}^{n-1} k \frac{_nC_k}{4^n} (1^{n-k} + 2^{n-k} + 3^{n-k}) + n \frac{4}{4^n} $$
ここで、二項係数の性質 $k \cdot _nC_k = n \cdot _{n-1}C_{k-1}$ ($k \ge 1$) を用いる。正の実数 $x$ に対し、
$$ \sum_{k=1}^{n-1} k \cdot _nC_k x^{n-k} = \sum_{k=1}^{n-1} n \cdot _{n-1}C_{k-1} x^{(n-1)-(k-1)} $$
$j = k-1$ とおくと、
$$ = n \sum_{j=0}^{n-2} _{n-1}C_j x^{(n-1)-j} $$
二項定理により $\sum_{j=0}^{n-1} _{n-1}C_j x^{(n-1)-j} \cdot 1^j = (x+1)^{n-1}$ であるから、
$$ \sum_{j=0}^{n-2} _{n-1}C_j x^{(n-1)-j} = (x+1)^{n-1} - _{n-1}C_{n-1} x^0 = (x+1)^{n-1} - 1 $$
したがって、
$$ \sum_{k=1}^{n-1} k \cdot _nC_k x^{n-k} = n \{ (x+1)^{n-1} - 1 \} $$
これに $x=1, 2, 3$ をそれぞれ代入して辺々を加えると、
$$ \sum_{k=1}^{n-1} k \cdot _nC_k (1^{n-k} + 2^{n-k} + 3^{n-k}) = n \{ (1+1)^{n-1} - 1 + (2+1)^{n-1} - 1 + (3+1)^{n-1} - 1 \} $$
$$ = n (2^{n-1} + 3^{n-1} + 4^{n-1} - 3) $$
よって、期待値 $E_n$ は、
$$ E_n = \frac{1}{4^n} n (2^{n-1} + 3^{n-1} + 4^{n-1} - 3) + \frac{4n}{4^n} = \frac{n}{4^n} (2^{n-1} + 3^{n-1} + 4^{n-1} + 1) $$
これより、$\frac{E_n}{n}$ を計算すると、
$$ \frac{E_n}{n} = \frac{2^{n-1} + 3^{n-1} + 4^{n-1} + 1}{4^n} = \frac{1}{2} \left( \frac{1}{2} \right)^n + \frac{1}{3} \left( \frac{3}{4} \right)^n + \frac{1}{4} + \left( \frac{1}{4} \right)^n $$
$n \to \infty$ のとき、$\left(\frac{1}{2}\right)^n \to 0$、$\left(\frac{3}{4}\right)^n \to 0$、$\left(\frac{1}{4}\right)^n \to 0$ であるから、
$$ \lim_{n \to \infty} \frac{E_n}{n} = \frac{1}{4} $$
解説
(1) では $k=n$ となる極端なケースで、残りの回数が $0$ となる場合の扱いに注意が必要である。場合分けをして丁寧に確率を立式することが確実である。
(2) の計算では $\sum k \cdot _nC_k p^k q^{n-k}$ の形が現れる。これは二項分布の期待値導出などで頻出する形であり、$k \cdot _nC_k = n \cdot _{n-1}C_{k-1}$ という変形を用いてシグマの添字をずらし、二項定理を適用して和を計算する手法が定石である。あるいは恒等式 $(x+1)^n = \sum _nC_k x^k$ などの両辺を微分して活用する方法も有効である。
答え
(1)
$1 \le k \le n-1$ のとき $P(A_k) = \frac{_nC_k}{4^n} (1 + 2^{n-k} + 3^{n-k})$ $k = n$ のとき $P(A_n) = \frac{4}{4^n}$
(2)
$\lim_{n \to \infty} \frac{E_n}{n} = \frac{1}{4}$
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