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東京工業大学 1984年 理系 第1問 解説

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東京工業大学 1984年 理系 第1問 解説

方針・初手

(1) は、不等式の中央にある分数の形 $\frac{c^2}{d}$ に着目し、辺々から引いた差 $c^2 - d > 0$ と $4d - c^2 \ge 0$ をそれぞれ証明する。このとき、不等式の分母に文字式を含むため、$d > 0$ であることの確認を忘れないようにする。

(2) は、$a^3+b^3$ の因数分解形 $(a+b)(a^2-ab+b^2) = cd$ が「素数 $p$ の累乗 $p^k$」になることから、$c, d$ が共に同じ素数 $p$ の累乗で表せることに着目する。これを (1) の不等式に代入して、可能な素数 $p$ と指数の関係を絞り込んでいく。

解法1

(1)

$$ c^2 = a^2 + 2ab + b^2 $$

$$ d = a^2 - ab + b^2 = \left( a - \frac{1}{2}b \right)^2 + \frac{3}{4}b^2 $$

$a, b$ は正の整数であるから $b \ge 1$ であり、$d > 0$ である。

$$ c^2 - d = (a^2 + 2ab + b^2) - (a^2 - ab + b^2) = 3ab $$

$a \ge 1, b \ge 1$ より $3ab > 0$ であるから、$c^2 > d$ となる。 $d > 0$ より両辺を $d$ で割って、

$$ \frac{c^2}{d} > 1 $$

また、

$$ 4d - c^2 = 4(a^2 - ab + b^2) - (a^2 + 2ab + b^2) = 3a^2 - 6ab + 3b^2 = 3(a - b)^2 $$

実数の2乗は0以上であるから $3(a - b)^2 \ge 0$ となり、$4d \ge c^2$ である。 $d > 0$ より両辺を $d$ で割って、

$$ \frac{c^2}{d} \leqq 4 $$

以上より、不等式 $1 < \frac{c^2}{d} \leqq 4$ が成り立つ。

(2)

$a^3 + b^3$ が素数 $p$ の整数乗 $p^k$($k$ は整数)になるとする。 $a \ge 1, b \ge 1$ より $a^3 + b^3 \ge 2$ であるから、$k$ は正の整数である。

$$ a^3 + b^3 = (a+b)(a^2 - ab + b^2) = cd $$

$cd = p^k$ であり、$c, d$ は正の整数であるから、ある0以上の整数 $m, n$ を用いて $c = p^m, d = p^n$ と表せる。(このとき $m + n = k$ である) ここで、$a \ge 1, b \ge 1$ より $c = a + b \ge 2$ であるから、$m \ge 1$ である。

これらを (1) で示した不等式に代入すると、

$$ 1 < \frac{p^{2m}}{p^n} \leqq 4 $$

$$ 1 < p^{2m-n} \leqq 4 $$

$p$ は素数、$2m-n$ は整数である。$1 < p^{2m-n}$ より $2m-n \ge 1$ であるから、$p^{2m-n}$ は2以上の整数となる。 これを満たす素数 $p$ と正の整数 $2m-n$ の組は、以下の3つの場合のみである。

(i)

$p = 2, 2m-n = 1$ のとき

$p^{2m-n} = 2$ であるから、$\frac{c^2}{d} = 2$ すなわち $c^2 = 2d$ となる。

$$ (a + b)^2 = 2(a^2 - ab + b^2) $$

$$ a^2 + 2ab + b^2 = 2a^2 - 2ab + 2b^2 $$

$$ a^2 - 4ab + b^2 = 0 $$

これを $a$ について解くと、

$$ a = 2b \pm \sqrt{4b^2 - b^2} = (2 \pm \sqrt{3})b $$

$b$ は正の整数であるが、$\sqrt{3}$ は無理数であるため $a$ が整数にならず不適。

(ii)

$p = 2, 2m-n = 2$ のとき

$p^{2m-n} = 4$ であるから、$\frac{c^2}{d} = 4$ すなわち $c^2 = 4d$ となる。 (1) の証明の途中式より $4d - c^2 = 3(a - b)^2$ であるから、

$$ 3(a - b)^2 = 0 $$

よって $a = b$ である。このとき、

$$ a^3 + b^3 = 2a^3 $$

これが $2^k$ と等しくなるので、

$$ 2a^3 = 2^k \iff a^3 = 2^{k-1} $$

$a$ は正の整数であるから、$k-1$ は3の倍数でなければならない。 0以上の整数 $l$ を用いて $k-1 = 3l$ とおくと、

$$ a^3 = 2^{3l} = (2^l)^3 \iff a = 2^l $$

よって $a = 2^l, b = 2^l$ となる。 このとき $a^3 + b^3 = 2^{3l+1}$ となり、確かに素数2の整数乗となるため適する。

(iii)

$p = 3, 2m-n = 1$ のとき

$p^{2m-n} = 3$ であるから、$\frac{c^2}{d} = 3$ すなわち $c^2 = 3d$ となる。

$$ (a + b)^2 = 3(a^2 - ab + b^2) $$

$$ a^2 + 2ab + b^2 = 3a^2 - 3ab + 3b^2 $$

$$ 2a^2 - 5ab + 2b^2 = 0 $$

$$ (2a - b)(a - 2b) = 0 $$

よって $b = 2a$ または $a = 2b$ である。

$b = 2a$ のとき、

$$ a^3 + b^3 = a^3 + 8a^3 = 9a^3 $$

これが $3^k$ と等しくなるので、

$$ 9a^3 = 3^k \iff a^3 = 3^{k-2} $$

$a$ は正の整数であるから、$k-2$ は3の倍数でなければならない。 0以上の整数 $l$ を用いて $k-2 = 3l$ とおくと、

$$ a^3 = 3^{3l} = (3^l)^3 \iff a = 3^l $$

よって $a = 3^l, b = 2 \cdot 3^l$ となる。 このとき $a^3 + b^3 = 3^{3l+2}$ となり、確かに素数3の整数乗となるため適する。

$a = 2b$ のときも同様の計算により、$a = 2 \cdot 3^l, b = 3^l$ となり適する。

以上 (i)〜(iii) より、条件を満たす $a, b$ の組がすべて求まる。

解説

本問の最大のポイントは、(2) において $a^3+b^3$ の因数分解に現れる2つの因数 $c, d$ がそれぞれ「素数 $p$ の累乗」になることを見抜き、それらを (1) の不等式に当てはめて $p$ の値と因数の関係を絞り込む点にある。 (1) の分母 $d$ が正であることの確認や、(2) における「整数乗」を自然数乗として議論を進める点など、細かい条件の吟味を怠らないようにしたい。指数の関係式 $2m-n$ が整数であることを利用して具体的な数値に帰着させる論理展開は、整数問題における不等式評価の強力な典型手法である。

答え

(1) 略(解法1の証明を参照)

(2) $l$ を0以上の整数として、 $(a, b) = (2^l, 2^l), (3^l, 2 \cdot 3^l), (2 \cdot 3^l, 3^l)$

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