東北大学 1978年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) は与えられた行列とベクトルを用いて、条件の不等式を $x$ と $y$ の式で表すことから始める。不等式が「任意の実数 $x, y$ に対して」成り立つ条件を求めるため、特定の $x, y$ の値を代入して必要条件から $a$ の値を絞り込むと見通しが良い。
(2) は (1) で求めた $a$ を代入し、$A\vec{u} \cdot \vec{u}$ を $x, y$ の式で表す。条件 $x^2 + y^2 = 1$ を活かすため、三角関数による媒介変数表示や、コーシー・シュワルツの不等式を利用して最大値と最小値を求める。
解法1
(1)
行列の積とベクトルによる計算を行う。
$$ A\vec{u} = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ a & 4 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x + 2y \\ ax + 4y \end{pmatrix} $$
したがって、内積 $A\vec{u} \cdot A\vec{u}$ は以下のようになる。
$$ \begin{aligned} A\vec{u} \cdot A\vec{u} &= (x+2y)^2 + (ax+4y)^2 \\ &= x^2 + 4xy + 4y^2 + a^2x^2 + 8axy + 16y^2 \\ &= (a^2+1)x^2 + 4(2a+1)xy + 20y^2 \end{aligned} $$
次に、$AB\vec{u} \cdot \vec{u}$ について計算する。まず行列 $AB$ を求める。
$$ AB = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ a & 4 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & a \\ 2 & 4 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 5 & a+8 \\ a+8 & a^2+16 \end{pmatrix} $$
これに $\vec{u}$ をかける。
$$ AB\vec{u} = \begin{pmatrix} 5 & a+8 \\ a+8 & a^2+16 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 5x + (a+8)y \\ (a+8)x + (a^2+16)y \end{pmatrix} $$
したがって、内積 $AB\vec{u} \cdot \vec{u}$ は以下のようになる。
$$ \begin{aligned} AB\vec{u} \cdot \vec{u} &= x\{5x + (a+8)y\} + y\{(a+8)x + (a^2+16)y\} \\ &= 5x^2 + (a+8)xy + (a+8)xy + (a^2+16)y^2 \\ &= 5x^2 + 2(a+8)xy + (a^2+16)y^2 \end{aligned} $$
条件である $A\vec{u} \cdot A\vec{u} \geqq AB\vec{u} \cdot \vec{u}$ に代入する。
$$ (a^2+1)x^2 + 4(2a+1)xy + 20y^2 \geqq 5x^2 + 2(a+8)xy + (a^2+16)y^2 $$
すべて左辺に移項して整理する。
$$ (a^2-4)x^2 + 6(a-2)xy - (a^2-4)y^2 \geqq 0 \quad \cdots (*) $$
この不等式 $(*)$ が任意の実数 $x, y$ に対して成立するための必要条件を考える。
$x=1, y=0$ を代入すると、以下のようになる。
$$ a^2 - 4 \geqq 0 $$
$x=0, y=1$ を代入すると、以下のようになる。
$$ -(a^2 - 4) \geqq 0 \iff a^2 - 4 \leqq 0 $$
これらを同時に満たす必要があるため、$a^2 - 4 = 0$ すなわち $a = \pm 2$ でなければならない。
(i) $a=2$ のとき
$(*)$ の左辺は以下のようになる。
$$ (2^2-4)x^2 + 6(2-2)xy - (2^2-4)y^2 = 0 $$
$0 \geqq 0$ となり、これは任意の実数 $x, y$ に対して成立する。
(ii) $a=-2$ のとき
$(*)$ の左辺は以下のようになる。
$$ ((-2)^2-4)x^2 + 6(-2-2)xy - ((-2)^2-4)y^2 = -24xy $$
$-24xy \geqq 0$ となるが、これは任意の実数 $x, y$ に対して常に成立するわけではない(例えば $x=1, y=1$ のとき $-24 \geqq 0$ となり不成立)。
以上より、求める実数 $a$ の値は $a=2$ である。
(2)
(1)より $a=2$ であるから、行列 $A$ は以下のようになる。
$$ A = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} $$
このとき、$A\vec{u}$ と $A\vec{u} \cdot \vec{u}$ を計算する。
$$ A\vec{u} = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x + 2y \\ 2x + 4y \end{pmatrix} $$
$$ A\vec{u} \cdot \vec{u} = x(x+2y) + y(2x+4y) = x^2 + 4xy + 4y^2 = (x+2y)^2 $$
条件 $x^2 + y^2 = 1$ を満たすので、$x = \cos \theta, y = \sin \theta \ (0 \leqq \theta < 2\pi)$ とおくことができる。これを用いて式を変形する。
$$ \begin{aligned} A\vec{u} \cdot \vec{u} &= (\cos \theta + 2\sin \theta)^2 \\ &= \left\{ \sqrt{5} \left( \frac{1}{\sqrt{5}} \cos \theta + \frac{2}{\sqrt{5}} \sin \theta \right) \right\}^2 \\ &= 5 \sin^2(\theta + \alpha) \end{aligned} $$
ただし、$\alpha$ は $\cos \alpha = \frac{2}{\sqrt{5}}, \sin \alpha = \frac{1}{\sqrt{5}}$ を満たす角である。
$0 \leqq \theta < 2\pi$ より、$\sin(\theta + \alpha)$ は $-1$ から $1$ のすべての値をとる。したがって、$0 \leqq \sin^2(\theta + \alpha) \leqq 1$ であるから、以下の不等式が成り立つ。
$$ 0 \leqq 5 \sin^2(\theta + \alpha) \leqq 5 $$
よって、最大値は $5$、最小値は $0$ である。
解法2
(2) の別解
$A\vec{u} \cdot \vec{u} = (x+2y)^2$ までは解法1と同様に求める。
ここで、実数 $x, y$ に対するコーシー・シュワルツの不等式を用いると、以下の関係が成り立つ。
$$ (1 \cdot x + 2 \cdot y)^2 \leqq (1^2 + 2^2)(x^2 + y^2) $$
条件である $x^2 + y^2 = 1$ を代入する。
$$ (x+2y)^2 \leqq 5 \cdot 1 = 5 $$
等号は $x : y = 1 : 2$ かつ $x^2 + y^2 = 1$ のとき、すなわち $(x, y) = \pm \left( \frac{1}{\sqrt{5}}, \frac{2}{\sqrt{5}} \right)$ のとき成立する。
また、実数の2乗は常に0以上であるから、以下の関係が成り立つ。
$$ (x+2y)^2 \geqq 0 $$
等号は $x+2y=0$ かつ $x^2+y^2=1$ のとき、すなわち $(x, y) = \pm \left( -\frac{2}{\sqrt{5}}, \frac{1}{\sqrt{5}} \right)$ のとき成立する。
以上から、$A\vec{u} \cdot \vec{u} = (x+2y)^2$ の最大値は $5$、最小値は $0$ である。
解説
(1) は「任意の $x, y$ について成り立つ」という絶対不等式の問題である。2変数の二次形式が常に0以上になる条件を判別式などで処理することも可能だが、本解法のように特定の値を代入して必要条件を導くことで、計算量を大幅に減らし簡潔に解くことができる。
(2) は円周上の点 $(x, y)$ における多項式の最大・最小を求める典型問題である。円の条件を三角関数で媒介変数表示して合成を用いる手法や、コーシー・シュワルツの不等式を用いる手法は、いずれも強力な定石であるため習熟しておきたい。
答え
(1) $a = 2$
(2) 最大値 $5$、最小値 $0$
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