東京工業大学 1990年 理系 第5問 解説

方針・初手
点 $P$ の座標を $(p, q)$ とおき、2つの条件 (i), (ii) をそれぞれ $p, q$ の不等式として表すことを目指する。 条件 (i) は「極線」の考え方を用いると、図形的な位置関係を数式に落とし込むことができる。 条件 (ii) は、接線の傾きを解とする2次方程式を作成し、点 $P$ から接点に向かうベクトルの内積を考えることで、「なす角が $90^\circ$ 以上」という条件をスマートに処理できる。
解法1
点 $P$ の座標を $(p, q)$ とおく。$P$ は楕円 $3x^2+y^2=1$ の外部にあるため、以下の条件を満たす。
$$ 3p^2+q^2 > 1 \cdots \text{①} $$
点 $P$ から楕円に引いた2本の接線の接点を $Q(x_1, y_1), R(x_2, y_2)$ とする。 点 $Q$ における接線の方程式は $3x_1 x + y_1 y = 1$ であり、これが $P(p, q)$ を通ることから、
$$ 3p x_1 + q y_1 = 1 $$
が成り立つ。同様に、点 $R$ における接線についても $3p x_2 + q y_2 = 1$ が成り立つ。 これは、2つの接点 $Q, R$ が直線 $3px + qy = 1$ 上にあることを示している。この直線を $l$ とする。
条件 (i) について
直線 $l: 3px+qy-1=0$ は、平面を2つの領域に分割する。 $f(x, y) = 3px+qy-1$ とおくと、①より $f(p, q) = 3p^2+q^2-1 > 0$ である。 楕円の2つの弧のうち「$P$ に近い方の弧 $\stackrel{\frown}{QR}$」とは、直線 $l$ に関して点 $P$ と同じ側にある部分、すなわち $f(x, y) \ge 0$ を満たす楕円上の点(端点 $Q, R$ を含む)の集合である。 この弧が点 $A\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right)$ を含むための条件は、$f\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right) \ge 0$ であるから、
$$ 3p \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} + q \cdot 0 - 1 \ge 0 $$
$$ \sqrt{3}p - 1 \ge 0 \iff p \ge \frac{1}{\sqrt{3}} \cdots \text{②} $$
となる。
条件 (ii) について
楕円 $3x^2+y^2=1$ 上の任意の点 $(x, y)$ は $3x^2 \le 1$ より $x \le \frac{1}{\sqrt{3}}$ を満たす。 条件 ② より $p \ge \frac{1}{\sqrt{3}}$ であるから、接点 $Q, R$ の $x$ 座標 $x_1, x_2$ について、$x_1 \le p$ かつ $x_2 \le p$ が成り立つ。 ここで $p > \frac{1}{\sqrt{3}}$ の場合を考える。このとき $x_1 < p$ かつ $x_2 < p$ となるため、点 $P$ から $Q, R$ へ向かうベクトル $\vec{PQ}, \vec{PR}$ の $x$ 成分はともに負である。
点 $P(p, q)$ を通る傾き $m$ の直線 $y = m(x-p)+q$ が楕円 $3x^2+y^2=1$ に接する条件を求める。 直線の式を $mx - y + q - mp = 0$ とし、楕円の式に代入して整理するか、接線の公式を用いることで以下の $m$ についての2次方程式を得る。
$$ (1-3p^2)m^2 + 6pq m - 3q^2 + 3 = 0 $$
$p > \frac{1}{\sqrt{3}}$ より $1-3p^2 < 0$ であり、この2次方程式は異なる2つの実数解 $m_1, m_2$ を持つ。これらが2本の接線の傾きである。 $\vec{PQ}, \vec{PR}$ の $x$ 成分は負であるから、これらのベクトルはそれぞれ方向ベクトル $\vec{u_1} = (-1, -m_1)$ と $\vec{u_2} = (-1, -m_2)$ と同じ向きを持つ。 $\angle QPR \geqq 90^\circ$ となる条件は、内積 $\vec{PQ} \cdot \vec{PR} \le 0$ であるから、
$$ \vec{u_1} \cdot \vec{u_2} \le 0 \iff (-1)(-1) + (-m_1)(-m_2) \le 0 \iff 1 + m_1 m_2 \le 0 $$
解と係数の関係より $m_1 m_2 = \frac{-3q^2+3}{1-3p^2} = \frac{q^2-1}{p^2-\frac{1}{3}}$ であるから、
$$ 1 + \frac{q^2-1}{p^2-\frac{1}{3}} \le 0 $$
$p > \frac{1}{\sqrt{3}}$ より $p^2 - \frac{1}{3} > 0$ であるため、両辺に $p^2 - \frac{1}{3}$ を掛けて整理すると、
