東京工業大学 1969年 理系 第1問 解説

方針・初手
条件 $ax + by + cz = p$ を $by + cz = p - ax$ と変形し、$y, z$ についてのコーシー・シュワルツの不等式を用いて $y^2 + z^2$ を下から評価する。これを利用して $x^2 - y^2 - z^2$ の上界を $x, a, p, b, c$ の式として求め、与えられた各文字の符号の条件からその式の正負を判定する。
解法1
条件 $ax + by + cz = p$ より、
$$ by + cz = p - ax $$
実数 $b, c, y, z$ についてのコーシー・シュワルツの不等式より、
$$ (b^2 + c^2)(y^2 + z^2) \ge (by + cz)^2 $$
が成り立つ。ここに $by + cz = p - ax$ を代入すると、
$$ (b^2 + c^2)(y^2 + z^2) \ge (p - ax)^2 $$
ここで、$b^2 + c^2 = 0$ と仮定すると、実数の性質より $b = c = 0$ である。 このとき、条件 $a^2 - b^2 - c^2 > 0$ は $a^2 > 0$ となり、$a \neq 0$ であることがわかる。 また、条件 $ax + by + cz = p$ は $ax = p$ となる。両辺に $a$ を掛けると、
$$ a^2 x = ap $$
を得る。$a^2 > 0$ かつ条件より $x > 0$ であるから、$a^2 x > 0$ となる。 一方、条件より $ap < 0$ であるから、これは $a^2 x = ap$ に矛盾する。 したがって、$b^2 + c^2 > 0$ であることが示された。
これより、不等式の両辺を $b^2 + c^2$ で割ることができ、
$$ y^2 + z^2 \ge \frac{(p - ax)^2}{b^2 + c^2} $$
を得る。これを用いて調べるべき式 $x^2 - y^2 - z^2$ を評価すると、
$$ x^2 - y^2 - z^2 \le x^2 - \frac{(p - ax)^2}{b^2 + c^2} $$
右辺を通分して整理する。
$$ x^2 - \frac{(p - ax)^2}{b^2 + c^2} = \frac{(b^2 + c^2)x^2 - (p^2 - 2apx + a^2x^2)}{b^2 + c^2} $$
$$ = \frac{-(a^2 - b^2 - c^2)x^2 + 2apx - p^2}{b^2 + c^2} $$
$$ = \frac{- \{ (a^2 - b^2 - c^2)x^2 - 2apx + p^2 \}}{b^2 + c^2} $$
ここで、分子の括弧内の各項の符号を調べる。 条件より $a^2 - b^2 - c^2 > 0$ であり、$x > 0$ だから、
$$ (a^2 - b^2 - c^2)x^2 > 0 $$
また、条件より $ap < 0$ かつ $x > 0$ であるから、
$$ -2apx = -2(ap)x > 0 $$
さらに、$ap < 0$ より $p \neq 0$ だから、
$$ p^2 > 0 $$
以上より、括弧内の式について、常に正の項の和となるため、
$$ (a^2 - b^2 - c^2)x^2 - 2apx + p^2 > 0 $$
が成り立つ。分母について $b^2 + c^2 > 0$ であるから、全体として
$$ \frac{- \{ (a^2 - b^2 - c^2)x^2 - 2apx + p^2 \}}{b^2 + c^2} < 0 $$
となる。したがって、
$$ x^2 - y^2 - z^2 < 0 $$
が示された。
解説
複数の変数が絡む条件式から特定の式の符号を判定する問題である。$x$ の符号のみが単独で与えられていることや、条件式の係数の形から、$x$ と $y, z$ を分離して扱うのが定石となる。
$y, z$ をひとまとめにして消去・評価するためにコーシー・シュワルツの不等式を用いると、式が $x$ のみの関数として上から評価できる。最後に残った一見唐突な条件($x > 0$ や $ap < 0$)が、各項の符号を「負」に確定させるために過不足なく機能する美しい構成となっている。
途中で $b^2 + c^2 = 0$ の場合を背理法で丁寧に排除することで、論理の飛躍を防ぐことができる。
答え
負
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