東京工業大学 1985年 理系 第1問 解説

方針・初手
集合 $G$ の要素が満たす条件から、整数 $a, b$ についての不等式を導く。(1)では $g>1$ のもとで $a, b$ が正の整数となることを示し、条件を満たす最小の $g$ を見つける。(2)は $G$ の元どうしの積が再び $G$ に属すること(積の閉鎖性)、および逆元も $G$ に属することを示す。(3)は $u>1$ を底とする指数での挟み撃ちを利用し、最小性から背理法を用いて証明する。
解法1
(1)
$g = a + \sqrt{2}b \in G$ が $g > 1$ を満たすとする。
条件(i)より $(a - \sqrt{2}b)(a + \sqrt{2}b) = \pm 1$ であるから、以下が成り立つ。
$$ a - \sqrt{2}b = \pm \frac{1}{g} $$
$g > 1$ であるから、$-\frac{1}{g}$ と $\frac{1}{g}$ は $-1$ より大きく $1$ より小さい。したがって、以下の不等式を得る。
$$ -1 < a - \sqrt{2}b < 1 \quad \cdots \text{①} $$
また、$g > 1$ より、以下の不等式が成り立つ。
$$ a + \sqrt{2}b > 1 \quad \cdots \text{②} $$
①と②の辺々を足すと、
$$ 2a > 0 $$
となり、$a > 0$ を得る。$a$ は整数であるから、$a \ge 1$ である。
また、②から①を引くと、
$$ 2\sqrt{2}b > 0 $$
となり、$b > 0$ を得る。$b$ も整数であるから、$b \ge 1$ である。
したがって、$g > 1$ となる $G$ の元は、自然数 $a, b$ によって作られる。$g = a + \sqrt{2}b$ の最小値を考えるため、$b=1, 2, 3, \cdots$ と順に調べる。
$b = 1$ のとき、条件(i)より $a^2 - 2 = \pm 1$ となる。すなわち、$a^2 = 3$ または $a^2 = 1$ である。$a^2 = 3$ を満たす整数 $a$ は存在せず、$a \ge 1$ より $a = 1$ である。このとき $g = 1 + \sqrt{2}$ となる。
$b \ge 2$ のとき、$a \ge 1$ であるから、
$$ g = a + \sqrt{2}b \ge 1 + 2\sqrt{2} > 1 + \sqrt{2} $$
となる。よって、$1$ より大きい $G$ の元のうち最小のもの $u$ は、
$$ u = 1 + \sqrt{2} $$
である。
(2)
任意の $G$ の元 $g_1 = a_1 + \sqrt{2}b_1, g_2 = a_2 + \sqrt{2}b_2$ について、その積 $g_1 g_2$ は、
$$ g_1 g_2 = (a_1 a_2 + 2b_1 b_2) + \sqrt{2}(a_1 b_2 + a_2 b_1) $$
となる。ここで、$A = a_1 a_2 + 2b_1 b_2, B = a_1 b_2 + a_2 b_1$ とおくと、$A, B$ は整数であり、
$$ \begin{aligned} A^2 - 2B^2 &= (a_1 a_2 + 2b_1 b_2)^2 - 2(a_1 b_2 + a_2 b_1)^2 \\ &= a_1^2 a_2^2 + 4a_1 a_2 b_1 b_2 + 4b_1^2 b_2^2 - 2(a_1^2 b_2^2 + 2a_1 a_2 b_1 b_2 + a_2^2 b_1^2) \\ &= a_1^2(a_2^2 - 2b_2^2) - 2b_1^2(a_2^2 - 2b_2^2) \\ &= (a_1^2 - 2b_1^2)(a_2^2 - 2b_2^2) \end{aligned} $$
と変形できる。条件(i)より $a_1^2 - 2b_1^2 = \pm 1, a_2^2 - 2b_2^2 = \pm 1$ であるから、
$$ A^2 - 2B^2 = (\pm 1)(\pm 1) = \pm 1 $$
となる。さらに、条件(ii)より $g_1 > 0, g_2 > 0$ であるから、$g_1 g_2 > 0$ である。よって、$g_1 g_2 \in G$ であり、$G$ は積について閉じている。
次に、$u = 1 + \sqrt{2}$ の逆数について考える。
$$ u^{-1} = \frac{1}{1+\sqrt{2}} = -1 + \sqrt{2} $$
$(-1)^2 - 2 \cdot 1^2 = -1$ であり、$-1 + \sqrt{2} > 0$ であるから、$u^{-1} \in G$ である。
したがって、$n \ge 0$ のときは $u^n = u \cdot u \cdots u \in G$ となる。$n < 0$ のときは $n = -k$ ($k > 0$ の整数)とおくと、$u^n = (u^{-1})^k \in G$ となる。よって、任意の整数 $n$ について $u^n \in G$ である。
最後に、$g \in G, u^n \in G$ であるから、その積 $gu^n$ も $G$ の元となることが示された。
(3)
任意の $g \in G$ に対して、適当な整数 $m$ を用いて $g = u^m$ と表せることを背理法を用いて示す。
条件(ii)より $g > 0$ であり、$u = 1 + \sqrt{2} > 1$ であるから、
$$ u^m \le g < u^{m+1} $$
を満たすような整数 $m$ が必ずただ1つ存在する。この不等式の各辺に $u^{-m}$ を掛けると、
$$ 1 \le g u^{-m} < u $$
となる。ここで、$h = g u^{-m}$ とおく。(2)の結果から、$h \in G$ である。もし、$h > 1$ であると仮定すると、
$$ 1 < h < u $$
となる。これは、「$1$ より大きい $G$ の元のうち最小のものが $u$ である」という $u$ の定義に矛盾する。
したがって、$h = 1$ でなければならない。$h = 1$ のとき、
$$ g u^{-m} = 1 \iff g = u^m $$
となり、$G$ の任意の元 $g$ は適当な整数 $m$ によって $g = u^m$ と書かれることが示された。
解説
ペル方程式($x^2 - Dy^2 = \pm 1$)の解の構造を背景とする有名な問題である。(1)では、与えられた等式と不等式から、$a, b$ がともに正であることを導き出すのがポイントである。これにより、調べるべき候補を有限個に絞り込むことができる。
(2)では、恒等式 $(a^2-db^2)(x^2-dy^2) = (ax+dby)^2 - d(ay+bx)^2$ (ブラーマグプタの恒等式)を用いる。これを意識して積を展開すれば見通しが良い。
(3)では、実数の連続性やアルキメデスの性質を用いた不等式評価により、$u$ の累乗で $g$ を挟み撃ちにする手法が有効である。「最小性との矛盾」を導いて等号成立を示すのは、整数問題や群論的な要素を含む問題でしばしば用いられる定石の論法である。
答え
(1) $u = 1 + \sqrt{2}$
(2)
任意の整数 $n$ に対して
$$ u^n \in G $$
(3)
任意の $g \in G$ は、ある整数 $m$ を用いて
$$ g = u^m $$
と表される。
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