東京工業大学 1997年 理系 第1問 解説

方針・初手
与えられた命題は、「不等式 $a^2x^2 + b^2y^2 \leqq 1$ の表す領域内のすべての点 $(x, y)$ について、$a(x-1) + b(y-1) \leqq 0$ が成り立つ」と言い換えられる。 $a$ または $b$ が $0$ になる場合、$x, y$ の動ける範囲や領域の形(変数の自由度)が大きく変わるため、場合分けを行う必要がある。 前半の条件式について、$X = ax, Y = by$ のような変数の置き換えを行うと、円の領域内の点の条件に帰着できる。
解法1
条件 $P$ を $a^2x^2 + b^2y^2 \leqq 1$、条件 $Q$ を $ax + by \leqq a + b$ とする。 命題は「条件 $P$ を満たすすべての実数 $x, y$ について、条件 $Q$ が成り立つ」ことである。$a, b$ の値によって場合分けを行う。
(i)
$a \neq 0$ かつ $b \neq 0$ のとき
$X = ax, Y = by$ とおく。$a, b$ はいずれも $0$ でないため、$x, y$ がすべての実数値をとって動くとき、$X, Y$ もすべての実数値をとりうる。 条件 $P$ は以下のように表される。
$$ X^2 + Y^2 \leqq 1 $$
条件 $Q$ は以下のように表される。
$$ X + Y \leqq a + b $$
命題が真となるための条件は、$X^2 + Y^2 \leqq 1$ を満たす任意の $(X, Y)$ について、$X + Y$ が $a+b$ 以下となることである。 $X + Y = k$ とおくと、これは傾き $-1$、 $Y$ 切片 $k$ の直線を表す。この直線が円 $X^2 + Y^2 \leqq 1$ と共有点をもつための条件は、原点と直線の距離 $d$ が円の半径 $1$ 以下となることである。
$$ \frac{|-k|}{\sqrt{1^2 + 1^2}} \leqq 1 $$
これを解いて、$-\sqrt{2} \leqq k \leqq \sqrt{2}$ を得る。 したがって、$X^2 + Y^2 \leqq 1$ における $X+Y$ の最大値は $\sqrt{2}$ であるから、これが常に $a+b$ 以下となるための必要十分条件は以下のようになる。
$$ \sqrt{2} \leqq a + b $$
(ii)
$a = 0$ かつ $b \neq 0$ のとき
条件 $P$ は $b^2y^2 \leqq 1$ となり、これを整理すると以下のようになる。($x$ は任意の実数である)
$$ -1 \leqq by \leqq 1 $$
条件 $Q$ は $by \leqq b$ となる。 $-1 \leqq by \leqq 1$ を満たすすべての $y$ について $by \leqq b$ が成り立つためには、$by$ のとりうる最大値が $b$ 以下であればよい。$by$ の最大値は $1$ であるから、条件は以下のようになる。
$$ 1 \leqq b $$
(iii)
$a \neq 0$ かつ $b = 0$ のとき
(ii) と同様の議論から、条件は以下のようになる。
$$ 1 \leqq a $$
(iv)
$a = 0$ かつ $b = 0$ のとき
条件 $P$ は $0 \leqq 1$ となり、すべての $(x, y)$ について成り立つ。 条件 $Q$ も $0 \leqq 0$ となり、すべての $(x, y)$ について成り立つ。 「真ならば真」という命題は常に成立するため、$(a, b) = (0, 0)$ は条件を満たす。
以上 (i) ~ (iv) より、求める $(a, b)$ の範囲は以下の4つの条件のいずれかを満たす領域である。
- $a+b \geqq \sqrt{2}$ かつ $a \neq 0$ かつ $b \neq 0$
- $a = 0$ かつ $b \geqq 1$
- $b = 0$ かつ $a \geqq 1$
- $a = 0$ かつ $b = 0$
解法2
ベクトルを利用して内積の形とみなす解法を示す。 $\vec{v} = (ax, by)$、$\vec{u} = (1, 1)$ とおく。 条件 $P$ は $|\vec{v}|^2 \leqq 1$、すなわち $|\vec{v}| \leqq 1$ となる。 条件 $Q$ は $\vec{v} \cdot \vec{u} \leqq a + b$ となる。
(i)
$a \neq 0$ かつ $b \neq 0$ のとき
$(x, y)$ が任意の実数を動くとき、$\vec{v}$ は $|\vec{v}| \leqq 1$ を満たすすべてのベクトルをとりうる。 このとき、内積 $\vec{v} \cdot \vec{u}$ の最大値は、$\vec{v}$ が $\vec{u}$ と同じ向きで大きさが $1$ のときであり、その値は $|\vec{v}||\vec{u}| = 1 \times \sqrt{2} = \sqrt{2}$ である。 これが $a+b$ 以下となればよいので、$a+b \geqq \sqrt{2}$ を得る。
(ii)
$a = 0$ かつ $b \neq 0$ のとき
$\vec{v} = (0, by)$ であり、条件 $P$ より $|\vec{v}| \leqq 1$ であるから、$\vec{v}$ は $y$ 軸上の長さ $1$ 以下のベクトル全体を動く。 このとき、$\vec{v} \cdot \vec{u} = by$ の最大値は $1$ である。 これが $a+b$ (すなわち $b$)以下となればよいので、$b \geqq 1$ を得る。
(iii)
$a \neq 0$ かつ $b = 0$ のとき
(ii) と対称的に考えて、$a \geqq 1$ を得る。
(iv)
$a = 0$ かつ $b = 0$ のとき
$\vec{v} = (0, 0)$ のみであり、内積の最大値は $0$ である。 これが $a+b = 0$ 以下となればよいので、$0 \leqq 0$ となり、条件を満たす。
解説
不等式が表す領域の包含関係を問う問題である。一見するとコーシー・シュワルツの不等式や円と直線の関係だけで解けそうに見えるが、変数 $a, b$ が $0$ になる瞬間、元の条件式が表す図形が「楕円」から「帯」や「全平面」へと退化する。 この退化によって、変数の自由度が変わり、領域の境界から線分が飛び出したり孤立点が生じたりする特異な結果となる。場合分けをサボらずに厳密な論理を追えるかが問われている。
答え
求める $(a, b)$ の範囲は、以下の4つの集合の和集合である。
- 領域 $a+b \geqq \sqrt{2}$ (ただし $a=0$ または $b=0$ となる軸上の点を除く)
- 半直線 $a \geqq 1 \ (b=0)$
- 半直線 $b \geqq 1 \ (a=0)$
- 原点 $(0,0)$
これを $ab$ 平面上に図示すると、直線 $a+b = \sqrt{2}$ の上側(境界を含む)の領域に、$a$ 軸上の区間 $1 \leqq a < \sqrt{2}$、$b$ 軸上の区間 $1 \leqq b < \sqrt{2}$、および原点 $(0,0)$ をつけ加えた図形となる。($a \geqq \sqrt{2}$ や $b \geqq \sqrt{2}$ の軸上の部分は、もとから領域 $a+b \geqq \sqrt{2}$ に含まれている)
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