大阪大学 1991年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) 与えられた図形的条件を数式に翻訳する。原点と点 $P$ を結ぶ直線の傾きから $\tan \theta$ が求まり、点 $P$ における接線の傾きから $f'(x)$ が $\tan 2\theta$ と等しいことが分かるため、$\tan$ の加法定理(2倍角の公式)を用いて $f'(x)$ と $f(x), x$ の関係式を導く。
(2)
$u = \frac{f(x)}{x}$ とおくと、$g(x) = u + \frac{1}{u}$ となる。(1) で求めた微分方程式も $u$ を用いて表すことで、計算を簡略化して $g'(x)$ を導出する。
(3) (2) で得られた微分方程式を解いて $g(x)$ を求め、そこから $f(x)$ についての2次方程式を解く。定義域 $0 < x < 1$ における実数条件や、極限 $\lim_{x \to 1} f'(x) = \infty$ の条件から、積分定数や複号を決定する。
解法1
(1)
曲線 $C : y = f(x)$ 上の点 $P(x, f(x))$ について考える。原点 $O$ と点 $P$ を結ぶ直線が $x$ 軸となす角は $\theta$ であるから、この直線の傾きは $\tan \theta$ である。したがって、
$$ \tan \theta = \frac{f(x)}{x} $$
が成り立つ。また、点 $P$ における曲線 $C$ の接線が $x$ 軸となす角は $2\theta$ であるから、この接線の傾きは $\tan 2\theta$ である。接線の傾きは $f'(x)$ であるから、
$$ f'(x) = \tan 2\theta $$
となる。$\tan$ の2倍角の公式より、
$$ \tan 2\theta = \frac{2\tan \theta}{1 - \tan^2 \theta} $$
であるから、ここに $\tan \theta = \frac{f(x)}{x}$ を代入して整理すると、
$$ f'(x) = \frac{2 \cdot \frac{f(x)}{x}}{1 - \left\{ \frac{f(x)}{x} \right\}^2} = \frac{\frac{2f(x)}{x}}{\frac{x^2 - \{f(x)\}^2}{x^2}} = \frac{2x f(x)}{x^2 - \{f(x)\}^2} $$
よって、求める微分方程式は以下のようになる。
$$ f'(x) = \frac{2x f(x)}{x^2 - \{f(x)\}^2} $$
(2)
$u(x) = \frac{f(x)}{x}$ とおくと、$g(x)$ は次のように表せる。
$$ g(x) = u(x) + \frac{1}{u(x)} $$
また、(1) で求めた微分方程式の分母分子を $x^2$ で割ると、次のように書ける。
$$ f'(x) = \frac{2u(x)}{1 - \{u(x)\}^2} $$
ここで、$u(x) = \frac{f(x)}{x}$ の両辺を $x$ で微分すると、商の微分法より、
$$ u'(x) = \frac{x f'(x) - f(x)}{x^2} = \frac{1}{x} \left( f'(x) - \frac{f(x)}{x} \right) = \frac{1}{x} \left( f'(x) - u(x) \right) $$
となる。これに $f'(x)$ の式を代入して整理する。
$$ \begin{aligned} u'(x) &= \frac{1}{x} \left( \frac{2u(x)}{1 - \{u(x)\}^2} - u(x) \right) \\ &= \frac{1}{x} \cdot \frac{2u(x) - u(x) \left( 1 - \{u(x)\}^2 \right)}{1 - \{u(x)\}^2} \\ &= \frac{u(x) + \{u(x)\}^3}{x \left( 1 - \{u(x)\}^2 \right)} \\ &= \frac{u(x) \left( 1 + \{u(x)\}^2 \right)}{x \left( 1 - \{u(x)\}^2 \right)} \end{aligned} $$
一方、$g(x) = u(x) + \{u(x)\}^{-1}$ を $x$ で微分すると、
$$ g'(x) = \left( 1 - \frac{1}{\{u(x)\}^2} \right) u'(x) = \frac{\{u(x)\}^2 - 1}{\{u(x)\}^2} u'(x) $$
となる。ここに求めた $u'(x)$ を代入する。
