東京工業大学 1978年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) では、与えられた式の左辺を展開し、$abc$ をくくり出せる項とそうでない項に分けることで、残りの部分が $abc$ の倍数にならなければならないことを示す。
(2) では、(1) で得られた「$ab+bc+ca-1$ が $abc$ の倍数である」という条件を用いる。倍数条件から不等式を作り、さらに $1 < a < b < c$ という大小関係の条件を用いて、変数の値を小さい方から絞り込んでいく典型的な整数問題のアプローチを取る。
解法1
(1) 与えられた条件より、$(ab-1)(bc-1)(ca-1)$ は $abc$ の倍数である。 この式の左辺を展開すると、
$$ (ab-1)(bc-1)(ca-1) = a^2b^2c^2 - a^2bc - ab^2c - abc^2 + ab + bc + ca - 1 $$
$$ = abc(abc - a - b - c) + ab + bc + ca - 1 $$
となる。 右辺の $abc(abc - a - b - c)$ の部分は $abc$ を因数に持つため、$abc$ の倍数である。 したがって、全体の式が $abc$ で割り切れるためには、残りの部分である $ab+bc+ca-1$ も $abc$ で割り切れる必要がある。 よって、$ab+bc+ca-1$ は $abc$ で割り切れることが示された。
(2) (1) の結果より、$ab+bc+ca-1$ は $abc$ で割り切れる。 $1 < a < b < c$ を満たす整数であるから、$a \geqq 2, b \geqq 3, c \geqq 4$ である。 したがって $ab+bc+ca-1 > 0$ であり、$abc$ も正の整数である。 正の整数が正の整数で割り切れるとき、割られる数は割る数以上となるため、次の不等式が成り立つ。
$$ ab+bc+ca-1 \geqq abc $$
両辺を $abc$ で割ると、
$$ \frac{1}{c} + \frac{1}{a} + \frac{1}{b} - \frac{1}{abc} \geqq 1 $$
すなわち、
$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} > 1 $$
が成り立つ。 ここで、$a \geqq 3$ と仮定すると、$b \geqq 4, c \geqq 5$ となるため、
$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \leqq \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \frac{1}{5} = \frac{47}{60} < 1 $$
となり、上の不等式を満たさない。よって $a \leqq 2$ であり、$a \geqq 2$ であることと合わせて $a=2$ が確定する。
$a=2$ のとき、不等式に代入して整理すると、
$$ \frac{1}{2} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} > 1 $$
$$ \frac{1}{b} + \frac{1}{c} > \frac{1}{2} $$
となる。 ここで、$b \geqq 4$ と仮定すると、$c \geqq 5$ となるため、
$$ \frac{1}{b} + \frac{1}{c} \leqq \frac{1}{4} + \frac{1}{5} = \frac{9}{20} < \frac{1}{2} $$
となり、不等式を満たさない。よって $b \leqq 3$ であり、$b > a = 2$ より $b=3$ が確定する。
$a=2, b=3$ を (1) の式の $ab+bc+ca-1$ に代入すると、
$$ 2 \cdot 3 + 3c + 2c - 1 = 5c + 5 $$
となる。これが $abc = 2 \cdot 3 \cdot c = 6c$ で割り切れる。 $5c+5$ と $6c$ はともに正の整数であるから、同様に大小関係から
$$ 5c+5 \geqq 6c $$
が成り立つ。 これを解くと $c \leqq 5$ となる。 $c > b = 3$ であるから、$c=4, 5$ のいずれかである。
(i)
$c=4$ のとき $5c+5 = 25$、$6c = 24$ となり、$25$ は $24$ で割り切れないため不適。
(ii)
$c=5$ のとき $5c+5 = 30$、$6c = 30$ となり、$30$ は $30$ で割り切れるため適する。
よって、$c=5$ である。 求まった $(a, b, c) = (2, 3, 5)$ が元の条件を満たすか確認する。 $(ab-1)(bc-1)(ca-1) = (2 \cdot 3 - 1)(3 \cdot 5 - 1)(5 \cdot 2 - 1) = 5 \cdot 14 \cdot 9 = 630$ $abc = 2 \cdot 3 \cdot 5 = 30$ $630 = 30 \times 21$ となり、確かに割り切れる。
解説
(1) のように「展開して割り切れる部分を取り除く」という操作は、整数の倍数問題において非常に有効な手段である。(2) は「倍数条件を不等式(商が1以上)に置き換えて範囲を絞る」という難関大で頻出の手法である。対称式・交代式に近い形の不等式では、今回のように逆数の和の形 $\frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{c} > 1$ に直すことで、値の評価が視覚的にも計算上も容易になる。
答え
(1)
$ab + bc + ca - 1$ は $abc$ で割り切れる。
(2)
$(a, b, c) = (2, 3, 5)$
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