$$ p^2 - \frac{1}{3} + q^2 - 1 \le 0 \iff p^2 + q^2 \le \frac{4}{3} \cdots \text{③} $$
$p = \frac{1}{\sqrt{3}}$ のときは、接線の1本が $y$ 軸に平行な直線 $x = \frac{1}{\sqrt{3}}$ となるが、この場合もなす角を調べると点 $P\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, \pm 1\right)$ のときに直交し、③の境界上の点として含まれる。
以上より、点 $P(x, y)$ の存在範囲は、②および③より、
$$ \begin{cases} x \ge \frac{1}{\sqrt{3}} \\ x^2 + y^2 \le \frac{4}{3} \end{cases} $$
を満たす領域である。ただし、$x \ge \frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき $3x^2+y^2 \ge 3\left(\frac{1}{3}\right)+y^2 = 1+y^2 \ge 1$ となり、等号成立は $(x, y) = \left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right)$ のみである。①の条件(楕円の外部)よりこの点は除外される。
これを図示すると、中心が原点、半径が $\frac{2}{\sqrt{3}}$ の円の内部および周上のうち、直線 $x = \frac{1}{\sqrt{3}}$ の右側の部分となる(下図は省略するが、弓形の領域となる)。境界線は含むが、点 $\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right)$ のみ除く。
円 $x^2+y^2 = \frac{4}{3}$ と直線 $x = \frac{1}{\sqrt{3}}$ の交点の $y$ 座標は、
$$ \left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^2 + y^2 = \frac{4}{3} \iff y^2 = 1 \iff y = \pm 1 $$
より、$\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 1\right), \left(\frac{1}{\sqrt{3}}, -1\right)$ である。 原点と交点 $\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 1\right)$ を結ぶ線分が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\theta$ とすると、$\cos\theta = \frac{1/\sqrt{3}}{2/\sqrt{3}} = \frac{1}{2}$ より $\theta = \frac{\pi}{3}$ である。 したがって、求める面積 $S$ は、中心角 $\frac{2}{3}\pi$ の扇形の面積から、二等辺三角形の面積を引いたものになる。
$$ S = \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{2}{\sqrt{3}}\right)^2 \cdot \frac{2}{3}\pi - \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 2 $$
$$ S = \frac{4}{9}\pi - \frac{\sqrt{3}}{3} $$
解説
楕円の外部から引いた2本の接線のなす角に関する典型的な難問である。 条件(i)の「弧が特定の点を含む」という図形的な条件は、「極線」と「領域」の考え方を用いることで、非常に簡潔な不等式に帰着させることができる。接点を結ぶ直線(極線)の方程式が $3px+qy=1$ となる性質は、2次曲線において強力な武器となる。 条件(ii)の「なす角が $90^\circ$ 以上」は、通常であれば「準円(直交する接線の交点の軌跡)の内部」という知識から $x^2+y^2 \le \frac{4}{3}$ を導出できるが、本解答のようにベクトルの内積を用いることで、論理の飛躍なく厳密に示すことが可能である。接点の $x$ 座標が点 $P$ より必ず左側にあることに気づけるかが、ベクトルを用いた証明の鍵となる。
答え
図示する領域は、円 $x^2 + y^2 = \frac{4}{3}$ の内部および周上のうち、$x \ge \frac{1}{\sqrt{3}}$ を満たす部分(ただし、点 $\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right)$ は除く)。 面積は、
$$ \frac{4}{9}\pi - \frac{\sqrt{3}}{3} $$
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