東北大学 1991年 理系 第2問 解説

方針・初手
行列 $$ A(t)=f(t)\begin{pmatrix}1&1\1&1\end{pmatrix}+g(t)\begin{pmatrix}1&-1\-1&1\end{pmatrix} $$
に現れる2つの基本行列の積の性質を先に調べると、条件 (i) は $f,g$ に対する関数方程式に直る。
また、条件 (ii) は双曲線 $x^2-y^2=1$ が保たれることを意味するので、$f(t)g(t)$ に関する条件へ落とし込める。
この2つを組み合わせれば、$f(t),g(t)$ は指数関数の形に決まる。
解法1
次の2つの行列をおく。
$$ P=\begin{pmatrix}1&1\1&1\end{pmatrix},\qquad Q=\begin{pmatrix}1&-1\-1&1\end{pmatrix} $$
すると
$$ A(t)=f(t)P+g(t)Q $$
である。
まず $P,Q$ の積を計算すると、
$$ P^2=2P,\qquad Q^2=2Q,\qquad PQ=QP=O $$
である。したがって
$$ A(s)A(t) =(f(s)P+g(s)Q)(f(t)P+g(t)Q) =2f(s)f(t)P+2g(s)g(t)Q $$
となる。
一方、条件 (i) より
$$ A(s+t)=A(s)A(t) $$
であるから、
$$ f(s+t)P+g(s+t)Q=2f(s)f(t)P+2g(s)g(t)Q $$
が成り立つ。$P,Q$ は一次独立なので、
$$ f(s+t)=2f(s)f(t),\qquad g(s+t)=2g(s)g(t) $$
を得る。
次に条件 (ii) を用いる。$A(t)$ を成分表示すると
$$ A(t)= \begin{pmatrix} f(t)+g(t) & f(t)-g(t)\ f(t)-g(t) & f(t)+g(t) \end{pmatrix} $$
である。
点 $(x,y)$ を $A(t)$ で移した点を $(X,Y)$ とすると、
$$ \begin{aligned} X&=(f+g)x+(f-g)y,\ Y&=(f-g)x+(f+g)y \end{aligned} $$
である。ここで $f,g$ は $f(t),g(t)$ の略記である。
すると
$$ X+Y=2f(x+y),\qquad X-Y=2g(x-y) $$
だから、
$$ X^2-Y^2=(X+Y)(X-Y)=4fg(x+y)(x-y)=4fg(x^2-y^2) $$
を得る。
もとの点 $(x,y)$ は双曲線 $C:x^2-y^2=1$ 上にあるので、
$$ X^2-Y^2=4f(t)g(t) $$
である。条件 (ii) により移した点も再び $C$ 上にあるから、
$$ X^2-Y^2=1 $$
でなければならない。よってすべての $t$ に対して
$$ 4f(t)g(t)=1 $$
が成り立つ。
ここで
$$ F(t)=2f(t),\qquad G(t)=2g(t) $$
とおくと、
$$ F(s+t)=F(s)F(t),\qquad G(s+t)=G(s)G(t),\qquad F(t)G(t)=1 $$
である。
さらに $F,G$ は微分可能なので、指数関数型に限られる。実際、
$$ F(0)=1,\qquad G(0)=1 $$
であり、微分可能な加法型関数方程式の標準結果より、ある実定数 $c$ が存在して
$$ F(t)=e^{ct},\qquad G(t)=e^{-ct} $$
となる。
したがって
$$ f(t)=\frac12 e^{ct},\qquad g(t)=\frac12 e^{-ct} $$
である。
解法2
$$ A(t)= \begin{pmatrix} a(t) & b(t)\ b(t) & a(t) \end{pmatrix} $$
とおく。ただし
$$ a(t)=f(t)+g(t),\qquad b(t)=f(t)-g(t) $$
である。
条件 (ii) を使う。点 $(x,y)$ を
$$ (X,Y)=(a x+b y,; b x+a y) $$
へ移すと、
$$ X^2-Y^2=(a^2-b^2)(x^2-y^2) $$
となる。実際、
$$ \begin{aligned} X^2-Y^2 &=(ax+by)^2-(bx+ay)^2\ &=(a^2-b^2)(x^2-y^2) \end{aligned} $$
である。
したがって、$x^2-y^2=1$ を満たすすべての点が再び $x^2-y^2=1$ に移るためには、
$$ a(t)^2-b(t)^2=1 $$
が必要十分である。
次に条件 (i) より
$$ A(s+t)=A(s)A(t) $$
だから、
$$ \begin{pmatrix} a(s+t)&b(s+t)\ b(s+t)&a(s+t) \end{pmatrix} ============= \begin{pmatrix} a(s)a(t)+b(s)b(t) & a(s)b(t)+b(s)a(t)\ a(s)b(t)+b(s)a(t) & a(s)a(t)+b(s)b(t) \end{pmatrix} $$
となる。よって
$$ \begin{aligned} a(s+t)&=a(s)a(t)+b(s)b(t),\ b(s+t)&=a(s)b(t)+b(s)a(t) \end{aligned} $$
を得る。
これは双曲線関数の加法定理そのものである。さらに $a^2-b^2=1$ より、ある実定数 $c$ が存在して
$$ a(t)=\cosh(ct),\qquad b(t)=\sinh(ct) $$
となる。
ゆえに
$$ f(t)=\frac{a(t)+b(t)}2,\qquad g(t)=\frac{a(t)-b(t)}2 $$
より、
$$ f(t)=\frac12 e^{ct},\qquad g(t)=\frac12 e^{-ct} $$
である。
解説
この問題の本質は、与えられた行列が基底 $(1,1),(1,-1)$ に関して対角的に振る舞うことにある。
解法1ではその構造を $P,Q$ の直交的な分解として捉えている。すると条件 (i) はそれぞれ独立な指数型関数方程式になり、条件 (ii) は $4f(t)g(t)=1$ という簡潔な条件になる。
解法2では行列を $$ \begin{pmatrix}a&b\ b&a\end{pmatrix} $$ と見て、双曲線を保つ変換が $$ a^2-b^2=1 $$ を満たすこと、および積の条件が双曲線関数の加法定理になることを直接使っている。
どちらの見方でも、最終的にはこの行列が双曲線回転 $$ \begin{pmatrix} \cosh(ct)&\sinh(ct)\ \sinh(ct)&\cosh(ct) \end{pmatrix} $$ の形になることが分かる。
答え
ある実定数 $c$ が存在して、
$$ f(t)=\frac12 e^{ct},\qquad g(t)=\frac12 e^{-ct} $$
である。
このとき
$$ A(t)= \begin{pmatrix} \cosh(ct)&\sinh(ct)\ \sinh(ct)&\cosh(ct) \end{pmatrix} $$
となり、確かに $$ A(s+t)=A(s)A(t) $$ かつ双曲線 $x^2-y^2=1$ を保つ。
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