大阪大学 1991年 理系 第5問 解説

方針・初手
動点 $Q$ が1回の移動で必ず隣の頂点へ移動することから、偶数回の移動後と奇数回の移動後で、到達可能な頂点が異なることに着目する。問題では $2n$ 回(偶数回)移動した後の状態が問われているため、2回の移動を1セットとして、頂点 $A$ にいる確率についての漸化式を立てて極限を求める。
解法1
さいころを1回振ったとき、反時計回りに隣の頂点に移動する確率は $\frac{1}{6}$、時計回りに隣の頂点に移動する確率は $\frac{5}{6}$ である。
動点 $Q$ は最初頂点 $A$ にあり、1回移動するごとに必ず隣の頂点に移るため、移動回数が偶数回のときは頂点 $A$ または $C$ にあり、奇数回のときは頂点 $B$ または $D$ にある。
したがって、$2n$ 回( $n=1,2,\dots$ )移動した後の位置 $Q_{2n}$ は、必ず頂点 $A$ または $C$ のいずれかである。
(1)
動点 $Q$ がある頂点から2回移動した結果、元の頂点に戻る移動の仕方は、「反時計回り $\to$ 時計回り」または「時計回り $\to$ 反時計回り」の2通りである。この確率を $p$ とすると、
$$ p = \frac{1}{6} \times \frac{5}{6} + \frac{5}{6} \times \frac{1}{6} = \frac{5}{18} $$
となる。$a_1$ は頂点 $A$ から2回移動して頂点 $A$ にいる確率(すなわち $Q_2 = A$ となる確率)であるから、
$$ a_1 = \frac{5}{18} $$
である。
(2)
動点 $Q$ がある頂点から2回移動した結果、対角にある頂点( $A$ から $C$ 、または $C$ から $A$ )に移動する仕方は、「反時計回り $\to$ 反時計回り」または「時計回り $\to$ 時計回り」の2通りである。この確率を $q$ とすると、
$$ q = \left(\frac{1}{6}\right)^2 + \left(\frac{5}{6}\right)^2 = \frac{1+25}{36} = \frac{13}{18} $$
となる。$2n$ 回移動後に $Q_{2n}$ がある位置は $A$ または $C$ のいずれかであり、$Q_{2n} = A$ となる確率が $a_n$ であるから、$Q_{2n} = C$ となる確率は $1 - a_n$ と表せる。
$2n+2$ 回移動後に $Q_{2n+2} = A$ となるのは、以下の2つの場合である。
(i)
$2n$ 回移動後に頂点 $A$ におり、そこから2回移動して頂点 $A$ に戻る場合。
(ii)
$2n$ 回移動後に頂点 $C$ におり、そこから2回移動して頂点 $A$ (対角)に移動する場合。
これらは互いに排反であるから、求める確率 $a_{n+1}$ は、
$$ a_{n+1} = p \times a_n + q \times (1 - a_n) $$
$$ a_{n+1} = \frac{5}{18} a_n + \frac{13}{18} (1 - a_n) $$
$$ a_{n+1} = -\frac{4}{9} a_n + \frac{13}{18} $$
となる。
(3)
(2) で求めた漸化式を変形すると、以下のようになる。
$$ a_{n+1} - \frac{1}{2} = -\frac{4}{9} \left( a_n - \frac{1}{2} \right) $$
数列 $\left\{ a_n - \frac{1}{2} \right\}$ は初項 $a_1 - \frac{1}{2}$、公比 $-\frac{4}{9}$ の等比数列である。
$$ a_1 - \frac{1}{2} = \frac{5}{18} - \frac{1}{2} = -\frac{4}{18} = -\frac{2}{9} $$
であるから、数列の一般項は、
$$ a_n - \frac{1}{2} = -\frac{2}{9} \left( -\frac{4}{9} \right)^{n-1} $$
$$ a_n = \frac{1}{2} - \frac{2}{9} \left( -\frac{4}{9} \right)^{n-1} $$
となる。ここで $n \to \infty$ とすると、$\left| -\frac{4}{9} \right| < 1$ より $\left( -\frac{4}{9} \right)^{n-1} \to 0$ となる。したがって、
$$ \lim_{n \to \infty} a_n = \frac{1}{2} $$
である。
解説
状態の遷移を追う、確率漸化式の典型問題である。 1回ごとの移動( $n$ と $n+1$ の関係)で漸化式を立てようとすると、4つの頂点すべての確率を文字でおく必要が生じ、処理が煩雑になる。本問のように「偶数回後の状態」のみが問われている場合、移動の偶奇に注目して「2回分の移動を1セット」とみなすことで、考えるべき状態を $A$ と $C$ の2つだけに絞り込める点が最大のポイントである。無限回試行を繰り返すと、到達可能な2点に存在する確率は等しく均されるため、極限値が $\frac{1}{2}$ となることは直感とも一致する。
答え
(1)
$a_1 = \frac{5}{18}$
(2)
$a_{n+1} = -\frac{4}{9} a_n + \frac{13}{18}$
(3)
$\lim_{n \to \infty} a_n = \frac{1}{2}$
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