東北大学 1970年 理系 第2問 解説

方針・初手
方程式の左辺を $f(x)$ とおき、$f(x) = 0$ を満たす正の実数 $x$ の個数を調べる。 そのまま $f(x)$ を微分しても、導関数 $f'(x)$ の符号変化が直ちには分からないため、グラフの概形を捉えにくい。そこで、$x > 0$ を前提としていることを活かし、方程式の両辺を $x^n$ で割って新たな関数を設定する。これにより、関数の単調性が容易に示せる形に持ち込むことができる。
解法1
方程式の左辺を $f(x)$ とおき、$f(x) = 0$ について考える。
$$f(x) = a_0 x^n - a_1 x^{n-1} - a_2 x^{n-2} - \cdots - a_n = 0$$
いま、正の根の個数を求めるため $x > 0$ とする。このとき $x^n \neq 0$ であるから、方程式の両辺を $x^n$ で割ると、次のように変形できる。
$$a_0 - a_1 x^{-1} - a_2 x^{-2} - \cdots - a_n x^{-n} = 0$$
ここで、左辺の関数を $g(x)$ とおく。
$$g(x) = a_0 - a_1 x^{-1} - a_2 x^{-2} - \cdots - a_n x^{-n}$$
$x > 0$ において $g(x)$ を $x$ で微分すると、以下のようになる。
$$g'(x) = a_1 x^{-2} + 2 a_2 x^{-3} + \cdots + n a_n x^{-n-1}$$
仮定より $a_1, a_2, \cdots, a_n$ はすべて正の実数であり、$x > 0$ であるから、各項はすべて正となる。したがって、$x > 0$ において常に以下が成り立つ。
$$g'(x) > 0$$
よって、$g(x)$ は $x > 0$ の範囲で単調に増加する連続関数である。 次に、$x \to +0$ および $x \to \infty$ のときの $g(x)$ の極限を調べる。
$$\lim_{x \to +0} g(x) = a_0 - \lim_{x \to +0} \left( \frac{a_1}{x} + \frac{a_2}{x^2} + \cdots + \frac{a_n}{x^n} \right) = -\infty$$
$$\lim_{x \to \infty} g(x) = a_0 - 0 - 0 - \cdots - 0 = a_0$$
仮定より $a_0 > 0$ であるため、$g(x)$ は $x > 0$ において $-\infty$ から正の値 $a_0$ まで単調に増加する。 中間値の定理より、$g(x) = 0$ となる実数 $x$ は $x > 0$ の範囲に少なくとも1つ存在し、さらに $g(x)$ の単調増加性によりそのような $x$ はただ1つに限られる。
$x > 0$ において $f(x) = 0 \iff g(x) = 0$ であるから、もとの $n$ 次方程式 $f(x) = 0$ の正の根の個数は 1 個である。
解法2
方程式の左辺を $f(x)$ とおく。$f(x) = 0$ は次のように移項して変形できる。
$$a_0 x^n = a_1 x^{n-1} + a_2 x^{n-2} + \cdots + a_n$$
正の根を考えるため $x > 0$ とする。両辺を $x^n$ で割ると、以下の式を得る。
$$a_0 = \frac{a_1}{x} + \frac{a_2}{x^2} + \cdots + \frac{a_n}{x^n}$$
右辺の関数を $h(x)$ とおく。
$$h(x) = \frac{a_1}{x} + \frac{a_2}{x^2} + \cdots + \frac{a_n}{x^n}$$
仮定より $a_1, a_2, \cdots, a_n$ はすべて正の実数である。 $x > 0$ において、各項 $\frac{a_k}{x^k}$ $(k = 1, 2, \cdots, n)$ は $x$ の増加に伴って単調に減少する連続関数である。したがって、それらの和である $h(x)$ も $x > 0$ の範囲で単調に減少する。
また、極限を調べると次のようになる。
$$\lim_{x \to +0} h(x) = \infty$$
$$\lim_{x \to \infty} h(x) = 0$$
仮定より $a_0 > 0$ である。$h(x)$ は $\infty$ から $0$ に向かって単調に減少する連続関数であるため、$y = h(x)$ のグラフと直線 $y = a_0$ は、$x > 0$ の範囲でただ1つの交点を持つ。
方程式 $a_0 = h(x)$ を満たす正の実数 $x$ がただ1つ存在することから、もとの $n$ 次方程式の正の根の個数は 1 個である。
解説
方程式の実数解の個数を調べる問題では、左辺を関数として微分し増減を調べるのが基本である。しかし本問のように、そのまま微分しても導関数の符号変化が明らかにならない場合には「全体を $x$ の累乗で割る」という手法が非常に有効となる。
各項を $x^{-k}$ の形にすることで、微分した際にマイナスが前に出て係数の符号が統一される(解法1)、あるいは分数関数の足し合わせとして直観的な単調減少性を利用できる(解法2)といったメリットが生まれる。
なお、多項式の係数の符号変化の回数と正の実数解の個数の関係を述べた定理に「デカルトの符号法則」がある。本問の多項式は係数の符号が $+ \to - \to - \cdots \to -$ と1回だけ変化するため、この法則によれば正の実数解の個数は1個であることが直ちにわかる。本問は、その法則の特殊なケースを高校数学の微分や極限の枠組みで論証させる問題となっている。
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