東北大学 1965年 理系 第1問 解説

方針・初手
与えられた3つの数 $P, Q, R$ の大小を比較するために、2数ずつペアにして差をとり、その正負を調べます。 比較の際は、与えられた条件 $x+y=1$ を活用して式を変形します。特に、「1を $x+y$ に置き換える」あるいは「定数項を $x+y$ を用いて揃える」という同次式化の手法が有効です。
解法1
$P$ と $R$ の比較
$P$ と $R$ の差をとります。
$$ \begin{aligned} P - R &= \frac{x}{a} + \frac{y}{b} - \frac{1}{ax+by} \\ &= \frac{bx+ay}{ab} - \frac{1}{ax+by} \\ &= \frac{(bx+ay)(ax+by) - ab}{ab(ax+by)} \end{aligned} $$
ここで、分子の定数項 $ab$ について、条件 $x+y=1$ の両辺を2乗した $(x+y)^2 = 1$ を用いて変形します。
$$ \begin{aligned} (\text{分子}) &= (bx+ay)(ax+by) - ab(x+y)^2 \\ &= \left( abx^2 + (a^2+b^2)xy + aby^2 \right) - ab(x^2+2xy+y^2) \\ &= abx^2 + a^2xy + b^2xy + aby^2 - abx^2 - 2abxy - aby^2 \\ &= (a^2 - 2ab + b^2)xy \\ &= (a-b)^2xy \end{aligned} $$
これを元の式に戻すと、次のようになります。
$$ P - R = \frac{(a-b)^2xy}{ab(ax+by)} $$
条件より $a, b, x, y$ はすべて正数なので、分母 $ab(ax+by) > 0$ であり、$x > 0, y > 0$ です。 また、$a \neq b$ より $(a-b)^2 > 0$ となります。 したがって、常に $P - R > 0$ が成り立ちます。
$$ P > R $$
$Q$ と $R$ の比較
次に、$Q$ と $R$ の差をとります。 まず、条件 $x+y=1$ を用いて $Q$ を変形します。
$$ \begin{aligned} Q &= (2-a)x + (2-b)y \\ &= 2(x+y) - (ax+by) \\ &= 2 - (ax+by) \end{aligned} $$
$R$ との差をとって計算します。
$$ \begin{aligned} R - Q &= \frac{1}{ax+by} - \{2 - (ax+by)\} \\ &= \frac{1 - 2(ax+by) + (ax+by)^2}{ax+by} \\ &= \frac{(ax+by - 1)^2}{ax+by} \end{aligned} $$
$a, b, x, y$ は正数なので、分母 $ax+by > 0$ です。 分子は実数の2乗なので、常に $(ax+by - 1)^2 \geqq 0$ となります。 したがって、$R - Q \geqq 0$ が成り立ちます(等号は $ax+by=1$ のとき成立)。
$$ R \geqq Q $$
以上より、3数の大小関係は $P > R \geqq Q$ となります。
解法2
有名不等式を利用した別解です。
$P$ と $R$ の比較(コーシー・シュワルツの不等式)
$a, b, x, y$ が正数であることから、コーシー・シュワルツの不等式を用いて以下の関係を作ります。
$$ \left( \left(\frac{\sqrt{x}}{\sqrt{a}}\right)^2 + \left(\frac{\sqrt{y}}{\sqrt{b}}\right)^2 \right) \left( (\sqrt{ax})^2 + (\sqrt{by})^2 \right) \geqq \left( \frac{\sqrt{x}}{\sqrt{a}}\sqrt{ax} + \frac{\sqrt{y}}{\sqrt{b}}\sqrt{by} \right)^2 $$
これを整理すると次のようになります。
$$ \left( \frac{x}{a} + \frac{y}{b} \right) (ax + by) \geqq (x + y)^2 $$
$x+y=1$ および $P = \frac{x}{a} + \frac{y}{b}$ を代入します。
$$ P (ax + by) \geqq 1 $$
$ax+by > 0$ なので、両辺を割ります。
$$ P \geqq \frac{1}{ax+by} = R $$
等号成立条件は $\frac{\sqrt{ax}}{\sqrt{x/a}} = \frac{\sqrt{by}}{\sqrt{y/b}}$ すなわち $a = b$ のときですが、問題の条件 $a \neq b$ により等号は成立しません。したがって、厳密な不等号となります。
$$ P > R $$
$Q$ と $R$ の比較(相加・相乗平均の関係)
解法1と同様に $Q = 2 - (ax+by)$ と変形しておきます。 $a, b, x, y$ が正数より $ax+by > 0$ であるため、$\frac{1}{ax+by} > 0$ です。 $ax+by$ と $\frac{1}{ax+by}$ に対して、相加・相乗平均の関係を適用します。
$$ (ax+by) + \frac{1}{ax+by} \geqq 2\sqrt{(ax+by) \cdot \frac{1}{ax+by}} = 2 $$
この不等式を整理します。
$$ \frac{1}{ax+by} \geqq 2 - (ax+by) $$
これは $R \geqq Q$ を意味します。等号成立条件は $ax+by = \frac{1}{ax+by}$ すなわち $ax+by = 1$ のときであり、これは条件を満たし得ます。
$$ R \geqq Q $$
以上より、大小関係は $P > R \geqq Q$ となります。
解説
不等式の証明や大小比較において、基本となるのは「差をとって正負を調べる」ことです。本問では $x+y=1$ という条件式の使い方が鍵となります。文字を消去するために $y = 1-x$ と代入する手法もありますが、計算が煩雑になりがちです。本問のように「$1$ を $x+y$ に置き換える」「定数を $x+y$ でくくり出す」というアプローチをとることで、式が美しく因数分解できる同次式の形に持ち込めます。
また、解法2で示したように、式の形から「コーシー・シュワルツの不等式」や「相加・相乗平均の関係」といった有名不等式を連想できるようになると、計算量を大幅に減らすことができます。特に $P$ と $R$ の関係は、関数の凸性を利用した「イェンセンの不等式」の具体的な応用例とも解釈できる、数学的に非常に自然で美しい構造を持っています。
答え
$$ P > R \geqq Q $$
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