$$ g'(x) = \frac{-\left( 1 - \{u(x)\}^2 \right)}{\{u(x)\}^2} \cdot \frac{u(x) \left( 1 + \{u(x)\}^2 \right)}{x \left( 1 - \{u(x)\}^2 \right)} = - \frac{1 + \{u(x)\}^2}{x u(x)} = - \frac{1}{x} \left( \frac{1}{u(x)} + u(x) \right) $$
$g(x) = u(x) + \frac{1}{u(x)}$ であるから、これを代入して、求める微分方程式を得る。
$$ g'(x) = -\frac{g(x)}{x} $$
(3)
(2) より、$x g'(x) + g(x) = 0$ が成り立つ。これは次のように変形できる。
$$ (x g(x))' = 0 $$
両辺を $x$ で積分すると、積分定数を $C$ として、
$$ x g(x) = C \iff g(x) = \frac{C}{x} $$
となる。問題の条件より、$x>0$ および $f(x)>0$ であるから $g(x) > 0$ となり、$C > 0$ がわかる。$g(x)$ を $f(x)$ で表した式に戻すと、
$$ \frac{f(x)}{x} + \frac{x}{f(x)} = \frac{C}{x} $$
両辺に $x f(x)$ を掛けて整理すると、$f(x)$ についての2次方程式が得られる。
$$ \{f(x)\}^2 - C f(x) + x^2 = 0 $$
解の公式より、
$$ f(x) = \frac{C \pm \sqrt{C^2 - 4x^2}}{2} $$
$f(x)$ は $0 < x < 1$ で定義された関数であるため、この区間で実数として存在しなければならない。すなわち、根号の中身が常に $0$ 以上である必要がある。
$$ C^2 - 4x^2 \ge 0 $$
これが $0 < x < 1$ で常に成り立つためには、$x \to 1$ を考えて $C^2 - 4 \ge 0$ となる。$C>0$ より $C \ge 2$ である。次に、$f'(x)$ を計算する。
$$ f'(x) = \frac{1}{2} \left( \pm \frac{-8x}{2\sqrt{C^2 - 4x^2}} \right) = \mp \frac{2x}{\sqrt{C^2 - 4x^2}} $$
問題の条件 $\lim_{x \to 1} f'(x) = \infty$ について考える。$x \to 1$ のとき $f'(x) \to \infty$ となるためには、分母が $0$ に近づかなければならない。すなわち、
$$ \sqrt{C^2 - 4 \cdot 1^2} = 0 \iff C^2 = 4 $$
$C > 0$ であるから、$C = 2$ と決まる。このとき、$f'(x)$ は以下のようになる。
$$ f'(x) = \mp \frac{2x}{\sqrt{4 - 4x^2}} = \mp \frac{x}{\sqrt{1 - x^2}} $$
$x \to 1-0$ のとき、この極限が $+\infty$ になるためには、複号は $-$ でなければならない。したがって、
$$ f(x) = \frac{2 - \sqrt{4 - 4x^2}}{2} = 1 - \sqrt{1 - x^2} $$
と定まる。このとき、$0 < x < 1$ において $1 - \sqrt{1 - x^2} > 0$ であり、$f(x)$ は正の値をとるという条件も満たしている。
解説
図形的性質から微分方程式を立て、それを解いて元の関数を決定する問題である。 (1) で得られる式は「同次形」と呼ばれるタイプの微分方程式であり、(2) のように $\frac{y}{x}$ や $\frac{f(x)}{x}$ を一つの変数として置換することで変数分離形などに持ち込むのが定石である。今回は誘導により非常にシンプルな式に帰着する。 (3) では、2次方程式の解の公式で得られた関数に未知の定数 $C$ と複号 $\pm$ が含まれる。これを関数の定義域(実数条件)と、与えられた微分係数の極限から決定するプロセスが問われている。分母が $0$ に近づくことで極限が発散するという論理を丁寧に記述することが重要である。
答え
(1)
$f'(x) = \frac{2x f(x)}{x^2 - \{f(x)\}^2}$
(2)
$g'(x) = -\frac{g(x)}{x}$
(3)
$f(x) = 1 - \sqrt{1 - x^2}$
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